4 / 86
第2章.年下
1.
しおりを挟む──現在
「マジで?澪君、失恋した事あるんだ?」
「そりゃ、あるよ。失恋した事ない人なんて、いないんじゃないの」
騒々しい金曜の居酒屋で、俺は同業者の吉村圭人と向かい合っていた。
彼との出会いは先週、取引先で営業をしている時の事だった。通常なら、営業先で鉢合わせなんかないのに。でも、顔を合わせたからには、と、会釈した瞬間、胸が高鳴った──そんな事は、今までになかった──のを覚えてる。すぐに連絡先を交換して、今夜は初めて膝を付き合わせていた。
「ごめんごめん。や、澪君みたいなイケメンでも、フラれちゃうんだね」
「はは、そうみたい」
「否定しろっての!ま、イケメンはイケメンだけど」
そう言う圭人もハンサムだ。丸顔で愛嬌があり、例えるならタヌキみたいだと思う。
一回りほど違うけど、離れすぎてるから仲良くなれたのかも知れない。
「鮫嶋選手、テレビで見た事あるよ。めっちゃハンサムだよね。沖縄系って言うか」
酒豪の圭人は、そう言いながらグラス──ウィスキーのロック──を傾けた。もう5杯目だけど、まるで水を飲んでるみたいだ。
「噂のイケメンって言えば、澪君もじゃない?現役の時、凄かったもんね」
「今じゃ、あの人は今、みたいだけどね」
「俺は好きだけどなー、澪君みたいな柴犬顔」
じっと見つめてくる瞳が、頬を撫でているように感じる。目を逸らそうとすると、さっと顎を掴まれた。
「な、なに?」
「可愛いなーって……」
元柔道選手だった圭人は、俺と同じくらい体格──身長も180と、ほぼ一緒──がいい。でも階級が100キロ級だったせいか、ほんのちょっぴり、ぽちゃっとしてる。だから余計にタヌキっぽいのかも。
「この後……いい?」
少し鼻にかかった、甘えたような声音。それが鼓膜をくすぐり、下肢に鈍い疼きを感じた。
──どうしよう……
失恋以来、自暴自棄になって、様々な男と関係してきた。昨日だって。
「いいよって、言って……」
圭人とは出会って日は浅いけど、大いに惹かれているのは確かだ。
──抱かれたい……
そう思った瞬間、俺は頷いていた。
0
お気に入りに追加
22
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
寮生活のイジメ【社会人版】
ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説
【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】
全四話
毎週日曜日の正午に一話ずつ公開
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
ハルとアキ
花町 シュガー
BL
『嗚呼、秘密よ。どうかもう少しだけ一緒に居させて……』
双子の兄、ハルの婚約者がどんな奴かを探るため、ハルのふりをして学園に入学するアキ。
しかし、その婚約者はとんでもない奴だった!?
「あんたにならハルをまかせてもいいかなって、そう思えたんだ。
だから、さよならが来るその時までは……偽りでいい。
〝俺〟を愛してーー
どうか気づいて。お願い、気づかないで」
----------------------------------------
【目次】
・本編(アキ編)〈俺様 × 訳あり〉
・各キャラクターの今後について
・中編(イロハ編)〈包容力 × 元気〉
・リクエスト編
・番外編
・中編(ハル編)〈ヤンデレ × ツンデレ〉
・番外編
----------------------------------------
*表紙絵:たまみたま様(@l0x0lm69) *
※ 笑いあり友情あり甘々ありの、切なめです。
※心理描写を大切に書いてます。
※イラスト・コメントお気軽にどうぞ♪
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/bl.png?id=5317a656ee4aa7159975)
エデンの住処
社菘
BL
親の再婚で義兄弟になった弟と、ある日二人で過ちを犯した。
それ以来逃げるように実家を出た椿由利は実家や弟との接触を避けて8年が経ち、モデルとして自立した道を進んでいた。
ある雑誌の専属モデルに抜擢された由利は今をときめく若手の売れっ子カメラマン・YURIと出会い、最悪な過去が蘇る。
『彼』と出会ったことで由利の楽園は脅かされ、地獄へと変わると思ったのだが……。
「兄さん、僕のオメガになって」
由利とYURI、義兄と義弟。
重すぎる義弟の愛に振り回される由利の運命の行く末は――
執着系義弟α×不憫系義兄α
義弟の愛は、楽園にも似た俺の住処になるのだろうか?
◎表紙は装丁cafe様より︎︎𓂃⟡.·
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる