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第17章.ご褒美
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会見で色々──特に澪さんとの関係について──聞かれたけど、親しくさせてもらってると、言うだけに留めた。それも父さんや監督──我孫子弘之51歳で、元100キロ超級の選手──に、キツく言われたからだ。
「皆とはここで解散だが、朋樹、お前には話がある。いいな?」
「……はい」
他の選手達──オレ以外の19人──が、仲のいい者同士でひそひそしてる。そんな皆を、コーチ達が追いたてるように解散させた。
「来なさい」
そう言って歩いて行く。オレはそんな監督の後を追うけど、どうせ澪さんの事だろうと思っていた。
やがて人気のない通路に──父さんも着いてきていた──来ると、監督は腕を組みながらオレを見下ろしてきた。
「朋樹、さっきの件について、ちゃんと報告しなさい」
「……あの人とは、本当に友達なだけです」
「そうだと信じてるが、もし違うなら、早目に別れるんだ」
「我孫子監督、それは……」
父さんが口を挟んでくる。けど、監督はそれを片手を上げて制した。
「沢村は黙っていてくれ。いいか、朋樹。お前は今、世間からの注目度が高い。オリンピック内定を決めたんだからな。それに、世界柔道のチャンピオンでもある。それを自覚して、ああ言う行動は慎みなさい」
有無を言わさぬ厳しい口調に、オレは俯いた。
監督が注意するのは分かる。オレだって、オリンピックに向けて、これから猛練習しなければならない事も。
今まで以上に、柔道に集中しなければいけない事も理解してる。
──だけど……!
「わ……私は……」
「片想いか?それとも、私に黙ってるだけで、既に付き合ってるのか?」
監督は怖い人だ。とても厳しい。練習もそうだけど、柔道家たる者、って感覚の人だから、品行方正にしろって、いつも言っている。
だけどオレは、柔道家の前に男だ。恋だってしたいし、セックスだってしたい。
片想いだって、していい筈だ。
「好きです。片想いですが、いずれ付き合いたいと思っています」
ここは引けない。
「恋愛に現を抜かしている立場か?そう言うのは、金メダルを取ってから言え!」
悔しくて唇を噛んだ。すると、肩にそっと──父さんだ──手を置かれた。
「私からも話しておきますので、今日はもう……」
「……分かった」
そう言って監督は踵を返し、去って行った。残されたオレは、つい、壁を殴った。
「朋樹、監督の言ってる事も分かるな?」
「分かるよ……けど……けど……っ!」
「悔しいなら、両立させなさい」
「え?」
顔を上げると、父さんは器用にウィンク──気持ち悪い──をしてきた。
「皆とはここで解散だが、朋樹、お前には話がある。いいな?」
「……はい」
他の選手達──オレ以外の19人──が、仲のいい者同士でひそひそしてる。そんな皆を、コーチ達が追いたてるように解散させた。
「来なさい」
そう言って歩いて行く。オレはそんな監督の後を追うけど、どうせ澪さんの事だろうと思っていた。
やがて人気のない通路に──父さんも着いてきていた──来ると、監督は腕を組みながらオレを見下ろしてきた。
「朋樹、さっきの件について、ちゃんと報告しなさい」
「……あの人とは、本当に友達なだけです」
「そうだと信じてるが、もし違うなら、早目に別れるんだ」
「我孫子監督、それは……」
父さんが口を挟んでくる。けど、監督はそれを片手を上げて制した。
「沢村は黙っていてくれ。いいか、朋樹。お前は今、世間からの注目度が高い。オリンピック内定を決めたんだからな。それに、世界柔道のチャンピオンでもある。それを自覚して、ああ言う行動は慎みなさい」
有無を言わさぬ厳しい口調に、オレは俯いた。
監督が注意するのは分かる。オレだって、オリンピックに向けて、これから猛練習しなければならない事も。
今まで以上に、柔道に集中しなければいけない事も理解してる。
──だけど……!
「わ……私は……」
「片想いか?それとも、私に黙ってるだけで、既に付き合ってるのか?」
監督は怖い人だ。とても厳しい。練習もそうだけど、柔道家たる者、って感覚の人だから、品行方正にしろって、いつも言っている。
だけどオレは、柔道家の前に男だ。恋だってしたいし、セックスだってしたい。
片想いだって、していい筈だ。
「好きです。片想いですが、いずれ付き合いたいと思っています」
ここは引けない。
「恋愛に現を抜かしている立場か?そう言うのは、金メダルを取ってから言え!」
悔しくて唇を噛んだ。すると、肩にそっと──父さんだ──手を置かれた。
「私からも話しておきますので、今日はもう……」
「……分かった」
そう言って監督は踵を返し、去って行った。残されたオレは、つい、壁を殴った。
「朋樹、監督の言ってる事も分かるな?」
「分かるよ……けど……けど……っ!」
「悔しいなら、両立させなさい」
「え?」
顔を上げると、父さんは器用にウィンク──気持ち悪い──をしてきた。
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