トム・チェイスの悩み

１.

３

自家用飛行機は、少し機体を傾けながらも無事トレントシティの飛行場に緊急着陸した。管制員が駆けつけてくるのが、窓の向こうに見える。

「いい事？すぐにあのハムスターを探しなさい！この街のどこかにいるはずだから！」

エリスはボディガードに、厳しい口調で命令した。ブラインは怯えた顔でシートにうずくまっている。
エリスが発砲した時、その銃弾はブラインの隣のシートにめり込んだ。そしてハムスターは、その騒ぎに紛れてダイヤ──ブラインのジャケットから転がり出てきた──を頬張ってしまった。
何とか捕まえようと、エリスやボディガードが機内を這い回ったが、ハムスターは着陸し扉が開いた途端、機内から飛び出して行ってしまったのだ。

「私のハムスターをどうするつもりだ！」
「あのハムスターは、ダイヤを飲み込んでしまったのよ！それにあれはもう、貴方のじゃないの。それよりブライン、貴方、あのハムスターにGPSを付けてたわよね？」

冷淡な眼差しがブラインを見据えてくる。

「大丈夫ですか？」

管制員が漸く機内に顔を出し、不安そうにエリスやブラインを見つめてきた。

「えぇ、問題はないわ。でも暫く、この飛行機をここに置いておいて下さらない？」

エリスは満面の笑みで管制員を見つめ返した。
そう、問題はない。あのハムスターにはGPSがついている。見つかるのはすぐだろう。