12 / 26
第三章
2.
しおりを挟む
「!」
澤木は立ち上がった。顔は青ざめている。
──何だ、骨が家に入ってくるじゃないか。なのに、どうして、どうして骨なのに、僕の結界に入っても灰にならないんだ?
澤木は客室の扉を見つめていた。
「どないしたん?」
帝は不思護そうに澤木を見ていたが、急に扉が開けられたので、そちらに視線を移した。
「帝、それに茂。聖だ」
そう言って通された聖は、少しおどおどしていた。
「兄貴?」
帝はソファから飛び上がった。
──間にあわんかったって言うとったんちゃうん?でも、実際に兄貴は目の前におるし。一体どないなったんや?
「帝、やっぱりここにいたんだね。家に帰ってもいなかったから、心配して」
「おい拓巳、この聖って人、骨じゃないか。なのにどうして?どうして結界にも入れたのさ」
「やっぱり骨か。しかしな、聖なんだよ。アイツらに骨にされたんだ。オレもどうしていいか分からなくて、一か八かで家に入れたんだが……灰にはならなかった」
「兄貴、大丈夫なん?」
「何がだい?」
細い日を更に細めて、聖が言った。
「大丈夫やったらいいんやけど」
「帝、帰ろう。もう時刻も時刻だし」
「そ、そやな」
帝は2人を見た。2人は何かをひそひそと小声で話し合っている。何を言うてんねんやろう?じっと見つめた。すると藤崎が視線に気がついたのか、ふと顔を上げた。
「帰ってはいけないからな、帝」
「何でやのん。折角兄貴が迎えに来てくれたのに」
横目で聖を見た。聖はキョロキョロとしている。
「きっきも言っただろ、オレは間に合わなかったんだ。そこにいるのは聖であって聖じゃないんだ。見てろ」
そう言って藤崎は、澤木に目で合図を送った。それにおずおずと頷き、なにやら円陣を宙で描いた。
「何をするつもりや」
「あ……!」
聖がしゃがみ込んだ。その表情は苦しそうに歪んでいる。しゃがんだ足元に、青白い円陣が現れた。
「いいか帝、辛いだろうけどこれが真実なんだ。しっかり受け止めろ」
「真実?」
「み……かど……おお」
ドロリと聖の肉が落ちた。床にベチャベチャと落ちていく。帝は後ずさった。次々に落ちる。骨が見え始めた。
「あぁ……兄貴!」
両手で顔を覆って叫んだ。叫びの合間に、聖であった骨の音が聞こえる。
──カタカタカタ
「顔を隠すんじゃない。しっかり見るんだ帝。君の兄はもう死んでいる。ここにいるのは、もう昔の聖じゃないんだ!」
「信じへん!そんなん嘘や、兄貴がもうおらへんなんて!」
こんな事で大丈夫なのだろうか。一筋の不安が藤崎の心をかすめていった。こんな事、なんて言っては失礼なのだろうが、守らねばならないものはもっと大きいのだ。肉親が死んだからと言って、このようにしていられては守れない。もっと心身共に強くなってもらいたかった。しかし、無理かも知れない。まだ若いのだ、耐えられないのかも知れない。
いざとなったら、全く駄目なのかも知れない。1番重要なのに。全ては帝の力で左右してしまうかも知れないのだ。藤崎は誰に向けるでもなく、憎しみがこみ上げてくるのを感じた。自分に千里眼のようなものではなくて、帝のような破壊の力があったなら……
藤崎は唇を噛んだ。
やがて聖は骨になった。
澤木は立ち上がった。顔は青ざめている。
──何だ、骨が家に入ってくるじゃないか。なのに、どうして、どうして骨なのに、僕の結界に入っても灰にならないんだ?
澤木は客室の扉を見つめていた。
「どないしたん?」
帝は不思護そうに澤木を見ていたが、急に扉が開けられたので、そちらに視線を移した。
「帝、それに茂。聖だ」
そう言って通された聖は、少しおどおどしていた。
「兄貴?」
帝はソファから飛び上がった。
──間にあわんかったって言うとったんちゃうん?でも、実際に兄貴は目の前におるし。一体どないなったんや?
「帝、やっぱりここにいたんだね。家に帰ってもいなかったから、心配して」
「おい拓巳、この聖って人、骨じゃないか。なのにどうして?どうして結界にも入れたのさ」
「やっぱり骨か。しかしな、聖なんだよ。アイツらに骨にされたんだ。オレもどうしていいか分からなくて、一か八かで家に入れたんだが……灰にはならなかった」
「兄貴、大丈夫なん?」
「何がだい?」
細い日を更に細めて、聖が言った。
「大丈夫やったらいいんやけど」
「帝、帰ろう。もう時刻も時刻だし」
「そ、そやな」
帝は2人を見た。2人は何かをひそひそと小声で話し合っている。何を言うてんねんやろう?じっと見つめた。すると藤崎が視線に気がついたのか、ふと顔を上げた。
「帰ってはいけないからな、帝」
「何でやのん。折角兄貴が迎えに来てくれたのに」
横目で聖を見た。聖はキョロキョロとしている。
「きっきも言っただろ、オレは間に合わなかったんだ。そこにいるのは聖であって聖じゃないんだ。見てろ」
そう言って藤崎は、澤木に目で合図を送った。それにおずおずと頷き、なにやら円陣を宙で描いた。
「何をするつもりや」
「あ……!」
聖がしゃがみ込んだ。その表情は苦しそうに歪んでいる。しゃがんだ足元に、青白い円陣が現れた。
「いいか帝、辛いだろうけどこれが真実なんだ。しっかり受け止めろ」
「真実?」
「み……かど……おお」
ドロリと聖の肉が落ちた。床にベチャベチャと落ちていく。帝は後ずさった。次々に落ちる。骨が見え始めた。
「あぁ……兄貴!」
両手で顔を覆って叫んだ。叫びの合間に、聖であった骨の音が聞こえる。
──カタカタカタ
「顔を隠すんじゃない。しっかり見るんだ帝。君の兄はもう死んでいる。ここにいるのは、もう昔の聖じゃないんだ!」
「信じへん!そんなん嘘や、兄貴がもうおらへんなんて!」
こんな事で大丈夫なのだろうか。一筋の不安が藤崎の心をかすめていった。こんな事、なんて言っては失礼なのだろうが、守らねばならないものはもっと大きいのだ。肉親が死んだからと言って、このようにしていられては守れない。もっと心身共に強くなってもらいたかった。しかし、無理かも知れない。まだ若いのだ、耐えられないのかも知れない。
いざとなったら、全く駄目なのかも知れない。1番重要なのに。全ては帝の力で左右してしまうかも知れないのだ。藤崎は誰に向けるでもなく、憎しみがこみ上げてくるのを感じた。自分に千里眼のようなものではなくて、帝のような破壊の力があったなら……
藤崎は唇を噛んだ。
やがて聖は骨になった。
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。
元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
セクスカリバーをヌキました!
桂
ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。
国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。
ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
異世界召喚に条件を付けたのに、女神様に呼ばれた
りゅう
ファンタジー
異世界召喚。サラリーマンだって、そんな空想をする。
いや、さすがに大人なので空想する内容も大人だ。少年の心が残っていても、現実社会でもまれた人間はまた別の空想をするのだ。
その日の神岡龍二も、日々の生活から離れ異世界を想像して遊んでいるだけのハズだった。そこには何の問題もないハズだった。だが、そんなお気楽な日々は、この日が最後となってしまった。
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる