悪魔探偵

５．

３

家宅捜査で、酒井が認めた新たな魔方陣が彼のベッドの下から見つかり、また悪魔喚起を記した本は、同部屋の机の鍵のかかった引き出しから発見された。

「まぁ、違うっちゃあ違うわなぁ……」

２枚のポラロイド写真を見比べながら、加藤は呻いた。山下は食い入るようにそれらを見比べ、相違点をいくつか指摘する。

「本当に悪魔は２体出てきたんですかね？」

前傾させていた姿勢を正しながら、山下が呟いた。それは加藤もずっと考えている事だ。
専門家は遺体の下にあった魔方陣から、悪魔が出てきていると言っていた。だが、酒井は自分の魔方陣からこそ、悪魔を呼び出したと言っている。双方の意見に相違はあるが、ここは専門家の意見が正しいのだろう。酒井は勘違いしているのだ。あの悪魔を自分が呼び出したと。
そこで仮説を立ててみる事にした。

「犯人が悪魔を呼び出したはいいが、酒井護が来た為に契約出来なかった。それを酒井が新たな魔方陣を描いた事により、悪魔が自分の魔方陣から出たのだと勘違いし、契約を結んだ……」
「それなら、犯人は酒井ではありませんね」
「あぁ。だがこれならどうだ？酒井が犯人で、その罪を他の誰かに擦り付ける為に、敢えて違う魔方陣を描いた……」
「それなら、犯人は酒井だ」

山下は同意した。仮説のどちらにせよ、証拠が足りない。現場からは、怪しい人物の指紋等は発見されていないのだから。

「酒井はもう、犯人を知ってるのかも知れないな。だが酒井が犯人であったとしたら、また新たな犯行に及ぶかも知れない……少し、泳がせてみるか」