狂気の涙

第２章

２─３

トラバースの家を出た２人は、誘拐事件の詳細を知る為に７分署を訪れた。ちょうどそこに、事件を担当した刑事がいて、ローレン達は詳細と共に報告書のコピーを取らせてもらった。

「もう３ヶ月になるが、何にも進展はないんだ」

そう担当刑事は漏らした。ローレンはコピーの礼を言って分署を出ると、ひとまずナシャンテ警察署へ戻った。
デスクにつき、報告書のコピーをじっくりと読む。事件は下校時に起き、被害者はドリー・モーリスとあった。また、彼女の話しから似顔絵が作成されている。

「セルクトラに似てる」
「あら、本当ね」

金髪で大柄、左頬のほくろ。共通点が多々ある。だが大きく違っているのは、この男には右小指の第一関節から無いと言う事だった。そこでローレンは感じた。セルクトラの指を切断しなければならなかった理由は、彼を誘拐犯に見せかける為だ。

「何か進展はあったか？」

署に戻ったローレン達に、テイラーがまた捜査状況の確認にやって来た。それを快く思っていないのが、ジェシカの横顔から僅かに見受けられる。

「はい。さっき第一通報者のトラバースから話を聞いてきたんですが……」

ローレンはトラバースから聞いた、３ヶ月前に起こっていたドリー・モーリス誘拐未遂事件を話し、またその犯人の似顔絵と今回の被害者とでは、共通点がいくつかある事も伝えた。そしてセルクトラの切断された指は、その犯人に見せかけるものだと言う自己の推測も話した。

「ふむ……じゃあ何か？あの家族は、誘拐犯が隣に越してきたと勘違いして殺した？殺した後、違うと分かって犯人に見せかけようとしたのか？」

そうテイラーは独自の意見を述べた。それはあながち間違ってはいないだろう。ローレンも少なからず、そうなのでは、と考えていた。

「僕もそう思います。ですが、本当に間違えて殺されたんでしょうか？だとしても、小指が途中で無いと言うのは大きな特徴です」

ローレンも意見すると、テイラーは中年太りしてきた腰に手をあてがい、似顔絵を指した。

「犯罪履歴と照合してみたのか？」

それは７分署の刑事が既に行っていた。だが、結果は該当者なしだった。

「彼は誰なんでしょう……」

ローレンは似顔絵を見つめながら呟いた。