幻想序曲

たける

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第四章

2.

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そして美山さんは、茂にも力を与えた。更に力を引き出してくれた。それに茂はついていけなかったけど、オレは耐えた。その痛みは予想以上のものであり、今まで味わった事のないものだった。その痛みを、今帝は味わっている。オレも耐えられたように、帝も耐えられるだろう。信じたかった。
もうそろそろ30分が経つ。円陣が消えていく。

「モウオワリダネ、ツカレタダロ?ヤスンデテイイヨ、ワタシハソノウチニミンナヲヨブカラ」

歯を鳴らして、聖であった骨が言った。2人は大きく肩で息をしている。そして円陣は完全に消えた。骨の頭領はゆっくりと立ち上がり、仄かに笑った。2人は後ずさった。早く帝に起きてもらわなければ、自分たちはやられてしまうかも知れない。瞬間的にそう思った。

「茂、大丈夫か?」
「うん、なんとか。でも恐いよ。どうして戦わなきゃいけないの、嫌だよ」
「今更弱音を吐くんじゃない。お前も選ばれた者なんだ、しっかりしてくれ」
「ウウン、イイネェ。ユウジョウッテヤツナノ?デモネ、ソレモモウオシマイダヨ」

骨の頭領は、白い手を頭上に掲げた。すると家の外で、何かが弾ける音がした。結界が破られたのだ。力が急に弱まったせいだ、澤木は更に恐くなった。骸骨達が家の中に入ってくるのだ。人々の夢を安心して喰らうために1番邪魔な、自分たちを殺しにやってくるのだ。

──カタカタカタ

帝は苦しまなくなり、静かに横たわった。死んでしまったのだろうか。藤崎は横目で帝を見た。短剣は突き刺さったままだった。

「帝、早く起きてくれ。早く!」

しかし動かなかった。もしこのまま動かなかったら?それこそもう終わりだ、美山さんとの約束を守ることが出来なくなる。親の敵もとれなくなる。

「ミカドハ、ワタシガツレテイクヨ。キミジャアムリダッタヨウダカラ。キットワタシナラ、ミカドノチカラヲヒキダスコトガデキルヨ」

骨の指が帝の首に絡みついた。帝の体はぐったりとしている。骨の頭領は短剣を引き抜いた。すると、帝は瞳を開けた。

「う……ん、うち、一体……!」

骨が絡みついている。慌てて帝は飛び起きて、藤崎の後ろに隠れた。骨の頭領はこうべを傾げている。

「オヤ、メガサメチャッタンダネ。タンケンヲヌクノハシッパイダッタネ。マァイイヤ、ソレナラソレデ、チカラヅクデモツレテイクカラ」

窓から、扉から、あらゆるところから、骨達が侵入してきた。みんな同じカオをしている。かえってそれが恐かった。

「サァミンナ、ミカドヲツレテカエロウ。コイツラヲコロシチャオウ!」

──カタカタカタ

「茂、戦えるか?帝、君もだ」
「僕はなんとか」
「うちはもう大丈夫やけど、どうやって戦うねん」

そうだった。藤崎は小さく毒づいた。力を引き出しても、力の使い方まで時間が回らなかった。どうすれば、一体どうすれば。藤崎は必死に考えた。




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