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第1章
1─5
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ローズを出て3つ隣のカフェに入ると、ブルーローズは窓際に1人座って本を読んでいた。時刻は8時半。店内は空いていて、ジャズが流れている。
「やぁ、いいかな?」
そう言って近付き相席を希望すると、ブルーローズは笑顔で頷いた。
「さっきの……!」
そう言ったブルーローズは本にしおりを挟むと、ローレンへ笑いかけてくる。
「貴方も休憩ですか?」
「うん、まぁ、そんなとこ。そいや、名乗ってなかったね。僕は、リック・ローレン。この近くで働いてるんだ」
刑事だと言う事は、まだ伏せておく事にした。
「公務員か何かですか?」
そう尋ねてきたブルーローズに、ローレンは内心ドキリとする。
「何でそう思うの?」
「だってスーツだから。それにこの近くには、役所もあるし」
両肘をテーブルにつき、ブルーローズはローレンを見つめてきた。何も疑っていないような目をしている。
「うん、まぁね」
曖昧な返事をした。
取り敢えず、何かそれらしい情報を聞き出そうと話しをする事にし、ウェイトレスにコーヒーを注文した。
コーヒーと言えば、ジェシカはある種のカフェイン中毒だ。ストレスが溜まったり、息詰まったりすると、ブラックのコーヒーを必ず飲む。それは30分毎であったり、会議中であったり、パトロール中であってもだ。昨日は、朝から帰宅するまでに15杯は飲んでいた様に思う。そのうち胃がおかしくなるのでは、と心配しているのだが。
「お待たせしました」
すぐにコーヒーが運ばれ──ウェイトレスに礼を言うと──少しだけ砂糖を入れて掻き回した。
「君が働いてる花屋って、いつからあるの?」
熱いコーヒーを啜りながら、ブルーローズを観察する。
「2週間前かな?私は、先週から働かせてもらってるの」
そう言って微笑んだブルーローズは、優しそうに見えた。とても殺人なんて犯しそうにない。だが、余計な感情は捜査の邪魔になる。
ローレンは気持ちを切り替える為に、咳払いをした。
「全然気付かなかったよ。でも花屋の仕事って、大変なんじゃない?朝とか早そうだし」
そう尋ねると、ブルーローズは唸った。テーブルについた腕を組むと、首を僅かだけ傾ける。金髪が肩先で揺れた。
「そうですね。私はまだまだですけど、店長は早いですね。仕入れとかで市場に行ってますから」
「君は?いつもどのぐらい働いているの?」
少し強引だったかも知れない。不審に思われたかも。そう思っていると、ブルーローズは素直に答えた。その顔には、不審感を抱いている様子はない。
「朝は7時から。2度程休憩はありますけど夜は9時頃まで働いてます。ローレンさんは?」
「勤務時間、長いね。アルバイトでしょ?休憩があるって言っても、違法じゃない?」
自分への質問はさて置き、そうローレンが指摘する。するとブルーローズは、人差し指を自身の口元にあてた。
「それは、内緒ですよ?」
悪戯っぽい笑顔に、ほだされてしまいそうになる。それをぐっと堪え、次の質問をした。
「どうして?そんなに働く必要があるようには見えないんだけど」
身なりは貧しくはない。白いタートルネックのセーターに、小さなブルーの石のついたネックレスをしている。
「ありがとう。でも必要なの。それに私、バラが好きだから苦はないわ」
そう言ったブルーローズだが、その顔は少し辛そうだった。
「僕は仕事は辛いよ。トラブルばかりでね。勤務時間もバラバラだし」
刑事に、勤務時間と言う概念はない。
「ブルーはさ、家はこの近所なの?昨日、家に帰ってから何してた?」
今度は核心に近い質問をぶつけてみた。すると、ブルーローズはさすがに不審そうな顔を見せた。
「どうして?」
もう隠す必要もないだろう。これ以上の詮索は、ほぼ初対面に近い者でする会話ではなくなる。
「実はね、公務員は公務員なんだけど、僕はそこの警察署で働いてる刑事なんだ」
そう告げても、彼女に逃げる様子は見られない。
驚いて目を丸くし、口元へ両手をあてている。
ローレンはコートのポケットから警察手帳を取り出して見せると、少し体を前傾させた。
「黙っててごめんね。でも、分かるよね?僕が君に会いに来た理由……」
そう声を潜めて言うと、ブルーローズは困ったように眉を下げた。
「昨夜起こった、空き地の件の事、ですよね」
少し声が震えている。
「じゃあ、僕と一緒に来てくれるね?」
出来るだけ優しい声音を出した。まだ、ブルーローズが犯人だと決まった訳ではない。あくまでまだ、重要参考人だ。
「構いませんけど、店長に断ってからでもいいですか?」
「やぁ、いいかな?」
そう言って近付き相席を希望すると、ブルーローズは笑顔で頷いた。
「さっきの……!」
そう言ったブルーローズは本にしおりを挟むと、ローレンへ笑いかけてくる。
「貴方も休憩ですか?」
「うん、まぁ、そんなとこ。そいや、名乗ってなかったね。僕は、リック・ローレン。この近くで働いてるんだ」
刑事だと言う事は、まだ伏せておく事にした。
「公務員か何かですか?」
そう尋ねてきたブルーローズに、ローレンは内心ドキリとする。
「何でそう思うの?」
「だってスーツだから。それにこの近くには、役所もあるし」
両肘をテーブルにつき、ブルーローズはローレンを見つめてきた。何も疑っていないような目をしている。
「うん、まぁね」
曖昧な返事をした。
取り敢えず、何かそれらしい情報を聞き出そうと話しをする事にし、ウェイトレスにコーヒーを注文した。
コーヒーと言えば、ジェシカはある種のカフェイン中毒だ。ストレスが溜まったり、息詰まったりすると、ブラックのコーヒーを必ず飲む。それは30分毎であったり、会議中であったり、パトロール中であってもだ。昨日は、朝から帰宅するまでに15杯は飲んでいた様に思う。そのうち胃がおかしくなるのでは、と心配しているのだが。
「お待たせしました」
すぐにコーヒーが運ばれ──ウェイトレスに礼を言うと──少しだけ砂糖を入れて掻き回した。
「君が働いてる花屋って、いつからあるの?」
熱いコーヒーを啜りながら、ブルーローズを観察する。
「2週間前かな?私は、先週から働かせてもらってるの」
そう言って微笑んだブルーローズは、優しそうに見えた。とても殺人なんて犯しそうにない。だが、余計な感情は捜査の邪魔になる。
ローレンは気持ちを切り替える為に、咳払いをした。
「全然気付かなかったよ。でも花屋の仕事って、大変なんじゃない?朝とか早そうだし」
そう尋ねると、ブルーローズは唸った。テーブルについた腕を組むと、首を僅かだけ傾ける。金髪が肩先で揺れた。
「そうですね。私はまだまだですけど、店長は早いですね。仕入れとかで市場に行ってますから」
「君は?いつもどのぐらい働いているの?」
少し強引だったかも知れない。不審に思われたかも。そう思っていると、ブルーローズは素直に答えた。その顔には、不審感を抱いている様子はない。
「朝は7時から。2度程休憩はありますけど夜は9時頃まで働いてます。ローレンさんは?」
「勤務時間、長いね。アルバイトでしょ?休憩があるって言っても、違法じゃない?」
自分への質問はさて置き、そうローレンが指摘する。するとブルーローズは、人差し指を自身の口元にあてた。
「それは、内緒ですよ?」
悪戯っぽい笑顔に、ほだされてしまいそうになる。それをぐっと堪え、次の質問をした。
「どうして?そんなに働く必要があるようには見えないんだけど」
身なりは貧しくはない。白いタートルネックのセーターに、小さなブルーの石のついたネックレスをしている。
「ありがとう。でも必要なの。それに私、バラが好きだから苦はないわ」
そう言ったブルーローズだが、その顔は少し辛そうだった。
「僕は仕事は辛いよ。トラブルばかりでね。勤務時間もバラバラだし」
刑事に、勤務時間と言う概念はない。
「ブルーはさ、家はこの近所なの?昨日、家に帰ってから何してた?」
今度は核心に近い質問をぶつけてみた。すると、ブルーローズはさすがに不審そうな顔を見せた。
「どうして?」
もう隠す必要もないだろう。これ以上の詮索は、ほぼ初対面に近い者でする会話ではなくなる。
「実はね、公務員は公務員なんだけど、僕はそこの警察署で働いてる刑事なんだ」
そう告げても、彼女に逃げる様子は見られない。
驚いて目を丸くし、口元へ両手をあてている。
ローレンはコートのポケットから警察手帳を取り出して見せると、少し体を前傾させた。
「黙っててごめんね。でも、分かるよね?僕が君に会いに来た理由……」
そう声を潜めて言うと、ブルーローズは困ったように眉を下げた。
「昨夜起こった、空き地の件の事、ですよね」
少し声が震えている。
「じゃあ、僕と一緒に来てくれるね?」
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「構いませんけど、店長に断ってからでもいいですか?」
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