狂気の涙

たける

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第5章

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事件はこうだったのだろうと思う。

セルクトラが隣に越してきたと挨拶に来た時、たまたまドリーは彼の姿を見た。そして家族には、彼が自分を誘拐しようとした犯人だと言った。だが、家族はそれを違うと言った。以前ドリー自身が警察に供述した男の特徴と、明らかに異なる部分があるからだ。それでもドリーは聞き入れず、自室に籠るようになった。


──食事もまともに取らず、このままではドリーが死んでしまうのではないか。


そう家族は心配しただろう。
そこでセルクトラを犯人と言う事にして、殺してしまおうとなったのだ。

「安易な発想ですが、それで娘さんが少しでも楽になるのなら、と皆さん同意されたんでしょう」
「あぁ……」

マイラが呻いた。だがサイモンはまだ抵抗した。

「それはアンタの憶測だろう?私達はやってないんだ」

そう言ったサイモンを見遣り、ローレンはセルクトラの遺体写真を彼に見せた。

「モーリスさん、貴方は警察を甘く見てらっしゃったんじゃないですか?」
「今は科学技術がうんと発達して、大体の痕跡を見付ける事が出来るわ」

ジェシカがローレンの言葉を継いで言うと、写真を指した。

「この傷は、首を吊る前に出来たものだと科学的に証明されてるの。それだけじゃないわ、貴方達が捨てた食べ残しから、DNAも採取した。サイモンさん、貴方のDNAがセルクトラの爪の間から見つかったわ。これがどう言う事か、分かる?」

挑発的なジェシカの物言いに、サイモンは顔を青くし始めていた。

「最初の計画は単純で、セルクトラは大柄な男ですが、2人がかりなら1人が彼を押さえ、もう1人が彼の首にロープを巻き付ける……ですがそうしなかったのは、会話で思わぬ情報を得たからでしょう」

セルクトラはオニオンアレルギーだった。それがテーブル並んだ時、彼はアレルギーだと家族に話しただろう。そこで計画は変更されたのだ。それを誤って飲んだセルクトラがショック状態になり、苦しみから逃れる為に首を吊ったと言う事にしようと。そして、誘拐未遂犯だとしようとし、小指を切断したのだ。

「幸いセルクトラは越してきたばかりで、アレルギーの話しも出来る程の付き合いがまだなかった」

サイモンかカールが、何か理由をつけてセルクトラをドリーの部屋へ連れて行き、どちらかがそこでセルクトラに無理矢理スープを飲ませた。思惑通りにセルクトラはショック状態になったが酷く暴れ、デスクの上にあったランプを倒したのだ。

「セルクトラをドリーの部屋に連れて行ったのは、彼女に犯人へ罰を与えているところを見せたかったからでしょう」

そこでローレンは、ランプから採取したDNA結果の書かれた書類を出した。

「カールのDNAがランプの破片から見つかったよ。ドリー、セルクトラを殺害したのは、お父さんとカール……だろう?」




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