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第5章
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ドリーはまた興奮状態に陥り、医師が鎮静剤を投与して出て行くと、マイラがぽつりぽつり話し始めた。
「私は、そんな恐ろしい計画を立てているとは知らなかった……セルクトラさんがオニオンアレルギーだと聞いて、代わりのものを作りに台所に行ったわ」
それから少しして、物音と怒鳴り声が2階からし、マイラはドリーの部屋に入った。そこでセルクトラの首吊り体を発見したのだと言った。
「部屋は散らかってて、サイモンとカールがいて、ドリーは泣きじゃくってたわ。だから私、何があったか聞いたの。そしたらサイモンが……」
夫はセルクトラを殺した、と言った。マイラは動転したが、サイモンは落ち着いていて、片付けるのを手伝えと言った。その時カールがランプを片付けようとして指を切り、マイラはカールの手当てとガラス片についた血を拭いたのだ。
「片付けをしていたら、警察が来ましたね?」
それは近所のトラバースによるものだ。
「えぇ……誰か、近所の人が通報したのだと思って、まだ片付けも終わってなかったから、何もないと言って、帰ってもらったの」
マイラが話している間、サイモンとカールは黙ったまま俯いていた。それは観念したように見える。
「片付け終わってから、家族会議をしたわ。警察に聞かれた時の為に、セルクトラさんが知らずにオニオンスープを飲んでしまって、苦しさのあまり自殺した、と言う事にしようって……」
そう言うと、マイラも頭を項垂れた。
「サイモン・モーリス、カール・モーリス、貴方達を殺人罪で逮捕します」
静かにジェシカはそう言い、廊下に待機していた警官を呼び入れた。2人は抵抗せず、大人しく手錠をかけられる。
「マイラ・モーリス、貴女は殺人幇助の罪で逮捕します」
ジェシカはマイラに手錠をかけた。ローレンは写真を手帳に戻すと、連行されて行くサイモンに声をかけた。
「何故ドリーに、カウンセリングを受けさせなかったんです?」
サイモンは顔を上げると、虚ろな娘を見遣った。
「私は会社では重役なんだ。カウンセリングを娘が受けたと知れたら、どうなると思う?」
それを聞いたローレンは、ほとほと呆れた。娘の為ではなく、保身の為に殺人を犯したのだ。
「間違った判断でしたね」
サイモンは連行されて行った。ローレンはドリーへ近付くのを躊躇い、少しだけ距離を置いてから言った。
「ドリー。君はまず、病院で治療を受けるんだ」
女性警官がドリーに付き添うのを見守りながら、ジェシカは眉間に皺を寄せていた。ふと、ドリーが足を止める。依然視線は下がったままで、ローレンを見ない。彼女は男性恐怖症になったんだろう、とローレンは感じた。
「刑事さん、私が悪いの……あの人が、私を誘拐しようとした犯人じゃないって、頭では分かってたのに……」
「仕方がないさ、怖かったんだろう?」
そうローレンが言うと、ドリーは再び歩き出した。
「可哀想だわ……今の彼女には、家族の支えが必要なのに」
ローレンもその意見に頷いた。
.
「私は、そんな恐ろしい計画を立てているとは知らなかった……セルクトラさんがオニオンアレルギーだと聞いて、代わりのものを作りに台所に行ったわ」
それから少しして、物音と怒鳴り声が2階からし、マイラはドリーの部屋に入った。そこでセルクトラの首吊り体を発見したのだと言った。
「部屋は散らかってて、サイモンとカールがいて、ドリーは泣きじゃくってたわ。だから私、何があったか聞いたの。そしたらサイモンが……」
夫はセルクトラを殺した、と言った。マイラは動転したが、サイモンは落ち着いていて、片付けるのを手伝えと言った。その時カールがランプを片付けようとして指を切り、マイラはカールの手当てとガラス片についた血を拭いたのだ。
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マイラが話している間、サイモンとカールは黙ったまま俯いていた。それは観念したように見える。
「片付け終わってから、家族会議をしたわ。警察に聞かれた時の為に、セルクトラさんが知らずにオニオンスープを飲んでしまって、苦しさのあまり自殺した、と言う事にしようって……」
そう言うと、マイラも頭を項垂れた。
「サイモン・モーリス、カール・モーリス、貴方達を殺人罪で逮捕します」
静かにジェシカはそう言い、廊下に待機していた警官を呼び入れた。2人は抵抗せず、大人しく手錠をかけられる。
「マイラ・モーリス、貴女は殺人幇助の罪で逮捕します」
ジェシカはマイラに手錠をかけた。ローレンは写真を手帳に戻すと、連行されて行くサイモンに声をかけた。
「何故ドリーに、カウンセリングを受けさせなかったんです?」
サイモンは顔を上げると、虚ろな娘を見遣った。
「私は会社では重役なんだ。カウンセリングを娘が受けたと知れたら、どうなると思う?」
それを聞いたローレンは、ほとほと呆れた。娘の為ではなく、保身の為に殺人を犯したのだ。
「間違った判断でしたね」
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「ドリー。君はまず、病院で治療を受けるんだ」
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「刑事さん、私が悪いの……あの人が、私を誘拐しようとした犯人じゃないって、頭では分かってたのに……」
「仕方がないさ、怖かったんだろう?」
そうローレンが言うと、ドリーは再び歩き出した。
「可哀想だわ……今の彼女には、家族の支えが必要なのに」
ローレンもその意見に頷いた。
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