ホワイト・ルシアン

たける

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第11章.怒り

2.

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猥雑なロビーで、スマホを弄りながら時間を潰す。
部屋では澪さんが寝て──気を失ったまま──いて、側にいたかったけど、オレは吉村を呼びつけていたから、ロビーに居ざるをえなくて。

「遅いなぁ……」

あいつの家からこのホテルまで、駅にして2つなんだけど。
もう連絡して、15分は経つ。催促のラインでも送ろうかと思っていると、ガタついた自動ドアが開き、汗を拭いながら吉村が入ってきた。

「すみません、遅くなりましたぁ!」
「おせーよ。どこで油売ってたんだよ」

睨んでも、エヘヘと笑った。軽く舌打ちし、取り敢えず部屋へ案内する。

「急にどうしたんですか?すぐ来いって……それにここって、ラブホですよね?」
「いちいち聞かないで。とにかく、お前にしか頼めないんだから」
「死体処理とかじゃないですよね?」
「はあ?」

オレって──吉村の中では──どんなイメージなんだよ。まぁ、あんまりボロクソに言って、ヘソを曲げられても困るから──それについては言及せず──黙って部屋のドアを開けた。

「入って」

顎で促すと、警戒しながら入り、そしてすぐ、ベッドに横たわる──服は着せておいた──澪さんを発見し、駆け寄った。

「ちょ……!澪君!」
「吉村、澪さんの事、頼むよ。オレ、ちょっと酷い事してさ、顔、合わせ辛くて……」

そう言うと、吉村は怖い顔で──初めて見た──オレを睨んだ。

「何をしたんですか、澪君にぃ!」
「……それはオレからは言えない」
「ぐったりしてるじゃないですかぁ!」
「あー……とにかく、頼むよ」

逃げるように部屋を出る。扉を閉める前、吉村が澪さんを呼ぶ声が聞こえた。




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