幻想序曲

たける

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第三章

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電車の中にはもう、誰もいなかった。ただ薄明るい電気がついているだけだ。藤崎は電車の側に座り込んでいた。もう骸骨はいなかった。幾体か逃げたが、仕方がない。それにもう帝は、澤木の家についている頃だろうし。大きく息を吐いた。そろそろ自分も行かないと、藤崎は静かに立ち上がった。折角のスーツも灰だらけになっている、細かく払い落とした。
そう言えば今まで忘れていたが、聖はどうなったろうか。オレが駆けつけた時には、あいつらの罠にはまっていた。仕掛けられていた結界に踏み込んでいた。藤崎には結界を破る力は殆どなく、途方もなく悔しかった。きっと今頃聖の奴は、あいつらの仲間になって骨に──骸骨に──なっているだろう。だが、さっきの集団の中にはいなかった。一体どうしたんだ。藤崎の力を持ってしても、聖は見えない。
何か引っかかるものがあるものの、藤崎は帝達の元へ向かった。一刻も早く帝に、自分達のような能力を使いこなせるようになってもらわなければならない。もうじき、帝をカバーする事が出来なくなるだろう。帝には辛い事だが、選ばれた者なのだ。守らねばならないものを・・・・・・・・・・・守らねばならない・・・・・・・・
アイツらは人々の夢を喰らうのだ。悪夢を見せて夢を喰らう。夢を失った者は悪夢しか見る事が出来なくなる。そうして眠りたくなくなり、不眠症に陥り、凶暴化する。世界は凶暴化した人々の手によって、破壊されていくだろう。
そうならない為にも、夢を喰らう骸骨を止めねばならない。
藤崎は身震いした。もうこれ以上、好き勝手な事はさせてはならなかった。聖を向こうに取られてしまった以上、苦戦を強いられる事になるだろう。
聖の持つ飛び抜けた能力は再生、回復。味方にいると、これ程心強いものはないが、敵に回ると厄介なのである。かく言う藤崎の飛び抜けた能力は千里眼、感知である。遠くにあるものでも、目的のものであれば見えるのである。澤木は結界。結界を張るのも破るのも、澤木の右に出る者はいない。帝は破壊。聖なる光の力が最も強く、幅広い攻撃範囲を持っていた。


──帝を取られてはダメだ。


藤崎は走り出した。




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