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荒れた部屋を、3人が片付けるのを手伝ってくれた。漸くテーブルに落ち着いたのは、もう日付も変わろうとしている時だった。ジュリアは皆にコーヒーを配り、最後にチェイスの隣に座った。
「どう言う事だ?」
カップを握り、チェイスが厳しい口調で言った。ジュリアはその横顔を見遣ったが、チェイスは振り返らなかった。
「私は……あんなやり方をされて、黙ってグレッグを返すつもりはないです。でも、どうしてあの人達は、グレッグが私のところにいるって分かったのかしら?」
──感知する方法はある、と言っていたけれど……
「GPSだ。そのハムスターのどこかについているんだろ」
「思うんだけど……」
ジュリアの向かいに座るミカが口を開いた。
「私達、トマスを敵に回してしまったんじゃないかしら?」
「だろうな。奴等は、またハムスターを狙いにくる。一体どうするってんだ」
息をつく2人を見て、ジュリアは何だか申し訳ない気持ちになった。つい感情に流されてしまい、事をややこしくした。
「いや、それは分からないよ」
のんびりとした口調で、アンディが言った。3人は一斉に彼を見つめた。
「どう言う事?」
「ちょっと冷静に考えれば行き着く事なんだけど、ハムスターもダイヤも、ブライン・トマスが所持するものだよね。なのに血眼になって探してるのは、妻のエリスの方だ。おかしくない?」
「確かに、そうかも……」
納得したようにジュリアは頷いたが、チェイスは依然厳しい顔のままだ。
「妻を使って探させているかも知れないだろ」
「いえ、それはないと思うわ。さっきあいつらも、エリス様のものだって言ってたじゃない。明らかに彼女の差し金よ」
ミカがチェイスの意見を却下すると、彼は奥歯を噛み締めた。
「何故ブラインは探そうとしないんだ?」
そう質問したチェイスに、ジュリアは黙って頭を働かせた。
──何故か……それは多分……
ジュリアは推理を述べようとしたが、先にアンディが言った。
「探せないんだよ、きっと。ほら、ドラマとかでもよくあるパターンさ!」
目がキラキラしている。だがチェイスは嫌そうに眉間に皺を寄せた。
「どんなパターンだ?」
「エリスはまだ若い。ブラインとは20も違うんだ。何故結婚したのか?会見では、他の女性とは違ったとブラインは言っていた。って事は、お金には興味を示さなかったって事だよ。でも、何故こんなにもダイヤに執着するのか?それは、彼女が猫を被っていて、遺産目当てで結婚したからに他ならない!」テーブルを叩いたアンディは、熱のこもった口調で続けた。「きっとこう言う事だ」
アンディが推理したのは、ジュリアと全く同じだった。
ハネムーン中、ブラインが妻にダイヤをオークションに出品すると打ち明けた。
だが彼女は、その予想金額に納得がいかずに喧嘩になった。しかしそのダイヤは、何かが原因でハムスターが飲み込んでしまい、行方不明に。
彼女はそのダイヤを自身で売るつもりで、ハムスターの行方を探している。ブラインは、口出し出来ないよう隔離している。
と言うようなものだった。
「確かに説得力はある。だが確信も証拠もない」
そう意見し、チェイスは難しい顔で腕組みをした。
「だったら、確かめればいいじゃないか」
ニコリと笑うアンディは、まるで子馬のように愛らしい。
「どうやって確かめるの?奴等は、チェイスが追い払ったじゃない」
そうミカがアンディを見つめると、彼はニヤリと笑った。
「向こうがハムスターを探すのにGPSを使ったなら、僕たちも使えばいいんだよ」
ポケットから端末を取り出したアンディは、ミカから祝福のキスを受けて照れていた。
「どう言う事だ?」
カップを握り、チェイスが厳しい口調で言った。ジュリアはその横顔を見遣ったが、チェイスは振り返らなかった。
「私は……あんなやり方をされて、黙ってグレッグを返すつもりはないです。でも、どうしてあの人達は、グレッグが私のところにいるって分かったのかしら?」
──感知する方法はある、と言っていたけれど……
「GPSだ。そのハムスターのどこかについているんだろ」
「思うんだけど……」
ジュリアの向かいに座るミカが口を開いた。
「私達、トマスを敵に回してしまったんじゃないかしら?」
「だろうな。奴等は、またハムスターを狙いにくる。一体どうするってんだ」
息をつく2人を見て、ジュリアは何だか申し訳ない気持ちになった。つい感情に流されてしまい、事をややこしくした。
「いや、それは分からないよ」
のんびりとした口調で、アンディが言った。3人は一斉に彼を見つめた。
「どう言う事?」
「ちょっと冷静に考えれば行き着く事なんだけど、ハムスターもダイヤも、ブライン・トマスが所持するものだよね。なのに血眼になって探してるのは、妻のエリスの方だ。おかしくない?」
「確かに、そうかも……」
納得したようにジュリアは頷いたが、チェイスは依然厳しい顔のままだ。
「妻を使って探させているかも知れないだろ」
「いえ、それはないと思うわ。さっきあいつらも、エリス様のものだって言ってたじゃない。明らかに彼女の差し金よ」
ミカがチェイスの意見を却下すると、彼は奥歯を噛み締めた。
「何故ブラインは探そうとしないんだ?」
そう質問したチェイスに、ジュリアは黙って頭を働かせた。
──何故か……それは多分……
ジュリアは推理を述べようとしたが、先にアンディが言った。
「探せないんだよ、きっと。ほら、ドラマとかでもよくあるパターンさ!」
目がキラキラしている。だがチェイスは嫌そうに眉間に皺を寄せた。
「どんなパターンだ?」
「エリスはまだ若い。ブラインとは20も違うんだ。何故結婚したのか?会見では、他の女性とは違ったとブラインは言っていた。って事は、お金には興味を示さなかったって事だよ。でも、何故こんなにもダイヤに執着するのか?それは、彼女が猫を被っていて、遺産目当てで結婚したからに他ならない!」テーブルを叩いたアンディは、熱のこもった口調で続けた。「きっとこう言う事だ」
アンディが推理したのは、ジュリアと全く同じだった。
ハネムーン中、ブラインが妻にダイヤをオークションに出品すると打ち明けた。
だが彼女は、その予想金額に納得がいかずに喧嘩になった。しかしそのダイヤは、何かが原因でハムスターが飲み込んでしまい、行方不明に。
彼女はそのダイヤを自身で売るつもりで、ハムスターの行方を探している。ブラインは、口出し出来ないよう隔離している。
と言うようなものだった。
「確かに説得力はある。だが確信も証拠もない」
そう意見し、チェイスは難しい顔で腕組みをした。
「だったら、確かめればいいじゃないか」
ニコリと笑うアンディは、まるで子馬のように愛らしい。
「どうやって確かめるの?奴等は、チェイスが追い払ったじゃない」
そうミカがアンディを見つめると、彼はニヤリと笑った。
「向こうがハムスターを探すのにGPSを使ったなら、僕たちも使えばいいんだよ」
ポケットから端末を取り出したアンディは、ミカから祝福のキスを受けて照れていた。
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