18 / 30
4.
6
しおりを挟む
大きく揺れる艦はあちこちで爆発を起こし、アラームは鳴り続けている。メイン・システムも警報を鳴らし、システムダウンを悲しげに告げていた。
──ラナフ号はもう撃沈する。
ロンは副農長として、タルトに代わり最後の命令を下した。
「全士官に告ぐ!ただちに当艦から脱出せよ!繰り返す!ラナフ号はもうすぐ壊滅する!ただちに小型宇宙船に乗り脱出せよ!」
メインブリッジにいる士官達も席を立つ。が、ロン達を気にしてなかなか立ち去ろうとはしない。それを見たロンは、彼等に先に行けと命令した。そしてメインブリッジにタルトと2人だけになると、ロンはそっと艦長に告げた。
「艦長、すみません。もうラナフは持たない……」
自身の腕の中でタルトが震える理由が、怒りでなのか悲しみでなのかはロンには判別がつかなかった。
「あのガキ……許さない!」
忌ま忌ましい若者の顔は忘れはしない。
「艦長、我々も早く脱出しましょう」
タルトが立ち上がるのを助けてから、ロンはコンソールに向かった。するとラナフ号が受けているダメージが70%だと分かった。急いでタッチパネルを叩き、全てのシステムをメインブリッジに集結させる。
また艦が大きく揺れた。
「ロン、貴方は逃げなさい。アタシはここに残るわ」
そうタルトは言い、司令席に着いた。するとロンが慌てて側に寄って来た。
「そんな事出来ません!貴女を置いて行くなど」
このまま小型宇宙船で逃げ、アカデミーに戻ったら、タルトは宇宙連邦評議会で審議され、まず艦長の地位を失うだろう。そして宇宙艦隊からの除名。最後は被害の規模から言って、地球外追放だ。だからと言って故郷には帰りたくない。
「貴方を巻き込んでしまって申し訳なく思ってるわ。だからロン、評議会に呼ばれたら、艦長に脅迫されてやったと言いなさい。そうしたら罪は軽くなる」
そう言って笑って見せたが、副艦長はメインブリッジから出て行こうとはしなかった。代わりにタルトの手を強く握り、初めて見せる悲しい顔を向けてきた。
「私は貴女が好きです……愛している女性を見殺しになど出来ません……!」
「ロン……?」
驚きに目を丸くするタルトを抱き寄せ、ロンは崩れ行くラナフ号と共に宇宙に散る覚悟をした。
「愛してます、艦長……」
「貴方……本当バカよね。でも嬉しいわ。貴方がアタシの副藤長でよかった。ありがとう……ロン」
タルトもロンに腕を回した。小柄な男だと思っていたが、こんなにも逞しい背中をしていたのか。
やがてアラームは止み、照明も消えた。空調システムも作動しなくなるまでに、多分あと5分もない。それまでには全システムはダウンするだろう。
終わりだ。タルトは目を閉じた。
──ラナフ号はもう撃沈する。
ロンは副農長として、タルトに代わり最後の命令を下した。
「全士官に告ぐ!ただちに当艦から脱出せよ!繰り返す!ラナフ号はもうすぐ壊滅する!ただちに小型宇宙船に乗り脱出せよ!」
メインブリッジにいる士官達も席を立つ。が、ロン達を気にしてなかなか立ち去ろうとはしない。それを見たロンは、彼等に先に行けと命令した。そしてメインブリッジにタルトと2人だけになると、ロンはそっと艦長に告げた。
「艦長、すみません。もうラナフは持たない……」
自身の腕の中でタルトが震える理由が、怒りでなのか悲しみでなのかはロンには判別がつかなかった。
「あのガキ……許さない!」
忌ま忌ましい若者の顔は忘れはしない。
「艦長、我々も早く脱出しましょう」
タルトが立ち上がるのを助けてから、ロンはコンソールに向かった。するとラナフ号が受けているダメージが70%だと分かった。急いでタッチパネルを叩き、全てのシステムをメインブリッジに集結させる。
また艦が大きく揺れた。
「ロン、貴方は逃げなさい。アタシはここに残るわ」
そうタルトは言い、司令席に着いた。するとロンが慌てて側に寄って来た。
「そんな事出来ません!貴女を置いて行くなど」
このまま小型宇宙船で逃げ、アカデミーに戻ったら、タルトは宇宙連邦評議会で審議され、まず艦長の地位を失うだろう。そして宇宙艦隊からの除名。最後は被害の規模から言って、地球外追放だ。だからと言って故郷には帰りたくない。
「貴方を巻き込んでしまって申し訳なく思ってるわ。だからロン、評議会に呼ばれたら、艦長に脅迫されてやったと言いなさい。そうしたら罪は軽くなる」
そう言って笑って見せたが、副艦長はメインブリッジから出て行こうとはしなかった。代わりにタルトの手を強く握り、初めて見せる悲しい顔を向けてきた。
「私は貴女が好きです……愛している女性を見殺しになど出来ません……!」
「ロン……?」
驚きに目を丸くするタルトを抱き寄せ、ロンは崩れ行くラナフ号と共に宇宙に散る覚悟をした。
「愛してます、艦長……」
「貴方……本当バカよね。でも嬉しいわ。貴方がアタシの副藤長でよかった。ありがとう……ロン」
タルトもロンに腕を回した。小柄な男だと思っていたが、こんなにも逞しい背中をしていたのか。
やがてアラームは止み、照明も消えた。空調システムも作動しなくなるまでに、多分あと5分もない。それまでには全システムはダウンするだろう。
終わりだ。タルトは目を閉じた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

Moon Light
たける
SF
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
【あらすじ】
タイムワープに失敗したアルテミス号が漂着したのは、80年前の【地球】だった。
彼等は無事、自分達の世界に戻る事が出来るのか……?
宇宙大作戦が大好きで、勢いで書きました。模倣作品のようですが、寛容な気持ちでご覧いただけたら幸いです。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?


シーフードミックス
黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。
以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。
ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。
内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~
海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。
再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた―
これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。
史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。
不定期更新です。
SFとなっていますが、歴史物です。
小説家になろうでも掲載しています。

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。

ーUNIVERSEー
≈アオバ≈
SF
リミワール星という星の敗戦国で生きながらえてきた主人公のラザーは、生きるため、そして幸せという意味を知るために宇宙組織フラワーに入り、そこで出来た仲間と共に宇宙の平和をかけて戦うSFストーリー。
毎週火曜日投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる