14 / 30
4.
2
しおりを挟む
アルテミス号に残されたジョシュ達は、どうすれば誰も死なずに済むかを討論していた。
「ようするに、3人共助けられて、ラナフ号の艦長を評議会に突き出せればいいんだ」
そうジョシュが言うと、持ち場に座って艦長達の通信を聞いていたマナ・ホップスは、そっとインカムを置いた。
「艦長達から通信器が外されたわ。これでもう、向こうに何が起きても分からない」
そう言ったホップスは、アルテミス号の士官として落ち着きを取り戻そうとしていた。早く冷静にならなければならない。そうしないといい案も出ないし、咄嗟の事への対処も遅れてしまう。だが、何より心配だったのは、艦長代理を命じられたジョシュ・デビットの事だった。
講習や実習では、いつもジョシュは飄々としていて掴みどころがなく、どこから本気なのか分からなかった。そんな彼は、今まで見せた事のない真剣な顔をしている。だから心配だった。無茶な事を言い出したりしないだろうか?
「そうは言うがな、ジョシュ。向こうは人質を3人も捕ってるんだ。スーパーマンじゃないんだから、簡単にはいかないだろうよ。ましてやピサロ艦長は、20分しても戻らなかったら、最悪の状況を想定し、転送装置でファイ副艦長殿を迎えに来いと言ったんだぞ?」
相変わらず難しい顔をしながら、ワイズはジョシュを諭すように言った。
「それなんだけど、どうして迎えに行くのにファイ副艦長だけなんだろう?3人共一緒に転送すればいいんじゃないのかな?」
アルテミス号を停滞させたハンク・デルマは首を傾げた。確かにおかしな話だ。
「艦長は向こうの提案を飲まないつもりなんだ」
ジョシュは、ピサロが死ぬつもりだとは言わなかった。そしてふと、考えた。
待つ事も大事だろう。だが自分は待つのが嫌いだ。なら、艦長の命令に背くしかない。今までも多々艦隊規則に背く行為をしてきた。どう処分れようと、ジョシュは自分の信じる道を進みたい。そう腹に決め、ぱちんと司令席を叩いた。
「俺はこれから、たくさん規則を破る事になるだろう。こうやって時間がくるのを待っていたくないんだ。だから、君達はそれを見て見ぬフリをして欲しい」
ワイズ、デルマ、ミューズ、ホップス、カールと見遣り、ジョシュはキッと唇を結んだ。
「デビット、貴方何を考えてるの?無茶をするつもりなら……」
「無茶な事だよ、マナ。だけど今俺は、アルテミス号の艦長だ。反発するなら命令に言い換えるぞ……
?」
そう言うと、ホップスは厳しい顔で腕を組んだ。どうして男はこうも無茶をしたがるのだろう。
「で……?何だよ、その無茶っての。聞こうじゃないか」
カールは悪戯の作戦を練る子供のようにジョシュを促した。
「今から3人を救出に向かう」
それしかない。交渉など到底無理な事は、最初から分かっている。なのにあの石頭が反論するからいけないんだ。そう思いながら、ジョシュは仲間達に作戦を話し始めた。
「ようするに、3人共助けられて、ラナフ号の艦長を評議会に突き出せればいいんだ」
そうジョシュが言うと、持ち場に座って艦長達の通信を聞いていたマナ・ホップスは、そっとインカムを置いた。
「艦長達から通信器が外されたわ。これでもう、向こうに何が起きても分からない」
そう言ったホップスは、アルテミス号の士官として落ち着きを取り戻そうとしていた。早く冷静にならなければならない。そうしないといい案も出ないし、咄嗟の事への対処も遅れてしまう。だが、何より心配だったのは、艦長代理を命じられたジョシュ・デビットの事だった。
講習や実習では、いつもジョシュは飄々としていて掴みどころがなく、どこから本気なのか分からなかった。そんな彼は、今まで見せた事のない真剣な顔をしている。だから心配だった。無茶な事を言い出したりしないだろうか?
「そうは言うがな、ジョシュ。向こうは人質を3人も捕ってるんだ。スーパーマンじゃないんだから、簡単にはいかないだろうよ。ましてやピサロ艦長は、20分しても戻らなかったら、最悪の状況を想定し、転送装置でファイ副艦長殿を迎えに来いと言ったんだぞ?」
相変わらず難しい顔をしながら、ワイズはジョシュを諭すように言った。
「それなんだけど、どうして迎えに行くのにファイ副艦長だけなんだろう?3人共一緒に転送すればいいんじゃないのかな?」
アルテミス号を停滞させたハンク・デルマは首を傾げた。確かにおかしな話だ。
「艦長は向こうの提案を飲まないつもりなんだ」
ジョシュは、ピサロが死ぬつもりだとは言わなかった。そしてふと、考えた。
待つ事も大事だろう。だが自分は待つのが嫌いだ。なら、艦長の命令に背くしかない。今までも多々艦隊規則に背く行為をしてきた。どう処分れようと、ジョシュは自分の信じる道を進みたい。そう腹に決め、ぱちんと司令席を叩いた。
「俺はこれから、たくさん規則を破る事になるだろう。こうやって時間がくるのを待っていたくないんだ。だから、君達はそれを見て見ぬフリをして欲しい」
ワイズ、デルマ、ミューズ、ホップス、カールと見遣り、ジョシュはキッと唇を結んだ。
「デビット、貴方何を考えてるの?無茶をするつもりなら……」
「無茶な事だよ、マナ。だけど今俺は、アルテミス号の艦長だ。反発するなら命令に言い換えるぞ……
?」
そう言うと、ホップスは厳しい顔で腕を組んだ。どうして男はこうも無茶をしたがるのだろう。
「で……?何だよ、その無茶っての。聞こうじゃないか」
カールは悪戯の作戦を練る子供のようにジョシュを促した。
「今から3人を救出に向かう」
それしかない。交渉など到底無理な事は、最初から分かっている。なのにあの石頭が反論するからいけないんだ。そう思いながら、ジョシュは仲間達に作戦を話し始めた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

Moon Light
たける
SF
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
【あらすじ】
タイムワープに失敗したアルテミス号が漂着したのは、80年前の【地球】だった。
彼等は無事、自分達の世界に戻る事が出来るのか……?
宇宙大作戦が大好きで、勢いで書きました。模倣作品のようですが、寛容な気持ちでご覧いただけたら幸いです。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

会社の上司の妻との禁断の関係に溺れた男の物語
六角
恋愛
日本の大都市で働くサラリーマンが、偶然出会った上司の妻に一目惚れしてしまう。彼女に強く引き寄せられるように、彼女との禁断の関係に溺れていく。しかし、会社に知られてしまい、別れを余儀なくされる。彼女との別れに苦しみ、彼女を忘れることができずにいる。彼女との関係は、運命的なものであり、彼女との愛は一生忘れることができない。
「メジャー・インフラトン」序章2/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節FIRE!FIRE!FIRE! No1. )
あおっち
SF
敵の帝国、AXISがいよいよ日本へ攻めて来たのだ。その島嶼攻撃、すなわち敵の第1次目標は対馬だった。
この序章2/7は主人公、椎葉きよしの少年時代の物語です。女子高校の修学旅行中にAXIS兵士に襲われる女子高生達。かろうじて逃げ出した少女が1人。そこで出会った少年、椎葉きよしと布村愛子、そして少女達との出会い。
パンダ隊長と少女達に名付けられたきよしの活躍はいかに!少女達の運命は!
ジャンプ血清保持者(ゼロ・スターター)椎葉きよしを助ける人々。そして、初めての恋人ジェシカ。札幌、定山渓温泉に集まった対馬島嶼防衛戦で関係を持った家族との絆のストーリー。
彼らに関連する人々の生き様を、笑いと涙で送る物語。疲れたあなたに贈る微妙なSF物語です。是非、ご覧あれ。
※加筆や修正が予告なしにあります。
「メジャー・インフラトン」序章4/7(僕のグランドゼロ〜マズルカの調べに乗って。少年兵の季節JUMP! JUMP! JUMP! No1)
あおっち
SF
港に立ち上がる敵AXISの巨大ロボHARMOR。遂に、AXIS本隊が北海道に攻めて来たのだ。その第1次上陸先が苫小牧市だった。
これは、現実なのだ!
その発見者の苫小牧市民たちは、戦渦から脱出できるのか。
それを助ける千歳シーラスワンの御舩たち。
同時進行で圧力をかけるAXISの陽動作戦。
台湾金門県の侵略に対し、真向から立ち向かうシーラス・台湾、そしてきよしの師範のゾフィアとヴィクトリアの機動艦隊。
新たに戦いに加わった衛星シーラス2ボーチャン。
目の離せない戦略・戦術ストーリーなのだ。
昨年、椎葉きよしと共に戦かった女子高生グループ「エイモス5」からも目が離せない。
そして、遂に最強の敵「エキドナ」が目を覚ましたのだ……。
SF大河小説の前章譚、第4部作。
是非ご覧ください。
※加筆や修正が予告なしにあります。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

シーフードミックス
黒はんぺん
SF
ある日あたしはロブスターそっくりの宇宙人と出会いました。出会ったその日にハンバーガーショップで話し込んでしまいました。
以前からあたしに憑依する何者かがいたけれど、それは宇宙人さんとは無関係らしい。でも、その何者かさんはあたしに警告するために、とうとうあたしの内宇宙に乗り込んできたの。
ちょっとびっくりだけど、あたしの内宇宙には天の川銀河やアンドロメダ銀河があります。よかったら見物してってね。
内なる宇宙にもあたしの住むご町内にも、未知の生命体があふれてる。遭遇の日々ですね。

ーUNIVERSEー
≈アオバ≈
SF
リミワール星という星の敗戦国で生きながらえてきた主人公のラザーは、生きるため、そして幸せという意味を知るために宇宙組織フラワーに入り、そこで出来た仲間と共に宇宙の平和をかけて戦うSFストーリー。
毎週火曜日投稿中!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる