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刑事2人は、悪魔研究者を前に軽蔑の眼差しをひた隠しにしていた。
研究者の高木聖夜は若く、しかもハンサムだ。自分の半分程しか生きてきていない若者に、本当に分かるのだろうか?加藤啓介は疑問に思っていた。
「これは間違いなく、悪魔喚起の魔方陣ですね」
銀縁のメガネが知的さと冷淡さを醸し出している。高木は加藤が資料として差し出した写真を手に取りながら、早くもそう結論付けた。
「それは確かですか?」
山下が念を押す。高木は写真をデスクの上に戻すと──持参している鞄の中から──分厚い書物を取り出した。
「信じられないのも無理はありませんが……」
そう言ってページを捲り、目的のページにくると広げたままデスクに置いた。それを2人して覗き込むと──加藤達に見えやすいよう──本を回してくれた。
「その写真の魔方陣は、ここに記されているものと同じです」
加藤は写真と本を交互に見比べながら、相違点を指摘してやろうとした。だがそれは、判で押したように全く同じだった。
「ははぁ……全く同じですね」
そう言った山下は、納得したように頷いた。酒井護が悪魔喚起の魔方陣だと言った時、半ば加藤は信じていなかった。だが専門家もそう言うのだから、間違いはないのだろう。
「で、高木先生。この本は、誰でも簡単に手に入るようなものなんですか?」
そうは思えなかったが、入手経路の参考までに尋ねてみる。既に鑑識は、この手の本が簡単にネットで購入出来たり、サイトにアップされている事を突き止めていた。
「そうですね。誰でも簡単に手に入れる事が出来るでしょう。最近はインターネットが主流になっていますから、こう言う類いのものは簡単に検索に引っ掛かるでしょうしね」
「全く同じものが、サイトにアップされている可能性は高いとおっしゃる?」
年下相手に敬語を使うのは、酷く屈辱的だ。加藤は粗野な言葉遣いが出ないよう、言葉を選びながら尋ねた。
「見つかるでしょうね」
そう言うと、高木はメガネを人差し指で軽く持ち上げた。
「では先生、犯人がこの魔方陣を使って悪魔を呼び出したのは確実なんですね?」
「さぁ……殺人犯と悪魔を喚起した者が同一かは、私には分かりませんが、この魔方陣から悪魔がこの世に喚起されたのは確実でしょう」
無表情に高木聖夜は言った。山下はなるほど、と呟きながらメモを取っている。
「その悪魔は、我々には見えますか?」
多分見えないだろう。だが供述書を作成するにあたって、このような当たり前に思える質問でもしておかなければならない。もしもの場合に備えて。
「貴方達には見えないでしょうね」
「貴方には見える?」
即座に問い質すと、高木は微笑しながらメガネを外した。黒目の大きい目は、随分前に見た映画に登場する悪魔のようだと加藤は思った。
「見えますよ。もし良ければ、私を現場に連れて行ってもらえませんか?」
研究者の高木聖夜は若く、しかもハンサムだ。自分の半分程しか生きてきていない若者に、本当に分かるのだろうか?加藤啓介は疑問に思っていた。
「これは間違いなく、悪魔喚起の魔方陣ですね」
銀縁のメガネが知的さと冷淡さを醸し出している。高木は加藤が資料として差し出した写真を手に取りながら、早くもそう結論付けた。
「それは確かですか?」
山下が念を押す。高木は写真をデスクの上に戻すと──持参している鞄の中から──分厚い書物を取り出した。
「信じられないのも無理はありませんが……」
そう言ってページを捲り、目的のページにくると広げたままデスクに置いた。それを2人して覗き込むと──加藤達に見えやすいよう──本を回してくれた。
「その写真の魔方陣は、ここに記されているものと同じです」
加藤は写真と本を交互に見比べながら、相違点を指摘してやろうとした。だがそれは、判で押したように全く同じだった。
「ははぁ……全く同じですね」
そう言った山下は、納得したように頷いた。酒井護が悪魔喚起の魔方陣だと言った時、半ば加藤は信じていなかった。だが専門家もそう言うのだから、間違いはないのだろう。
「で、高木先生。この本は、誰でも簡単に手に入るようなものなんですか?」
そうは思えなかったが、入手経路の参考までに尋ねてみる。既に鑑識は、この手の本が簡単にネットで購入出来たり、サイトにアップされている事を突き止めていた。
「そうですね。誰でも簡単に手に入れる事が出来るでしょう。最近はインターネットが主流になっていますから、こう言う類いのものは簡単に検索に引っ掛かるでしょうしね」
「全く同じものが、サイトにアップされている可能性は高いとおっしゃる?」
年下相手に敬語を使うのは、酷く屈辱的だ。加藤は粗野な言葉遣いが出ないよう、言葉を選びながら尋ねた。
「見つかるでしょうね」
そう言うと、高木はメガネを人差し指で軽く持ち上げた。
「では先生、犯人がこの魔方陣を使って悪魔を呼び出したのは確実なんですね?」
「さぁ……殺人犯と悪魔を喚起した者が同一かは、私には分かりませんが、この魔方陣から悪魔がこの世に喚起されたのは確実でしょう」
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「貴方達には見えないでしょうね」
「貴方には見える?」
即座に問い質すと、高木は微笑しながらメガネを外した。黒目の大きい目は、随分前に見た映画に登場する悪魔のようだと加藤は思った。
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