幻想序曲

たける

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第五章

2.

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「帝……逃げろ。君だけは、君だけはアイツに渡せない」
「そんな……」

自分だけが逃げれば、この2人が殺されてしまう。しかし自分がここにいたとしても、何になるだろう。戦うしかない、しかし充分に力の使えない自分が戦って、勝てるのだろうか。負ければ自分は、自分の力は……背中に冷たい物を感じた。

「ミカド、ホラ」

骨の手が肩に伸びた。帝は振り向きざまに叫んだ。

「イヤ─────ツッ!」

光の塊が骨の手を砕いた。骨の頭領は叫んで後退した。帝はゆっくりと立ち上がり、決心したように向き合った。

「2人とも、かんにんな。うち、2人を置いて逃げるなんてでけへん」
「帝さん、君の力がアイツの手になるかならないかで、世界は……!」

もう帝の耳には届かなかった。願えば力は使える、願いさえすれば勝てない事はないのだ。全ての力をこの1発に賭ける。全ての力を手の中に、アイツを滅ぼせるだけの力を!
手元が光り始めた。

「ミカド、キミニハワタンヲホロボスコトナンテデキナイヨ。デキルハズガナイヨ」

骨は幻を作り出す。徐々に肉を付け、聖の姿が完成して行く。帝はチラリとそちらに目を向けたが、何も言葉を発する事なく、願い続けた。

「帝、帰ろうよ。どうしたの?」
「また兄貴の姿をして……うちの兄貴をアンタは、アンタは」

光が拡大した。帝を、そして全てを包み込んだ。金色に包まれ、夜空に光は昇っていく。

「恐い顔して、どうしたの帝?」
「許さへん、アンタなんか許さへん。うちの手で滅ぼしたる!」
「帝!」

聖は目を丸くした。光が帝から離れ、こちらへ飛んでくる。まさか自分は滅ぶのか?いいや、滅ぶ筈がない!

「死んでくれぇ!」
「ミカドオォォォ!」

光は聖を包むようにして破裂し、次の瞬間に物凄い爆風が3人を襲った。




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