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カフェでの仕事も一段落し、ジュリアは店長に休憩を貰って遅めのランチを店の隅で食べた。
──今頃、ミカ達はどうしてるかしら……
ふと気になり、向かいの書店へ向かう事にした。ハムスターのグレッグは、カフェには連れて入れない為、アンディに預けてある。
その様子見を兼ねて道路を渡り、書店へ入った。アンディは事務室の前にいて、雑誌を紐でくぐっているところだった。
「こんにちわ、アンディ。今いいかしら?」
「やぁ、ジュリア。グレッグなら事務室の中にいるよ」
そう言われ、少し事務室を覗いてみる。するとカゴに入ったグレッグが、デスクの上に乗せられていた。店長は今はいないらしい。
「ねぇ、ミカ達は大丈夫?」
くぐり終えたアンディは腰を伸ばし、ニコリと笑った。
「さっきミカからメールが届いたよ。潜伏場所付近に来たってね。今頃、そっと潜入してる頃じゃないかな」
上から微笑むアンディを見上げて、ジュリアも微笑した。そして幾つか尋ねたい質問を思い付いた。
「あの、ちょっと聞いてもいいかしら?」
「僕が答えられる事ならね」
アンディを見ているが、ジュリアの頭の中にはチェイスの姿があった。逞しく、無愛想だがハンサムな姿だ。
「チェイスさんって、どんな人なの?銃を持ってたけど……」
一般人が銃を所持するには、許可証がいる。
「彼はああ見えて探偵だよ。流行ってないけどね」
「探偵?」
そう言われてみれば、チェイスの部屋の窓にそのような文字が書かれていたような気がする。
「本業がいまいちだから、ここでバイトをしてるんだ。ミカは一応その助手って事になってるけど、友達として善意で手伝ってるみたい」
店長が戻ったらしく、アンディの視線がジュリアの後ろに向けられた。
振り返って挨拶をすると、ボブ・マックスと言う名札をつけた店長は、アンディに休憩をとるように言った。
「分かりました」
「アンディ、良かったらうちで食べない?まだ幾つか聞きたい事があるの」
そう言ってジュリアがカフェを手で示すと、アンディは快く誘いを受けてくれた。
並んで歩き、青店を出る。ジュリア・バートンは、アンディの胸元ぐらいまでしか背がなかった。
「ジュリアさ、越してきたばかりだけど、もしかしてチェイスの事が好きなの?」
歩道で立ち止まった時、アンディはそう尋ねてみた。そう尋ねたのは、出会った頃からチェイスを見る目が熱っぽく感じたからだし、聞きたい事がある、と言いながら、チェイスの事を聞いてきたからだ。
するとジュリアは顔を真赤にしてアンディを見上げると、困ったような顔をしてきた。それを見て、好きなんだと確信する。
「ど、どうして?」
傍目から見てもそうだと分かるように、ジュリアは平静を装おうとした。だが、まだ顔が赤い。
「どうしてって……そうだなぁ」
腕組みをして考える。すると1台のベンツが書店の前に停車した。運転席には黒いスーツを着た男が座り、後部座席には誰もいないように見えた。
「彼を見る目付き、かな?僕の時と違うんだもの」
そう言ってアンディがジュリアを見下ろすと、彼女の背後に2人の男が忍び寄っていた。
「ジュリア!」
咄嗟に手を伸ばしたが、男に頬を殴られ一瞬だけ昏倒してしまった。意識をしっかり取り戻した頃にはジュリアの姿はなく、ベンツが猛スピードで走り去るところだった。
「たっ、大変だぁ!ど、どうしよう……どうしよう……!」
狼狽えながら辺りを見回すと、運良くキーのついたバイクが放置されていた。
急いでまたがりエンジンをふかすと、持ち主が慌てて書店から飛び出てきた。
「ちょっとアンタ!それは俺のバイクだぞ!」
「ごめん、貸して!命に関わる問題なんだ!」
勢いよく道路に飛び出すと、アンディはその書店に働くハルバートだから、と叫んだ。しかし背後では、泥棒!と言う声がした。
──今頃、ミカ達はどうしてるかしら……
ふと気になり、向かいの書店へ向かう事にした。ハムスターのグレッグは、カフェには連れて入れない為、アンディに預けてある。
その様子見を兼ねて道路を渡り、書店へ入った。アンディは事務室の前にいて、雑誌を紐でくぐっているところだった。
「こんにちわ、アンディ。今いいかしら?」
「やぁ、ジュリア。グレッグなら事務室の中にいるよ」
そう言われ、少し事務室を覗いてみる。するとカゴに入ったグレッグが、デスクの上に乗せられていた。店長は今はいないらしい。
「ねぇ、ミカ達は大丈夫?」
くぐり終えたアンディは腰を伸ばし、ニコリと笑った。
「さっきミカからメールが届いたよ。潜伏場所付近に来たってね。今頃、そっと潜入してる頃じゃないかな」
上から微笑むアンディを見上げて、ジュリアも微笑した。そして幾つか尋ねたい質問を思い付いた。
「あの、ちょっと聞いてもいいかしら?」
「僕が答えられる事ならね」
アンディを見ているが、ジュリアの頭の中にはチェイスの姿があった。逞しく、無愛想だがハンサムな姿だ。
「チェイスさんって、どんな人なの?銃を持ってたけど……」
一般人が銃を所持するには、許可証がいる。
「彼はああ見えて探偵だよ。流行ってないけどね」
「探偵?」
そう言われてみれば、チェイスの部屋の窓にそのような文字が書かれていたような気がする。
「本業がいまいちだから、ここでバイトをしてるんだ。ミカは一応その助手って事になってるけど、友達として善意で手伝ってるみたい」
店長が戻ったらしく、アンディの視線がジュリアの後ろに向けられた。
振り返って挨拶をすると、ボブ・マックスと言う名札をつけた店長は、アンディに休憩をとるように言った。
「分かりました」
「アンディ、良かったらうちで食べない?まだ幾つか聞きたい事があるの」
そう言ってジュリアがカフェを手で示すと、アンディは快く誘いを受けてくれた。
並んで歩き、青店を出る。ジュリア・バートンは、アンディの胸元ぐらいまでしか背がなかった。
「ジュリアさ、越してきたばかりだけど、もしかしてチェイスの事が好きなの?」
歩道で立ち止まった時、アンディはそう尋ねてみた。そう尋ねたのは、出会った頃からチェイスを見る目が熱っぽく感じたからだし、聞きたい事がある、と言いながら、チェイスの事を聞いてきたからだ。
するとジュリアは顔を真赤にしてアンディを見上げると、困ったような顔をしてきた。それを見て、好きなんだと確信する。
「ど、どうして?」
傍目から見てもそうだと分かるように、ジュリアは平静を装おうとした。だが、まだ顔が赤い。
「どうしてって……そうだなぁ」
腕組みをして考える。すると1台のベンツが書店の前に停車した。運転席には黒いスーツを着た男が座り、後部座席には誰もいないように見えた。
「彼を見る目付き、かな?僕の時と違うんだもの」
そう言ってアンディがジュリアを見下ろすと、彼女の背後に2人の男が忍び寄っていた。
「ジュリア!」
咄嗟に手を伸ばしたが、男に頬を殴られ一瞬だけ昏倒してしまった。意識をしっかり取り戻した頃にはジュリアの姿はなく、ベンツが猛スピードで走り去るところだった。
「たっ、大変だぁ!ど、どうしよう……どうしよう……!」
狼狽えながら辺りを見回すと、運良くキーのついたバイクが放置されていた。
急いでまたがりエンジンをふかすと、持ち主が慌てて書店から飛び出てきた。
「ちょっとアンタ!それは俺のバイクだぞ!」
「ごめん、貸して!命に関わる問題なんだ!」
勢いよく道路に飛び出すと、アンディはその書店に働くハルバートだから、と叫んだ。しかし背後では、泥棒!と言う声がした。
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