ホワイト・ルシアン

たける

文字の大きさ
上 下
6 / 86
第2章.年下

3.

しおりを挟む
圭人と過ごした週末は、久しぶりに落ち込まなかった。いつもなら出会いを求めて街に出たり、自分を貶めるようなセックスに悔やんだりしてたんだけど。


──こんな晴れやかな気分の月曜なんて、あの日以来なんじゃ……?


そんな事を思いながら、営業先の1つである、県立N高等学校──都心から車で約2時間程行った、海沿いの町にある──へ来ていた。
この高校は、サンライズ創業以来の大のお得意様で、今日は器具のメンテナンスと、新しい商品の紹介の為の訪問だ。

「まだ残暑が厳しいですねぇ」

そう言う教頭先生に従い、体育館へ向かう。校舎から繋がる渡り廊下で、生徒達──恐らくバスケ部──とすれ違い様に会釈すると、見覚えのある顔が体育館から顔を覗かせているのに気付いた。

「あ……れ、姫野?」

短く刈り込まれた黒髪に、少し垂れた丸い目と、人懐っこい笑み。確かに、大学の後輩である姫野浩一ひめのこういちだった。

「剣崎先輩じゃないですかぁ!え?え?どうしたんです?」
「姫野先生とお知り合いなんですか?」
「あ、はい。同じ大学出身で……」

実際に、大学時代を共にした訳じゃない。俺がプロになってから訪問した際、ラグビー部に姫野──当時大学2年──がいた。
それから年に1回は──プライベートで──会うようになったのだけど、今年はまだだった。

「じゃあ、後は姫野先生にお任せしましょうか」
「はい!大丈夫です、任せて下さい!」

そう言って胸板を叩く姫野に、教頭先生は俺を押し付けて去って行った。その後ろ姿を、2人で見送る。

「えーっと……じゃあ、よろしくお願いします」
「あはは!先輩、畏まらなくていいですよ」
「そう?じゃあ、うん」

こんな形で顔を合わせる──体育教師をしていると聞いていたけど、まさかN高校だとは──事になるなんて。
戸惑いつつ、仕事はきっちりしないとな、って。




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

放課後教室

Kokonuca.
BL
ある放課後の教室で彼に起こった凶事からすべて始まる

年越しチン玉蕎麦!!

ミクリ21
BL
チン玉……もちろん、ナニのことです。

ハルとアキ

花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』 双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。 しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!? 「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。 だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。 〝俺〟を愛してーー どうか気づいて。お願い、気づかないで」 ---------------------------------------- 【目次】 ・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉 ・各キャラクターの今後について ・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉 ・リクエスト編 ・番外編 ・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉 ・番外編 ---------------------------------------- *表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) * ※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。 ※心理描写を大切に書いてます。 ※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪

キサラギムツキ
BL
長い間アプローチし続け恋人同士になれたのはよかったが…………… 攻め視点から最後受け視点。 残酷な描写があります。気になる方はお気をつけください。

さよならの合図は、

15
BL
君の声。

処理中です...