職業、死神

たける

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1.職業、死神

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俺の家系は代々、死神だ。
どんな役割を果たすかと聞かれたら、こう答えるしかない。

死期の近づいた人間に、それを知らせる伝達者。
また、夢の中で夢を叶える者。

どうやって知らせるかは様々だが、大体は夢枕に立つ。知らされた当人が、それを覚えている確率は低いのだが、直接伝える訳にはいかない。伝えてもいいが、信じてくれず、狂人だと思われるのがオチだ。
だからうちでは、ずっと前から夢枕方式を実践している。当人が覚えていなくても、それは俺達が職務怠慢をしている訳ではないし、それが普通なのだ。

だが俺は、それじゃあ死神の甲斐がないように思えて仕方がない。別にうちのやり方に反発する訳ではないが、俺は少し前から、直接伝える事にしている。
さすがに夢を叶えるのは、夢の中でないと出来ないが。
大体の人間は、現在の自分に持っていないものを要求する。例えば、若さだったり、金持ちになったり、時に有名人になりたがったり様々で、俺はこの、夢を叶えると言う仕事が好きだ。人間が幸せそうに笑う姿を見ていると、魔法使いになった気分になれる。

死んだ人間がどうなるか。
それは俺の知らない事だ。
人間が想像するような天使が迎えに来たり、悪魔が来たりするのかも知れないが、俺は会った事も見た事もない。だから、死後の世界──いわゆる天国や地獄と言った場所──それが存在しているのかも知らないのだ。

今日もまた、死期の近づいた人間に会いに、俺はこの世界にやって来ている。ごみごみとしていて、人間が無数にいる場所。

これだけ多いのだから、少し減ったぐらいで世界はどうもならないだろう。むしろ、もう少し間引いた方がいいのでは、と思うぐらいだ。
だが、間引くのも俺達死神の仕事ではない。

俺は人波に逆らわず、ゆっくりと歩き出した。
今日会う予定なのは、ジェームズ・カルレオ、18歳。死期は3日後だ。





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