恐怖への導き

Seabolt

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戦慄の占い師

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これは友人の話です。友人と言っても私としてはあんまり付き合いたくない人だった。ただ、彼女は無類の占い信奉者で事あるごとに占いをして物事を決めているような人だった。そんな彼女と偶然出会ったのはスノバコーヒーで一人、フラペチーノを楽しんでいた時だった。

「ミク!!ひさしぶり~」

「あら!サヤ、久しぶり~どうしたの今日は」

「ふふふ…」

不敵に笑っているところを見ると今日はかなり機嫌がいい。

「実は、これから彼と会う約束をしているの…ひょっとしたらプロポーズされるかも」

「えー?ほんと?すごくない?」

「でしょ」

ロングスカーフをアクセントにお洒落な春めいた服を着ていた。そんな彼女はやはり占い好きはやめられないようで

「ところでミク、知ってる?この近くによく当たるって噂の占い師がいるの?」

でた!!占い師ネタ。こういう時は話を合わすのが一番だ。何故なら、サヤは気性が激しく、不機嫌なことを言おうものなら、八つ当たりされた挙句、知り合いにあることないことを10倍くらいにして、言いふらす達の悪い女だった。

「あ…そ…そうなんだ。へー初めて聞いたわ」

気のない返事に眉をピクリと動かす彼女、しかし、私が知らないことをいいことにそこから得意げに話をしてきた。

「え~!!知らないの?じゃ・・教えてあげるから一緒に来て」

最悪だ。と考えても決して口にしてはいけない。相手は何をしで貸すかわからない相手だ。という訳で私は、仕方なく、彼女についていくことになった。



 駅から少し離れた路地裏の雑居ビルの一室にその占いの館はあった。そこに入ると眼鏡をかけた小太りな見た目オタクみたいなおっさんが座っていた。そんな彼を見て彼女は、

「すみません。占いをしてもらいに来たんですけど、先生はいらっしゃいますか?」

すると、そのおじさんは、鋭い視線を上げた。そして、私と彼女を交互に見た。見た目小太りで、2重顎に無精ひげ、眼光が鋭い分、何か独特で気持ち悪い。と思っていると視線が合った。

「あなた、キモイと思ったでしょ」

その言葉にどきりとした私なんだけど、そんなことを一切気にしない彼女は

「ですから、占いの先生はどこですか?」

すると、その人は彼女をじっと見た。その勢いに珍しく押される彼女は

「キモ…」

そんな言葉を漏らすとすかさず彼は驚きの言葉を放ってきた。

「私が占い師です」

当然、彼女は全く認めることが出来ないみたいで、承服しかねたのか、怒り出した。

「冗談じゃないわよ。あなたなんかに見てもらいたくないわよ」

するとその占い師は

「私もあなたのことをうらないたくない」

その言葉にも驚いていたんだけど、サヤは完全に怒りを爆発していた。

「私もあなたなんかに見られたくないわよ!!ミク!!出ましょ!!」

そこまで言い切って、その場から出ようと席を立た時、一人の女性が入って来て、占い師に話しかけた。

「先生!ありがとうございました。先生のおっしゃるとおりにして、見事、念願のお店を開くことができました!!これお礼です」

そういって、彼女は、目の前にお礼と書かれた封筒を置いた。その厚みは見たこともない厚みだった。しかし、その占い師は、それを彼女に返した。

「お礼は受け取れません。あなたがお礼を言ってくれただけで十分です」

しかし、彼女は、納得がいかないようでしばらく彼ともみあいになった。しばらくして、占い師は、あきらめたらしく、

「このお金は大事なお金です。いずれ困った時にそのお金が役に立ちます。その時まで私が預かっておきます。困った時は迷わずに私の所へ来てください」

こうして、彼女との会話を終えた占い師は、そのお金をもって、店の奥へ消えたその時だった。再びお店の扉がガランという音を立てて開いた。

「先生!!いますか?」

今度は、若い女性がやってきた。見た目は、少し夜のお仕事をしているような感じの彼女、私たちを見て

「お客さんですか?」

「いえ」

そう答えてサヤに

「今のうちに変えいましょう」

と言ったまでは良かったんだけど、彼女の眼の色が変わっていた。

「いや…私見てもらう」

「サヤ…でも、さっき…」

「ミクもあれ見たでしょ?」

そんなやり取りをしているうちに占い師が店に現れた途端、さっきの女性が

「先生!!感謝してます。抱かれてもいいくらい!!」

「いえ…結構です」

律儀に答えるその占い師

「ありがとうございました。これで夜の世界から抜け出せます」

そういって、彼女もお礼をその先生に渡そうとした。やはり、その厚みはさっきのと変わらないくらいだった。やはり、その占い師の先生は、そのお金を受け取ろうともしないんだけど、結局、最後は、彼女が押し付ける形で渡すのだった。
結局、サヤはどうしても見てもらうの一点張りでいうことを聞いてくれなかった。そして、その占い師が再び店の奥から出て来て、私たちがまだいたのに気付いた。

「まだ、いらしたのですか。そろそろ、お店を閉めますので、お帰り…」

占い師がいいかけたところで、ミサが叫んだ。

「私を見てください。お金は、この通り」

そう言って、彼女は、見料5000円をバンと机の上に置いた。すると、呆れた表情を浮かべる占い師、しかも、困った表情を浮かべていた。

「私は、あなたを占いたくない」

「占いさないよ。見料も出したでしょう!!」

やや、キレ気味の彼女に占い師は、ため息をついた。そして、私に視線を向けた。

「あなた、今、最悪と思ったでしょう」

「本当なの?」

振り向いて私を睨む友人

「い…いえ…そんなこと絶対に思ってません」

心では図星だった。そして、私の答えに気をよくした彼女は、占い師の方へ視線を送った。

「そんなことは、どうでもいいのよ。早く私を占いなさい!!」

すると占い師は私の方を見て声をかけた

「もっと最悪なことをあなたは見るでしょう」

その言葉が面白かったのかサヤは私の方を見て笑った。

「最悪だって…あなたは…」

やがて、占い師はタロットカードを取り出した。そして、机の上に裏向きに広げた。

「これから、カードを混ぜます。いいと思ったら、はいと声をかけてください」

こうして、彼女がはいと言った瞬間、タロットを束ねた占い師はそのカードを少し持ち上げた。

「次に、上から落としますから、この時と思った時にはいと言ってください。これを3回繰り返します」

こうして、彼女の前に3枚のカードが出てきた。その時、占い師は、ぼそりとつぶやいて、肩を落とした。

「やっぱり…」

すると、友人は

「オーソドックスな占いね、これを開いたらいいの」

占い師は、私の方へ視線を送ってはため息をついた。

「あなたが思った順で開いてください」

すると1枚目、真ん中のカードを開くと運命の輪が出てきた。するとある程度意味が解っている彼女は、微笑んでいる。それとは対照的に、ため息をつく占い師。そして、友人が2枚目に手をかけた。すると占い師はぼそりと

「つるされた男」

その通り、吊るされた男が出てきた。それを見た占い師は、更にため息をついた。そして、3枚目に手をかけた途端、ぼそりと

「死神」

そう・・死神のカードが出てきた。そして、占い師は彼女にこう告げた。

「いいですか。1枚目の運命の輪は、ここで占ったことを意味しています。つまり、私のいうことを聞いてください。さもないと、2枚目、3枚目のことがあなたに降りかかってきます」

すると彼女はブチ切れた。

「何言っているのよ!!今日、彼からプロポーズを受ける予定なんだから、そんなことできるもんですか!!」

彼女の彼、悠人って名前なんだけど、私は知っている彼の女癖の悪さをそれを伝えたけど、彼女は理解しようともしない。

「本当にやめて下さい」

「知らないわよ」

取り合おうとしない彼女を見て占い師はあきらめたのか、私の方へ視線を向けた。そして、

「あなたもついて行かない方がいいですよ。本当に最悪なことが起きますから」

「こんな占い信じないわよ!!見料損した!!ミク行こ!!」

彼女は無理矢理私の手を引っ張って、その占いの館を後にした。そして、とある駅の2階の改札から出たコーンコースで、私たちは、悠人が来るのを待っていた。

 時間より少し前に悠人が現れたその時だった。見たことのない女性が、駆け寄って来て、友人に詰め寄って、その首を絞めだした。

「あなたね!!悠人を横取りしたのわ!!」

「きゃー!!」

辺りは一瞬で騒然となった。そして、どういう訳かわからないまま、友人は、その2階の手摺を乗り越え1階へ転落した次の瞬間、彼女のロングスカーフがその手摺と彼女の足に絡まり、彼女は、逆さに吊るされてしまった。しかも、そのまま、顔を壁へ激突してしまって、顔中血まみれの状態で意識を失っているようだった。

 しばらくして、そのロングスカーフが外れ彼女は、1階へ転落、首の骨を折って、彼女はそのまま帰らぬ人となった。

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