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第六章
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あちらこちらで犬が吠え、遠くの方からザワザワと騒がしくなってきた。しかし、決してこちらの方に人々は集まってこようとはしなかった。3人は不思議に思ったが、そう気にも止めなかった。
「やったな、帝」
帝はくすぐったそうに笑った。澤木も喜んでいる。これで何もかもが終わった。ただ残念なのは、聖の骨が残らなかっただけ。帝は京助の体をそっと抱いた。
「澤木さん、家壊してもうたな、ごめんな」
「いいんだよ、気にしないで。僕は壊れて良かったと思ってるから」
3人はゆっくりと立ち上がり、白みかけた空を見上げた。そろそろ月と太陽の交代があり、いくら今は人が集まっては来ないと言っても、日が昇ると必ず集まってくるだろう。警察が来る前に、ここを離れなければ。
「帝、オレと一緒に来ないか?茂もどうだ」
「うちも?」
もう普通には戻れない。それに肉親もいない。それならば、自分と同じ者と一緒に行けば。帝は澤木を見た。澤木は帝を見ていた。
「帝さん、行こう。一緒に……」
帝は嬉しくなった。この言葉を言ってもらえるだけで、こんなに嬉しくなるなんて。帝は微笑み、そして大きく頷いた。
「うん、うちも行く」
澤木と帝が手を取り合った時、藤崎が2人をつき押した。
「!」
倒れ込みながら見た2人の目には──逆光線で藤崎の表情は伺えなかった──頭のない骸骨が藤崎に襲いかかる姿が映った。まともにくらったのに。帝はゾッとした。
「オマエジャナイ!」
どこから声がするのか、骨は言った。藤崎は骨の手に胸を裂かれ、地に伏した。
「藤崎さん!」
「に……逃げろ。早く茂と一緒に!」
「ソウハサセナイ」
どこからどうやって出てきたのか、頭だけが帝の足元で喋っていた。そして足首に食らいついてきた。激痛が体を駆ける。膝をつき、帝は顔を歪めた。
「帝さん、この、離れろ」
「ジャマダヨ!」
頭のない体に、澤木は掴み上げられた。そして藤崎の上に投げられた。
「ああ……」
「ミカド、ヤッテクレタネ。デモホラ、マタミカドニアエタヨ。コンドコソイッショニイコウネ、ソノチカラヲワタシニチョウダイ」
骨の手が帝の首にそっと絡みついた。もう終わりなんか。うちの力はこいつに奪われ、世界は……
兄貴はどうやって死んだんやろう。そんな事がふと、頭を掠める。骨の指は静かに首を絞め始めた。
「ソノチカラ、イタダクヨ」
「帝──っっ!」
聖の時と同じだ。目の前で見たくなかった、だからあの時。オレは、別に見たくなくて逃げた訳じゃない。助けられないから、それならばと思っただけだ。それなのにオレのこの能力は、それをキャッチして……
藤崎は頭を抱えた。澤木は叫んでいた。
太陽がその姿を全て現したときには、もうそこには帝の姿はなかった。凍てつきそうな風だけが吹いている。
やりきれない心を抱きながら、2人は電車に乗り込んだ。人々は2人の姿を見て指を差し、ひそひそと話し合う。そんな事を気に止めるでもなく、2人は押し黙っていた。服も髪もボロボロで、傷もそのままで。
「やったな、帝」
帝はくすぐったそうに笑った。澤木も喜んでいる。これで何もかもが終わった。ただ残念なのは、聖の骨が残らなかっただけ。帝は京助の体をそっと抱いた。
「澤木さん、家壊してもうたな、ごめんな」
「いいんだよ、気にしないで。僕は壊れて良かったと思ってるから」
3人はゆっくりと立ち上がり、白みかけた空を見上げた。そろそろ月と太陽の交代があり、いくら今は人が集まっては来ないと言っても、日が昇ると必ず集まってくるだろう。警察が来る前に、ここを離れなければ。
「帝、オレと一緒に来ないか?茂もどうだ」
「うちも?」
もう普通には戻れない。それに肉親もいない。それならば、自分と同じ者と一緒に行けば。帝は澤木を見た。澤木は帝を見ていた。
「帝さん、行こう。一緒に……」
帝は嬉しくなった。この言葉を言ってもらえるだけで、こんなに嬉しくなるなんて。帝は微笑み、そして大きく頷いた。
「うん、うちも行く」
澤木と帝が手を取り合った時、藤崎が2人をつき押した。
「!」
倒れ込みながら見た2人の目には──逆光線で藤崎の表情は伺えなかった──頭のない骸骨が藤崎に襲いかかる姿が映った。まともにくらったのに。帝はゾッとした。
「オマエジャナイ!」
どこから声がするのか、骨は言った。藤崎は骨の手に胸を裂かれ、地に伏した。
「藤崎さん!」
「に……逃げろ。早く茂と一緒に!」
「ソウハサセナイ」
どこからどうやって出てきたのか、頭だけが帝の足元で喋っていた。そして足首に食らいついてきた。激痛が体を駆ける。膝をつき、帝は顔を歪めた。
「帝さん、この、離れろ」
「ジャマダヨ!」
頭のない体に、澤木は掴み上げられた。そして藤崎の上に投げられた。
「ああ……」
「ミカド、ヤッテクレタネ。デモホラ、マタミカドニアエタヨ。コンドコソイッショニイコウネ、ソノチカラヲワタシニチョウダイ」
骨の手が帝の首にそっと絡みついた。もう終わりなんか。うちの力はこいつに奪われ、世界は……
兄貴はどうやって死んだんやろう。そんな事がふと、頭を掠める。骨の指は静かに首を絞め始めた。
「ソノチカラ、イタダクヨ」
「帝──っっ!」
聖の時と同じだ。目の前で見たくなかった、だからあの時。オレは、別に見たくなくて逃げた訳じゃない。助けられないから、それならばと思っただけだ。それなのにオレのこの能力は、それをキャッチして……
藤崎は頭を抱えた。澤木は叫んでいた。
太陽がその姿を全て現したときには、もうそこには帝の姿はなかった。凍てつきそうな風だけが吹いている。
やりきれない心を抱きながら、2人は電車に乗り込んだ。人々は2人の姿を見て指を差し、ひそひそと話し合う。そんな事を気に止めるでもなく、2人は押し黙っていた。服も髪もボロボロで、傷もそのままで。
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