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朝早く、通報があった。
「父が殺された!」
酷く気が動転しているようだ、と連絡を受けた仲間が言っていたが、とにかく現場に向かう事にした。
パトカーに乗り向かった加藤と山下は、殺人現場となった教会前に立ち、建物を同時に見上げた。
教会は都心から少し離れた場所の、住宅街に堂々と異彩を放っている。それにツリーも一役かっているようだった。
「何だかやりにくそうだな」
山下が言い、加藤も同意するように頷く。現場には既に何人もの警備と鑑識が入っていた。それらを横目に見ながら黄色いテープを潜るとまず、扉のすぐ側に血だまりがあり、引きずられた後が奥へ続いている。視線だけその後を追うと、それは祭壇前に転がっている遺体にぶつかった。
「ここで襲われたんですね」
「そうみたいだな……」
血だまりを踏まないよう慎重に中へ入り、教会の右側から回り込んで遺体の側へ向かった。
引きずった後は、教会内の真ん中の通路についている。その通路の左右には、均等にベンチが5つずつ並べられていた。
鑑識の1人が遺体の写真をあらゆる角度から撮り、他の者は大きな綿毛のついた綿棒みたいなもので、教会内の指紋を採取している。
「加藤刑事、山下刑事、ご苦労様です」
敬礼したのは、この教会がある区画担当の巡査だった。
「この仏は?」
両手を合わせ、知っている文句を呟いてから遺体の側に屈む。山下は手帳を取り出し、巡査の言葉を聞き漏らさないよう準備した。
「こちらはこの教会の司祭で、野中清治です。第一発見者は義理の息子の酒井護で、今は自室に警備をつけて休んでもらっています」
メモを取る音を聞きながら、加藤は遺体の監察をしていた。
遺体の下には、何かの模様が描かれている。加藤の拙い知識を持って説明するとしたら、それは魔方陣のようだ。何かを呼び出したのだろうか?それとも、遺体を清める為のものなのか、専門家に聞いてみなければ分からない。
とにかく、凶器は間違いなく、遺体の胸に突き刺さったままの十字架だろう。その他に外傷は見当たらないが、家族の同意を取った後、解剖に回されるだろう。
ふと、加藤は遺体の口元に目を留めた。吐血した痕跡が拭われている。それは綺麗に、と言う訳ではなく、何かにぶつかって擦り取れたような跡だ。
「おい、これは?何かにぶつかったみたいだが……」
「それに関しては、まだ鑑識から何も言ってきていません」
と言う事は、遺体の身元しかはっきりとした事が分かっていない状態だと言う事だ。
「じゃあ、第一発見者の……」
「酒井護です」
すかさず、メモを見ていた山下が答える。
「そう。その子から話しは聞けそうか?」
加藤は立ち上がると、奥に覗く階段を見遣った。
「はい、大丈夫だと思います。我々が駆けつけた時は、大分混乱していた様子ですが……」
「父が殺された!」
酷く気が動転しているようだ、と連絡を受けた仲間が言っていたが、とにかく現場に向かう事にした。
パトカーに乗り向かった加藤と山下は、殺人現場となった教会前に立ち、建物を同時に見上げた。
教会は都心から少し離れた場所の、住宅街に堂々と異彩を放っている。それにツリーも一役かっているようだった。
「何だかやりにくそうだな」
山下が言い、加藤も同意するように頷く。現場には既に何人もの警備と鑑識が入っていた。それらを横目に見ながら黄色いテープを潜るとまず、扉のすぐ側に血だまりがあり、引きずられた後が奥へ続いている。視線だけその後を追うと、それは祭壇前に転がっている遺体にぶつかった。
「ここで襲われたんですね」
「そうみたいだな……」
血だまりを踏まないよう慎重に中へ入り、教会の右側から回り込んで遺体の側へ向かった。
引きずった後は、教会内の真ん中の通路についている。その通路の左右には、均等にベンチが5つずつ並べられていた。
鑑識の1人が遺体の写真をあらゆる角度から撮り、他の者は大きな綿毛のついた綿棒みたいなもので、教会内の指紋を採取している。
「加藤刑事、山下刑事、ご苦労様です」
敬礼したのは、この教会がある区画担当の巡査だった。
「この仏は?」
両手を合わせ、知っている文句を呟いてから遺体の側に屈む。山下は手帳を取り出し、巡査の言葉を聞き漏らさないよう準備した。
「こちらはこの教会の司祭で、野中清治です。第一発見者は義理の息子の酒井護で、今は自室に警備をつけて休んでもらっています」
メモを取る音を聞きながら、加藤は遺体の監察をしていた。
遺体の下には、何かの模様が描かれている。加藤の拙い知識を持って説明するとしたら、それは魔方陣のようだ。何かを呼び出したのだろうか?それとも、遺体を清める為のものなのか、専門家に聞いてみなければ分からない。
とにかく、凶器は間違いなく、遺体の胸に突き刺さったままの十字架だろう。その他に外傷は見当たらないが、家族の同意を取った後、解剖に回されるだろう。
ふと、加藤は遺体の口元に目を留めた。吐血した痕跡が拭われている。それは綺麗に、と言う訳ではなく、何かにぶつかって擦り取れたような跡だ。
「おい、これは?何かにぶつかったみたいだが……」
「それに関しては、まだ鑑識から何も言ってきていません」
と言う事は、遺体の身元しかはっきりとした事が分かっていない状態だと言う事だ。
「じゃあ、第一発見者の……」
「酒井護です」
すかさず、メモを見ていた山下が答える。
「そう。その子から話しは聞けそうか?」
加藤は立ち上がると、奥に覗く階段を見遣った。
「はい、大丈夫だと思います。我々が駆けつけた時は、大分混乱していた様子ですが……」
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