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林間学校4

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俺は山田さんと太田さん、そして、立川さんと一緒に食事の下ごしらえをしていた。なぜなら、これから昼食なのだが、釣った魚含めて、自分たちで食事をつらないといけない。
因みに釣れなかった人には、旅館の方から一人1匹の魚が渡されていたのだった。因みに最低一人1匹は当たるようなのだが、中には中田君のように5匹も釣った人もいて、そういう人には所属している班の人達へ2匹ずついきわたるようになっている。
 さてと、俺たちはというと太田さんと山田さんは俺の横で一緒になって野菜や肉を切っている。メニューは当然、カレーとサラダである。
 一方、各班から2名ずつ、火の担当というのが決められていた。男子たちは火というのが大好きであった。更に、まき割りもあるというので異様に気合が入っていて、率先してその役になろうとしていた。俺としては火の当番をやっても屋かったのだが、山田さんと太田さんに

「佐藤君は私たちと一緒にやってくれるわよね」

こうして今に至る。そして、カレールーはというと学校指定のルーしか使えないので、味の問題はないと思っていたら、基本のルー以外に使っていいということになった。すると、みんないろんな意見が出ていた。


「やーい、男女は、おままごとですか?」

ニンジンを切っている時に言いがかりをつけてきたのは三宅君だった。すると山田さんが反応した

「なによ!!文句あるの?」

「別に~。ただ、まき割りと火おこしとかできないような男女だよな?」

「単に担当が違うだけじゃない」

「おおーー委員長が怒ったぞ!!」

「やめとけ・・」

俺がつぶやくとみんなが俺の方を見ている。俺からすると未だ割る前の薪を抱えているように見えただので

「そういえば、もうまき割りは終わったのか?さっき、先生が早く来るようにって言ってなかったけ?」

「そんなことないわ」

「でも先生が見たらなんていうかな?」

「そんなことで俺を脅そうとしても無駄だぞ」

「別に…脅そうなんて思ってないけど、ねー先生」

すると三宅君たちの後ろに鬼の形相をした担任が立っていた。

「み~やーけ~!!なぜ、集合場所に来ないんだ!!」

「あ・・・いや・・・その・・・イテテ」

「グダグダいうな!!早く来い!!」

先生は三宅君の耳をつかんで、引っ張っていった。

「先生!!痛い!!耳がちぎれる~!!」

「うるさい!早く追い!!」

俺たちはその光景を見てくすくすと笑っていたのだった。実は、まき割り当番に回された彼らには、創造とは全く違う地味な作業と小枝集め待っていた。

まずは、小枝集めに行かされるのだが、それは、遠くに行くと危ないということもあって、ある程度準備された小枝を小さくしていくという地味な作業をやらされていた。それが終わると竈のところへ持って行くことになっている。

更に、地味なのはまき割り、これは斧を大きく振りかぶってスコーンと割るのではなく、鉈をコンと突き刺してコンコンコンと数回叩いて割るというものすごく地味な作業だった。しかも、普段はやったことがないから、なかなか、薪を割ることができない。そのことを先生は十分にして知っているららしく、

「早くしろよ!!晩御飯が遅くなるぞ」

などと言って、彼らを追い込んでいった。

やがて俺たちが食材の下ごしらえを終えた頃に竈では火をつけようとしているところだった。
しかし、そう簡単に火がつかない。

「どうだ。青木」

「また消えた」

すると俺たちのところへまた三宅がやってきた

「まだ火がついてないのか!!やっぱ男女がいると遅いな。ははは」

間抜けな話にカチンときた青木君が

「何言ってんだ。お前らのところもついてないじゃないか」

すると三宅君は目の前でチャッカマンを取り出した

「俺たちにはこれがあるからな・・・ハハハ」

そう言って、自分のところへ戻っていった。このままでは青木君たちもいじられる対象になってしまう。山田さんや太田さんも不安な表情をしている。一方で、立川さんはというと

「さっさとつけなさいよ!!」


やっぱり、空気が読めていない。

「ちょっと変わって」

俺は軍手をして、竈の中で井桁に組まれた薪の中でぐちゃぐちゃになっている、小枝を取り出し、更に、下にたまっている新聞紙の燃えカスを取り出した。そして、新しい新聞紙を入れ直した。
更に、空間ができるように薪の中で小枝をくみ上げ、一番上に薪の中でも小さい奴を選んでそれを置いて完了。いざ点火…

新聞紙が静かに燃え上がりやがて小枝がパチパチと音を立てた。そこへ、新聞紙をちぎったやつを入れていき炎が弱くならないようにしているとやがて、小枝にも火が回ってきた。
俺は団扇で風を送ると徐々にその炎は一番上の小さな薪に火が回りパチパチと炎の勢いが増していった。

「やった・・・ついたぞ」

みんながに安どの表情が現れた時、三宅君の班でも火がついたようだった。

「火がついたぞ!!」

嬉しそうに騒いでいるのでそっとして置いた。実は、チャッカマンは火がつかないと先生に連絡すれば貸してくれることになっていたのだ。つまり、彼らは自分たちの力では点火できなかった。更に、よく見ると旅館の人たちもサポートしている。そんなことはどうでもよく。俺たちは、調理にかかっていた。するとまた、三宅が現れたが火がついているの気付いて、何も言わずに行ってしまった。

「なによ。あいつ」

「今度は、料理が終わった時に見に来て、またあほなことを言いに来るから」

「そうなの?」

「たぶん。自分たちの料理を自慢しに来るよ」

「バカじゃない」

「来たらみんなで笑おうよ」

「そうね」

食事時、料理はカレーと野菜サラダと焼き魚だ。当然、俺たちの班には焼き魚が1匹づつしかない。彼らの班は2匹ずつになっている。当然三宅君は机の上にはそれしかないと思っているに違いない。そして、魚が一匹づつしかないことを馬鹿にしに来たのだった。しかし、彼が机の上を見てびっくりしたのだった。
魚は確かに一匹しかないのだが、カレーと焼き魚とサラダ、しかも、そこには何故かポテトサラダまであったのだった。

「お前ら!!なぜ!!一品多いんだ!」

すると、頭が回る三宅君は

「先生!!この班、ずるいことをしてます!!」

呼び出された先生は

「三宅、何がずるいんだ」

「こいつらポテトサラダを勝手に追加しているんですよ。これってずるくないですか?」

先生も呆れた表情をしていた。実は、俺はみんなで魚がないからカレーの具の一部を使ってポテトサラダを作っていいかいと聞くとみんなOKをだした。更にこのことを先生に言うとマヨネーズまで準備してくれたのだった。

「三宅、どこがた?」

「俺たちポテトサラダの材料をもらっていません」

その話を聞いて俺たちは吹き出しそうになった。すると先生は

「材料はみんな同じだ。この班は、カレーの材料の一部をポテトサラダにしたんだ。他の班でも、ほら、あそこでは、マッシュポテト、あそこではジャガバターをやっていじゃないか。お前らは何も考えていなかっただけじゃないか。先生は、基本的にはカレーとサラダと焼き魚といったけど、材料を使って、いろいろとかんがえてくれともいったはずだが」

みんなに笑われた三宅君はすごすごと自分の席へ戻っていった。

俺たちの班は楽しく夕食を過ごしたのだった。






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