トム・チェイスの悩み

３.

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エリスは、再び手ぶらで戻ってきた手下を罵った。今回は銃まで持たせたと言うのに。

「何で失敗したの！」
「す、すみません……奴等に仲間がいまして、不意をつかれてしまいました……」

2人は深く頭を下げている。

「使えないわね！」

飲んでいたワインを１人に引っかけ、エリスはベッドを振り返った。そこには足を拘束され、猿ぐつわまでされている夫の姿がある。醜く老いた顔は、苦痛と侮蔑にまみれた視線を向けていた。

「何か言いたいのかしら？」

手下に合図して猿ぐつわを外させると、ブラインは唾液を飛ばしながらエリスを罵った。

「この嘘つきめ！雌狐！私を騙したな！お前には遺産などやらんぞ！」
「いいのよ、残してくれなくたって。私は未亡人として、貴方の遺産を相続して生きる事にするから！」

そう言ってこめかみに銃を押し付けてやると、ブラインはみっともなく震えた。
今すぐ殺してもいいが、疑いが自分に向かないようにしなければならない。


──そうだわ……あの、邪魔者に始末を押し付けよう……


エリスにいい案が浮かんだ。再び手下に合図を送り、猿ぐつわを噛ませる。そして満面の笑みで振り返った。

「お前達に最後のチャンスをあげるわ」

クスクス笑い、エリスは新たなワインをグラスに注いだ。