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第17章.ご褒美
3.
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先に到着して、ガードパイプに腰を下ろした。澪さんはまだ来てない。
──澪さんのスーツ姿かぁ……
実はまだ、見た事がない。会った時はいつも、ラフな格好──それもオシャレだけど──だったから。
防寒──トレーニングウェアにネックウォーマーと、毛糸の帽子──してるから、目立ってはいないようだ。
「お待たせ」
オレの姿を見つけて、小走りにやって来る。そのスーツは、アイボリーブラックの上下に、レジメンタルタイ──ワインカラーとダークグレーのストライプ──と言う、オシャレなものだ。
「わぁ……!澪さん格好いい!」
「あはは、ありがとう」
「ぎゅうってしたいな」
「あ、あの後、怒られたりしなかった?俺は、会社でからかわれたりしたよ」
そう言いながら、澪さんもオレの隣に腰かける。
「監督にめっちゃ怒られた」
「やっぱり。じゃあ、ちょっとは自重しなきゃ」
「でもさ、会いたいんだもん。ご褒美だって……」
弱音が口をついて出そうになって、グッと我慢した。
「そうだよねー……頑張ったら、ご褒美欲しいよね」
よしよし、って、頭を──帽子越しだけど──撫でてくれる。父さんにされるのとは違う、嬉しい以上の何かが湧き上がってきた。
「だ、だから……」
──欲しい。澪さんが……
「朋樹……」
「ちょうだい、ご褒美……」
手を握った。冷たい指差が手の甲に触れ、澪さんはニコリと笑った。
──澪さんのスーツ姿かぁ……
実はまだ、見た事がない。会った時はいつも、ラフな格好──それもオシャレだけど──だったから。
防寒──トレーニングウェアにネックウォーマーと、毛糸の帽子──してるから、目立ってはいないようだ。
「お待たせ」
オレの姿を見つけて、小走りにやって来る。そのスーツは、アイボリーブラックの上下に、レジメンタルタイ──ワインカラーとダークグレーのストライプ──と言う、オシャレなものだ。
「わぁ……!澪さん格好いい!」
「あはは、ありがとう」
「ぎゅうってしたいな」
「あ、あの後、怒られたりしなかった?俺は、会社でからかわれたりしたよ」
そう言いながら、澪さんもオレの隣に腰かける。
「監督にめっちゃ怒られた」
「やっぱり。じゃあ、ちょっとは自重しなきゃ」
「でもさ、会いたいんだもん。ご褒美だって……」
弱音が口をついて出そうになって、グッと我慢した。
「そうだよねー……頑張ったら、ご褒美欲しいよね」
よしよし、って、頭を──帽子越しだけど──撫でてくれる。父さんにされるのとは違う、嬉しい以上の何かが湧き上がってきた。
「だ、だから……」
──欲しい。澪さんが……
「朋樹……」
「ちょうだい、ご褒美……」
手を握った。冷たい指差が手の甲に触れ、澪さんはニコリと笑った。
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