リーンカーネーション 小学４年に戻ったおれ

因縁の対決 4

２回表、ワンアウト　２塁、打順は１番鈴鹿君、走者俺。

久々のチャンスだ。実はなぜこのようなことになったかというと、ベンチで口笛を吹いているコーチの仕業だった。セオリー通り送りバントで２塁へ進塁しており、一見、成功しているようにも見える。しかし、それは野球をしているときの話であって、小学生レベルでのソフトボール場合は、キャッチャーの肩が弱いことピッチャーのボールが遅いことも、塁間も狭いことといった条件もあって、よっぽど足が遅くない限り、盗塁は成功しやすい。だから、ここは盗塁の後、送りバントが正解なのだが、９番君の打順の時に出されたサインを見て、思わずぎょっと驚いた。出されたサインが送りバントだったからだ。驚いているのは俺だけ、しかし、ここでタイムをすると送りバントがばれ、今後の試合に影響が出るかもしれないので、俺は黙ってサインに従うことにして今に至る。
続く１番の鈴鹿は初回ヒットを打っていて、かなり期待ができるバッターだ。するとコーチからサインが出ている。そのサインもバントだった。俺は驚いていたが鈴鹿は冷静だった。

初球、俺はサイン通りスタートをした。

コン・・・

鈴鹿がバントしたボールはサードとピッチャーの間への絶妙なバントだった。慌てて取りに行ったサードはピッチャーと激突！！

何とかボールを取り押さえて、ファーストを見ると

「セーフ！！」

こうしてワンアウト１、３塁という絶好のチャンスになった。続く２番五十嵐の打順で出されたのはスクイズのサインだった。

スクイズか…

そう思ってバッターボックスの五十嵐がバントの構えをしているのを見て驚いた。それじゃスクイズがばれるだろう。ベンチを見るとコーチは怒った表情をしている。しかし、既にプレイのコールがあって、ピッチャーは構えて、今にも投げようとしている。そして、俺もスタートの準備をした。

ウィンドミルからボールが離れた瞬間スタートを切った。すると目の前でキャッチャーが立っていたのを見て思わず引き返した。ボールを取ってキャッチャーは直ぐにサードへ投げてきた。

「セーフ！！」

俺は何とかサードへ戻ることができたのだが、その時だった。あ！！という声がして、

「セカン！！」

誰かがそう声を上げた。実は、鈴鹿が盗塁をしていたのだった。慌てたサードはセカンドへボールを投げる。それと同時に俺はホームへ向かってスタートを切った。

「セーフ！！」

こうして１点を取ることができたのだった。この後、追加点もなくこの回は終わったのだが、ベンチに戻った途端、

「何やってんだ！！このガキが！！」

バチーン！！

向こうのコーチにビンタをされていたのだった。