幻想序曲

たける

文字の大きさ
上 下
16 / 26
第四章

しおりを挟む
骨の集団と選ばれし者の戦いは、大昔から続いていた。しかしそんな選ばれし者も、初めは1人だった。選ばれし者がたった1人の時に、骨の集団も生まれたのだ。
その者は、奇妙な力を使う。村でも怪しまれていた。
美山京助きょうすけ は、普通の百姓の家に生まれた長男だった。京助は3人兄妹で、決して裕福とは言えないが、それでも幸せに暮らしていた。
だが京助が20歳の誕生日を迎えた日、村は朝から騒々しかった。物々しい雰囲気に包まれ、人々は何かに怯えているようだった。
それが昼にもなると、いよいよ人々は仕事など放り出し、村で1番大きな教会に集まった。
礼拝堂に人々は入り、口々に何かを言い合っている。その礼拝堂には、京助の家族以外が集まっていた。
やがて神父が姿を現した。肌の白い、ひょろっとした男だった。右の目に片眼鏡をかけ、手には分厚い本を持っている。まだ若く──三十路を迎えたばかりだろう──それに、なかなかの美男子だった。
神父が姿を現すと、人々は吐息と共にそれぞれの思いを口にした。

「1度に仰られても、わたくしには聞き取れません。誰か代表の方が仰って下さい」

男にしては高音な、流れるような声だった。その声に弾かれるようにして、村長の孤土灘ことなだが立ち上がった。昨年組父が亡くなり、村長の座を息子である幹夫みきおが継いだのである。まだ若くて落ち着きがない。回りをキョロキョロと気にしている様子である。

「神父さま、おいらたちはホトホト恐いのでス。あの美山のとこの京助が恐いんでス。何や奇妙なちから・・・・・・って言うんです力?魂みたいにピカピカ光るモンで遊んでるんでス。夜なんか恐くて恐くて。それに村のモンの中じゃア、京助がハカから骨を掘ってるって言うんでス。どうにかして下さいヨ。京助はヒトなんかじゃナイでス、もののけでスヨ」

一通り言い終わると、幹夫はストンと座り込んだ。すると人々は、そうだそうだと言い出した。

「静かになさって下さい。いいですか?みなさんが私に言いにいらしたのは、京助君の事なのですね、分かりました」

神父はそう言って人々を残し、礼拝堂を出て墓地の脇を通り、林に近いところにある美山の家にやってきた。美山夫妻はいつもと変わらず畑を耕している。

「こんにちは、美山さん。京助君は家の中ですか?」
「まぁ神父さま、よくいらっしゃいました。ええ、ええ、京助は家の中でございます。しかし、何の御用で?」
「お気になさらず」

神父は家の中に入っていった。入ってすぐ、京助の弟と妹の圭太けいた万里まりが家から出てきた。

「あらどうしたの?」
「しんぷさまが、おにいちゃんとふたりでおはなしって」

万里が少しつまらなさそうに言った。圭太は冬樹ふゆきの方に走り寄り、一緒になって耕し始めた。
一体何の話があるのか、かな子は怪しんだが、万里が遊ぼうと言ったので、考えるのを止めた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

赤ずきんちゃんと狼獣人の甘々な初夜

真木
ファンタジー
純真な赤ずきんちゃんが狼獣人にみつかって、ぱくっと食べられちゃう、そんな甘々な初夜の物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~

おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。 どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。 そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。 その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。 その結果、様々な女性に迫られることになる。 元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。 「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」 今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~

真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。

淫らな蜜に狂わされ

歌龍吟伶
恋愛
普段と変わらない日々は思わぬ形で終わりを迎える…突然の出会い、そして体も心も開かれた少女の人生録。 全体的に性的表現・性行為あり。 他所で知人限定公開していましたが、こちらに移しました。 全3話完結済みです。

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

処理中です...