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第22章.式典会場
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元日に行われている式典には、各界の著名人が集まっている。そんな中──やっぱり場違いなんじゃないかって──俺は浮いているように思えてならない。
──疲れたな……
秘書の中村と共に挨拶をして回るのに疲弊する俺は、朋樹や康介さんの姿を見つけては、頑張らないと、と、自身を奮い立たせていた。
マスコミも、一同に会した著名人──朋樹や康介さん、それに、我孫子監督もいる──にインタビューをしたり、写真を撮ったりと、忙しなく動き回っている。
「やぁ、剣崎君!久しぶりだな」
共同経営者の挨拶を終え、棟方社長が──酒で酔ったような赤ら顔で──声をかけてきた。全身に悪寒が走る。
「お、お久しぶりです……」
1番会いたくなかった人物──会わない確率などなかったけど──に会釈し、俺は形だけの笑みを向けた。
「また君に接待をしてもらいたくてね」
「え……?」
「別室に来てくれないか?ん?」
嫌だ。断って、今すぐ逃げ出したい。だけど──そんな俺の胸中など察する訳もなく──棟方社長が手を握ってくる。救いを求めるように近藤社長へ顔を向けても、ただ笑っているだけだった。
「剣崎、お相手を」
「そ、そんな……!」
「これからは、お前の社長でもあるんだぞ?お相手をしなさい。それとも……」
そう言った近藤社長が、耳元へ唇を寄せてくる。
「先日の動画を見せてもいいんだぞ?」
血の気が引いていく感覚があった。
──あれは、自分が楽しむだけだって……!
裏切られた気がして、力が抜けていく。それをいい事に、棟方社長が俺の手を引いて歩き出した。足が、勝手に歩いて行く。
「沢村を呼ぼうか?」
「やっ……止めて下さい」
もう、あんな思いはさせたくない。
苦しむのは、俺だけで十分だ。
──疲れたな……
秘書の中村と共に挨拶をして回るのに疲弊する俺は、朋樹や康介さんの姿を見つけては、頑張らないと、と、自身を奮い立たせていた。
マスコミも、一同に会した著名人──朋樹や康介さん、それに、我孫子監督もいる──にインタビューをしたり、写真を撮ったりと、忙しなく動き回っている。
「やぁ、剣崎君!久しぶりだな」
共同経営者の挨拶を終え、棟方社長が──酒で酔ったような赤ら顔で──声をかけてきた。全身に悪寒が走る。
「お、お久しぶりです……」
1番会いたくなかった人物──会わない確率などなかったけど──に会釈し、俺は形だけの笑みを向けた。
「また君に接待をしてもらいたくてね」
「え……?」
「別室に来てくれないか?ん?」
嫌だ。断って、今すぐ逃げ出したい。だけど──そんな俺の胸中など察する訳もなく──棟方社長が手を握ってくる。救いを求めるように近藤社長へ顔を向けても、ただ笑っているだけだった。
「剣崎、お相手を」
「そ、そんな……!」
「これからは、お前の社長でもあるんだぞ?お相手をしなさい。それとも……」
そう言った近藤社長が、耳元へ唇を寄せてくる。
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血の気が引いていく感覚があった。
──あれは、自分が楽しむだけだって……!
裏切られた気がして、力が抜けていく。それをいい事に、棟方社長が俺の手を引いて歩き出した。足が、勝手に歩いて行く。
「沢村を呼ぼうか?」
「やっ……止めて下さい」
もう、あんな思いはさせたくない。
苦しむのは、俺だけで十分だ。
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