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2階に上がり、警備の立つ部屋へ向かう途中、あちこちから蝋燭やら香を炊いたような匂いがした。警備に挨拶をしてから部屋に入ると、酒井護は暖炉の前に跪き、祈りを捧げているところだった。
「君が酒井護君……か?」
名前は和風なのに、そこにいる青年は名前にそぐわない容貌をしていた。金色の髪に、振り返った瞳は青い。
「はい、そうです」
立ち上がった青年に、2人は警察手帳を見せながら名前を名乗った。
「君が遺体を発見した状況を聞かせて欲しい」
加藤がそう言うと、酒井護は怪訝な顔をした。
「さっきもお話ししましたが」
「もう1度、俺達に聞かせてくれないか?」
分かりました、と呟くと、酒井護はベッドに腰掛けた。
昨夜、酒井護は早目にベッドへ入った。司祭でもあり青年の父親代わりをしていた野中は、酒井が2階に上がる時は聖歌隊と談笑していた。それからの事は分からないが、特に物音や悲鳴を聞かなかったと言う。
そして今朝、朝の祈りの為に階下に向かうと、司祭は祭壇前で死んでいたと言う事らしい。
「君が発見した時から、何も触っていない?」
山下がメモとペンを握りながら尋ねた。加藤はその間、酒井青年を監察していた。
「はい。僕が父を発見した時には、胸に十字架が突き刺さっていました」
「その十字架は、元々どこにあったもの?」
「祭壇の上に飾っていました」
至って冷静だ。巡査が言っていたような混乱ぶりは、少しも伺えない。
「司祭の下に、何かの模様が描かれてるが、あれも発見した時にはあったのか?」
そう加藤が尋ねると、酒井護は混乱したように目を見開いた。
「ありました。あれは、悪魔喚起する魔方陣です」
「悪魔喚起?それは悪魔を呼び出すって事か?」
模様を思い出しながら加藤が更に質問すると、鑑識の1人がポラロイド写真を持ってきた。そこには魔方陣が映っていて、加藤はそれを酒井に見せた。すると酒井は、悪魔だと再度呟いた。
「それは確かですか?」
顔を上げた山下が、ペンを回しながら尋ねた。その様子からして、山下が青年の言っている事を信じていないな、と加藤は感じていた。
「はい。以前、これに似たものを見ました」
「どこで?」
そう尋ねると、酒井はよく覚えていません、とボソボソした声で言った。
何か隠している。そう感じた加藤だったが、それを追究せず、思い出したら教えてくれとだけ言い、別の質問をした。
「その司祭は、誰かに恨まれたりしてなかったか?もめてたとか、借金してたりとか」
「いいえ。父は善良な方でしたし、声を荒げる事もありませんでした」
酒井青年の顔は蒼白かったが、態度はもう平静に戻っていた。
「そうか。じゃあ、後で供述書を書きに署に来てくれ」
──まさか悪魔が殺した、なんて事はないよな……?
そう言って、加藤は山下を連れて部屋を出た。
「君が酒井護君……か?」
名前は和風なのに、そこにいる青年は名前にそぐわない容貌をしていた。金色の髪に、振り返った瞳は青い。
「はい、そうです」
立ち上がった青年に、2人は警察手帳を見せながら名前を名乗った。
「君が遺体を発見した状況を聞かせて欲しい」
加藤がそう言うと、酒井護は怪訝な顔をした。
「さっきもお話ししましたが」
「もう1度、俺達に聞かせてくれないか?」
分かりました、と呟くと、酒井護はベッドに腰掛けた。
昨夜、酒井護は早目にベッドへ入った。司祭でもあり青年の父親代わりをしていた野中は、酒井が2階に上がる時は聖歌隊と談笑していた。それからの事は分からないが、特に物音や悲鳴を聞かなかったと言う。
そして今朝、朝の祈りの為に階下に向かうと、司祭は祭壇前で死んでいたと言う事らしい。
「君が発見した時から、何も触っていない?」
山下がメモとペンを握りながら尋ねた。加藤はその間、酒井青年を監察していた。
「はい。僕が父を発見した時には、胸に十字架が突き刺さっていました」
「その十字架は、元々どこにあったもの?」
「祭壇の上に飾っていました」
至って冷静だ。巡査が言っていたような混乱ぶりは、少しも伺えない。
「司祭の下に、何かの模様が描かれてるが、あれも発見した時にはあったのか?」
そう加藤が尋ねると、酒井護は混乱したように目を見開いた。
「ありました。あれは、悪魔喚起する魔方陣です」
「悪魔喚起?それは悪魔を呼び出すって事か?」
模様を思い出しながら加藤が更に質問すると、鑑識の1人がポラロイド写真を持ってきた。そこには魔方陣が映っていて、加藤はそれを酒井に見せた。すると酒井は、悪魔だと再度呟いた。
「それは確かですか?」
顔を上げた山下が、ペンを回しながら尋ねた。その様子からして、山下が青年の言っている事を信じていないな、と加藤は感じていた。
「はい。以前、これに似たものを見ました」
「どこで?」
そう尋ねると、酒井はよく覚えていません、とボソボソした声で言った。
何か隠している。そう感じた加藤だったが、それを追究せず、思い出したら教えてくれとだけ言い、別の質問をした。
「その司祭は、誰かに恨まれたりしてなかったか?もめてたとか、借金してたりとか」
「いいえ。父は善良な方でしたし、声を荒げる事もありませんでした」
酒井青年の顔は蒼白かったが、態度はもう平静に戻っていた。
「そうか。じゃあ、後で供述書を書きに署に来てくれ」
──まさか悪魔が殺した、なんて事はないよな……?
そう言って、加藤は山下を連れて部屋を出た。
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