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拘束されたトムの耳にも、銃声が聞こえた。警備員達は慌てふためき、数人が飛行機へと駆けつけて行く。
「放して!悪いのは僕達じゃなくて、エリス・トマスの方なんだってば!」
アンディが必死に訴えている。
「嘘をつくな!お前達がトマス氏のハムスターを盗んだんだろ!そして大金をせしめようとしたんだ!」
警備員の1人が怒鳴った。
──なるほど、そう言う事になっていたのか……
納得しながらも、トムは自力で拘束をとき、警備員を振り切って機体に駆けた。先に到着していた警備員がトムを睨む。
「彼女はエリスの妹じゃない。俺達の知り合いだ」
「何を馬鹿な!」
また銃声がし、警備員達は体を強張らせた。それからまた1回の銃声がすると、機体の扉が開いた。
「彼女が降伏したわ」
そう言って出てきたのは、ジュリア・バートンだった。片手には銃が握られている。
「と……突入!」
警備員が機内に入って行く。遅れて到着した警官隊も、続いて中に入って行った。トムがバートンの手を握ると、彼女は困ったような笑みを浮かべた。
「心配かけて、ごめんなさい」
「いや、君が無事ならいい」
そう答えたものの、機内で一体何が起こったのか、謎だった。
トレント警察署で全員が事情聴取を受け、更にブライン・トマスの事情聴取があってから、漸くエリスは罪を認めた。そして金を握らされた警備員達の証言もあり、漸くトム達は釈放された。
「君達に感謝するよ」
ロビーで顔を合わせたブラインが、そう言ってトムの手を握ってきた。
「いえ。我々は何も……それよりもトマスさん、あのダイヤはお返しします」
目配せすると、アンディがポケットからダイヤを取り出し、ブラインに返した。
「何とお礼を申し上げればいいだろう!何でもする、言ってみてくれ」
ダイヤが手元に返ったブラインは、嬉しそうに笑っている。トムはバートンを見遣った。この件は、彼女が大いに助けてくれたのだ。
「礼なら彼女に……」
手でバートンを示すと、ブラインは苦笑した。
「さっきはありがとう。君がいなかったら多分……」
「いえ、お礼なんて。私も、必死でしたから」
「私の気が済まんのだ。なぁ、何かさせてくれ」
必死の形相に押されたのか、バートンは、じゃあ、と言った。
「ハムスターを下さい。凄く可愛くて……」
一瞬ブラインは目を丸くした。まさか金ではないものを要求されるとは思っていなかったのだろう。トムも、ミカやアンディも驚いていた。
「えっ?あの、ハムスターかね?いや、構わないが……金はいらんのか?」
「えぇ。私には、必要ありませんから」
思わずトムはその会話に割って入ろうとした。だがミカに止められた。
「いいじゃない、彼女がそう決めたんだから」
だとしても、こっちも随分骨を折ったのだ。報償を貰う権利はある筈だ。
「そうか……なら、君にはハムスターをやろう。彼等にもちゃんと礼はするから」
「放して!悪いのは僕達じゃなくて、エリス・トマスの方なんだってば!」
アンディが必死に訴えている。
「嘘をつくな!お前達がトマス氏のハムスターを盗んだんだろ!そして大金をせしめようとしたんだ!」
警備員の1人が怒鳴った。
──なるほど、そう言う事になっていたのか……
納得しながらも、トムは自力で拘束をとき、警備員を振り切って機体に駆けた。先に到着していた警備員がトムを睨む。
「彼女はエリスの妹じゃない。俺達の知り合いだ」
「何を馬鹿な!」
また銃声がし、警備員達は体を強張らせた。それからまた1回の銃声がすると、機体の扉が開いた。
「彼女が降伏したわ」
そう言って出てきたのは、ジュリア・バートンだった。片手には銃が握られている。
「と……突入!」
警備員が機内に入って行く。遅れて到着した警官隊も、続いて中に入って行った。トムがバートンの手を握ると、彼女は困ったような笑みを浮かべた。
「心配かけて、ごめんなさい」
「いや、君が無事ならいい」
そう答えたものの、機内で一体何が起こったのか、謎だった。
トレント警察署で全員が事情聴取を受け、更にブライン・トマスの事情聴取があってから、漸くエリスは罪を認めた。そして金を握らされた警備員達の証言もあり、漸くトム達は釈放された。
「君達に感謝するよ」
ロビーで顔を合わせたブラインが、そう言ってトムの手を握ってきた。
「いえ。我々は何も……それよりもトマスさん、あのダイヤはお返しします」
目配せすると、アンディがポケットからダイヤを取り出し、ブラインに返した。
「何とお礼を申し上げればいいだろう!何でもする、言ってみてくれ」
ダイヤが手元に返ったブラインは、嬉しそうに笑っている。トムはバートンを見遣った。この件は、彼女が大いに助けてくれたのだ。
「礼なら彼女に……」
手でバートンを示すと、ブラインは苦笑した。
「さっきはありがとう。君がいなかったら多分……」
「いえ、お礼なんて。私も、必死でしたから」
「私の気が済まんのだ。なぁ、何かさせてくれ」
必死の形相に押されたのか、バートンは、じゃあ、と言った。
「ハムスターを下さい。凄く可愛くて……」
一瞬ブラインは目を丸くした。まさか金ではないものを要求されるとは思っていなかったのだろう。トムも、ミカやアンディも驚いていた。
「えっ?あの、ハムスターかね?いや、構わないが……金はいらんのか?」
「えぇ。私には、必要ありませんから」
思わずトムはその会話に割って入ろうとした。だがミカに止められた。
「いいじゃない、彼女がそう決めたんだから」
だとしても、こっちも随分骨を折ったのだ。報償を貰う権利はある筈だ。
「そうか……なら、君にはハムスターをやろう。彼等にもちゃんと礼はするから」
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