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第三章
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「ミカド、ドウシテタスケテクレナカッタノ?クルシクテクルシクテ。ヨンダンダヨ、ミカドノコト」
「知らん!うちは知らん。兄貴を返して、お願いやから」
「ワタシガヒジリジャナイカ。ココニイルヨ」
円陣が薄れてきた。澤木の顔が苦しそうだ。
「拓巳、もう駄目だよ。こいつの力が凄くて、僕1人じゃとてもじゃないけど、もう10分も持たない」
軽く舌打ちをし、藤崎は帝の腕を掴んだ。
「もう時間がないんだ。この際仕方がないが、痛いけど我慢しろ。君なら耐えられる筈だ、選ばれた者の君なら」
懐から短剣──あの時、骸骨を灰にしたやつだ──を取り出した。相変わらず黒く光っている。
「もう嫌や。もうたくさんや!何でうちはこんな目にあわなあかんの」
「たかが肉親を失ったからって、クヨクヨするんじゃない。いいかい、君も含めてオレたちの守らねばならないものは、大きいんだ。しっかりしてくれ!」
鞘から剣を引き抜いた。鈍い光を放っている。目が眩みそうだった。
「たかがやって?あんたには血も涙もないんか。肉親を殺されてたかがやなんて、あんたは鬼や!」
何も知らないくせに。藤崎はカッとなった。だが今は言い争っている場合じゃない。時間がないのだ。だからこうして強行手段を決行する。力を1度に引き出すのだ。痛むが仕方がないだろう。
「拓巳、駄目だよ。拓巳でもあんなに苦しんだんだから、彼女に耐えられるはずがないよ!」
「黙ってろ!仕方がないんだ。大丈夫、帝なら大丈夫だ!」
そう言って短剣を振り下ろし、帝の胸に突き刺した。鈍い音がした。
「な……んで……?」
帝は倒れ込んだ。血は1滴も出なかった。ただ激痛だけが溢れ出た。痛い、ちぎれそうだ。
「あああ……!」
「帝さん!」
「茂、力を抜くな。オレも手伝うから、何としても30分はこの円陣を持たせるんだ」
藤崎も苦しそうに顔を歪めた。それを見た澤木は震えるように頷き、強く瞳を閉じた。
「知らん!うちは知らん。兄貴を返して、お願いやから」
「ワタシガヒジリジャナイカ。ココニイルヨ」
円陣が薄れてきた。澤木の顔が苦しそうだ。
「拓巳、もう駄目だよ。こいつの力が凄くて、僕1人じゃとてもじゃないけど、もう10分も持たない」
軽く舌打ちをし、藤崎は帝の腕を掴んだ。
「もう時間がないんだ。この際仕方がないが、痛いけど我慢しろ。君なら耐えられる筈だ、選ばれた者の君なら」
懐から短剣──あの時、骸骨を灰にしたやつだ──を取り出した。相変わらず黒く光っている。
「もう嫌や。もうたくさんや!何でうちはこんな目にあわなあかんの」
「たかが肉親を失ったからって、クヨクヨするんじゃない。いいかい、君も含めてオレたちの守らねばならないものは、大きいんだ。しっかりしてくれ!」
鞘から剣を引き抜いた。鈍い光を放っている。目が眩みそうだった。
「たかがやって?あんたには血も涙もないんか。肉親を殺されてたかがやなんて、あんたは鬼や!」
何も知らないくせに。藤崎はカッとなった。だが今は言い争っている場合じゃない。時間がないのだ。だからこうして強行手段を決行する。力を1度に引き出すのだ。痛むが仕方がないだろう。
「拓巳、駄目だよ。拓巳でもあんなに苦しんだんだから、彼女に耐えられるはずがないよ!」
「黙ってろ!仕方がないんだ。大丈夫、帝なら大丈夫だ!」
そう言って短剣を振り下ろし、帝の胸に突き刺した。鈍い音がした。
「な……んで……?」
帝は倒れ込んだ。血は1滴も出なかった。ただ激痛だけが溢れ出た。痛い、ちぎれそうだ。
「あああ……!」
「帝さん!」
「茂、力を抜くな。オレも手伝うから、何としても30分はこの円陣を持たせるんだ」
藤崎も苦しそうに顔を歪めた。それを見た澤木は震えるように頷き、強く瞳を閉じた。
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