幻想序曲

たける

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第四章

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「どうしたのですか、神父様」

京助がその整った顔で神父を見た。神父は片眼鏡をポケットに入れ、土間から靴を脱いで京助の横に座った。

「今は神父だなんて仰らないで下さい」
「あ、うん。どうしたんですか、のぞみさん」

唐佐和からさわ望は、愛しそうに京助を見つめた。

「京助様、村の者が京助様のお力を怪しんでいます」
「気をつけているつもりなんですが、無理でしたか」

俯いた。ふっさりとした栗色の髪が表情を隠す。

「もうこの村には力を引き出す者もいない・・・・・・・・・・・ようですし、早々に出た方がいいと思います。私もついて参りましょう」

首を振った。かすかに震えている。

「悪者になるのはワタシだけで充分です。望さんまでなる事はありません」そこで一度言葉を切った。
「望さん、貴方には感謝しているのです。ワタシの能力をいち早く見つけてくれた。貴方以外に見つけられていたら、もしもそれが悪い考えを持つ者だったなら、そう考えると尚更なのです」

ワタシの能力……唐佐和は、教会に初めてやってきた京助のことを思い出していた。その時はまだ望は15、6で、父が教会のやりくりや信仰などを行っていた。京助は5、6歳と言うところだったが、うかつにも唐佐和は、そんな少年に心を奪われてしまった。
ただその美しさに心を奪われたのではない。何かを感じたのだと思う。そして美山夫妻の告白で、それがハッキリした。

この子は少しおかしいのです。死んだと思っていた猫に触れるだけで、その猫がピンピンして京助と遊んだり、怪我もすぐ治したり。特におかしいのは光るモノです。

そう言っていた。噂には聞いていた。この世のどこかに、神にも等しい能力・・・・・・・・を待った者が現れる……その者が今、目の前にいるのだ。その時の唐佐和の感動は、凄まじいものであった。

「いえ、私こそ、貴力のような方に選ばれるなんて。貴方とならどこまでも行きましょう。その能力の意味を知るまで」

京助を抱きしめた。この小さな体に、人の考えようのない能力が漲っている。自分の中にも、その何分の1かの力がある。それを呼び覚ましてくれたのだ。愛しい。守りたい。
その時、教会からパイプオルガンの音色が流れた。レクイエム。ハッとして2人は顔を上げた。そして
家の外に飛び出ると、骸骨がいた。みんな骸骨だった。京助は愕然とし、発狂した。力が溢れ出した。骸骨が次々に灰になった。骸骨だけではない、生きている物全てが灰になった。唐佐和できえも。


「京……すけさま……」

止まらなかった。全てが灰に変わってから、京助は倒れた。全てを失った。たった1人の理解者、愛しい者きえも。
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