悪魔探偵

たける

文字の大きさ
上 下
1 / 15
プロローグ

プロローグ

しおりを挟む
小さな聖歌隊達にプレゼントを持たせ、その姿が誇らしげに両親の腕に戻るのを見つめた。両親は子供らの勇姿と神々しさを誉めあっている。そして司祭と神に感謝を述べると、家族は扉へ向かった。司祭が教会の外まで見送ると、明日の朝には外されるであろう電飾のネオンが、最後の華やぎを放っていた。教会の外にもイエス・キリストの誕生を祝うクリスマスツリーがあり、聖なる夜を一層引き立てている。

「皆さん、お気をつけて……」

手を振ると、一陣の風が吹き付けた。司祭のキャソックがバタバタとはためく。
家族が見えなくなるまで見つめていたが、やがて司祭は寒さに震えながら中へ戻った。


──リヤサでも羽織れば良かった。


窓の外では雪が舞い始め、夜は教会すらその闇に辺りを包んでいる。遠くでは救急車のサイレンが鳴り響き、それに犬達が一斉に遠吠えを始めた。その理由は様々あるが、司祭は彼等の先祖が上げる声に似ているからだろうかと考えていた。
司祭は教会内の戸締まりの為に歩いた。ガランとしているが、昼間も今と大差はない。数少ない信者が時折訪れたり、結婚式がある時だけ賑わう。かと言って、式を挙げる両人、及びそのどちらかがそうだと言う訳でもない。ただ皆と違う式を挙げたいだとか、教会の雰囲気や装飾が好きだと言う理由が大半を占める。
日本は海外ほど、キリスト教が普及していないのがよく分かると言うものだ。その大多数は、カトリックとプロテスタントの違いも分からないだろう。
それでも、教会が賑わう事は嬉しい。例え宗教に興味がなくとも、別の文化に触れると言うのは良い事だと思うからだ。
今日もいつにない賑わいを見せ、近所の子供達にプレゼントを贈った。
全ての窓に鍵をかけ、司祭は最後に扉の鍵を閉めた。そして祭壇へ歩み寄ると、今日と言う日を平穏に過ごせた事を、神に祈り始めた。
目を閉じていたが、かすかに頬を風が掠めたのを感じる。瞼を開くと、燭台の炎が小さく揺らめいていた。

「誰かいるのか?」

もしかしたら、2階で寝ているまもるが目を覚ましたのかも知れない。
彼は時々、母親に捨てられた日を夢に見るから。

「護か?眠れないのか?」

辺りを見回すが、あちこちで蝋燭が温かい光を投げ掛ける以外に何もない。彫像に深い陰影が出来、また絵画は光が届かず暗く、妙に胸を騒がせる効果を発揮していた。
再び祭壇に向き直ると、銀の皿の側に立てていた十字架が無くなっていた。司祭は顔を強張らせると、胸の前で何度か十字を切った。


──護はこんな悪戯はしない。まさか泥棒でも入ったのだろうか?


だとしたら、変に気を逆なでない方がいい。気付かぬフリをして息子の部屋に入り、きっちり鍵をかければ、泥棒も盗むだけ盗めば出て行くだろう。
司祭は深呼吸をすると、扉の鍵を開けに行った。そして部屋へ向かおうと振り返った時、薄暗い中に何かを振りかざす影が見えた。

「私には争う気はない。君の顔も見ていないし、欲しいものがあるなら持って行くといい」

その言葉に嘘はなかった。すると相手が口を開いた。

「本当にいいんだな?」

意外に若い男の声が返ってきたが、司祭は首肯して見せた。

「なら、アンタの命を貰おう」
「な……!ぐうぅっ!」

何かが胸を貫いた。それはうっすら十字架に見え、司祭は血を吐きながら膝を折り、男に倒れ込んだ。





「あぁ、神よ!何故父を連れて行かれるのです?主よ、何故師を連れて行かれるのです?全能なる父よ、何故なのです!」

青年は嘆いていた。無惨な姿の男を前に、両手を祈るように組み合わせている。
男は彼の父だった。正確には父ではない。彼が5歳の時から面倒を見てくれていた、父親のような存在だった。この教会の尊敬出来る師でもあった。
その彼が、祭壇上に飾られていた十字架で胸を貫かれ、祭壇前に仰向けになって死んでいる。
その目は恐怖に剥かれ、ずっと上にある天井画の、キリストの昇天に向けられていた。

「何故お答えして下さらないのですか?父は貴方を欺いたのですか?」

青年は膝をつき、男の顔を見つめた。もう何物も映す事のない瞳は、まるでガラス玉のように不気味だ。

「主よ、貴方は何と残酷なのでしょう!汝、隣の敵を愛せと説かれたが、私は貴方を許さない……!」




しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

Love Trap

たける
BL
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 【あらすじ】 【Love Monster】のその後の物語。 ノッドからメモリーチップを受け取ったフィックスだったが、ストレイン博士に呼び出され、ハンクと図書館へ向かうなり事故に遭ってしまう。 何とか一命を取り留めたハンクだったが、フィックスは事故で死んでいた。 ストレインの目的を知ったハンクは、フィックスの代わりにノッドを目覚めさせる事を決意するが…… フィックスシリーズ完結です。 ※BL描写があります。苦手な方はご遠慮下さい。 宇宙大作戦が大好きで、勢いで書きました。模倣作品のようですが、寛容な気持ちでご覧いただけたら幸いです。

アルバイトで実験台

夏向りん
BL
給料いいバイトあるよ、と教えてもらったバイト先は大人用玩具実験台だった! ローター、オナホ、フェラ、玩具責め、放置、等々の要素有り

Love Monster

たける
BL
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆ 【あらすじ】 自分では死ぬ事が出来ないサイボーグ、ノッドは、20年もの間図書館から外へ出た事はなかった。だがある日、研究者の提案で刑事を護衛としてつける事になり、それが彼の生き方を変える事になる。 ※BL描写があります。苦手な方はご遠慮下さい。 宇宙大作戦が大好きで、勢いで書きました。模倣作品のようですが、寛容な気持ちでご覧いただけたら幸いです。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

寮生活のイジメ【社会人版】

ポコたん
BL
田舎から出てきた真面目な社会人が先輩社員に性的イジメされそのあと仕返しをする創作BL小説 【この小説は性行為・同性愛・SM・イジメ的要素が含まれます。理解のある方のみこの先にお進みください。】 全四話 毎週日曜日の正午に一話ずつ公開

孤独な蝶は仮面を被る

緋影 ナヅキ
BL
   とある街の山の中に建っている、小中高一貫である全寮制男子校、華織学園(かしきのがくえん)─通称:“王道学園”。  全学園生徒の憧れの的である生徒会役員は、全員容姿や頭脳が飛び抜けて良く、運動力や芸術力等の他の能力にも優れていた。また、とても個性豊かであったが、役員仲は比較的良好だった。  さて、そんな生徒会役員のうちの1人である、会計の水無月真琴。  彼は己の本質を隠しながらも、他のメンバーと各々仕事をこなし、極々平穏に、楽しく日々を過ごしていた。  あの日、例の不思議な転入生が来るまでは… ーーーーーーーーー  作者は執筆初心者なので、おかしくなったりするかもしれませんが、温かく見守って(?)くれると嬉しいです。  学生のため、ストック残量状況によっては土曜更新が出来ないことがあるかもしれません。ご了承下さい。  所々シリアス&コメディ(?)風味有り *表紙は、我が妹である あくす(Twitter名) に描いてもらった真琴です。かわいい *多少内容を修正しました。2023/07/05 *お気に入り数200突破!!有難う御座います!2023/08/25 *エブリスタでも投稿し始めました。アルファポリス先行です。2023/03/20

処理中です...