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通信が切れると、メインブリッジは静かになった。ラナフ号からの攻撃も止み、皆ピサロ艦長がどう指示するのかを待っている。
「行かない方がいいですよ、艦長。これは向こうの策略です」
ジョシュがそう言うと、ファイが意見を対立させてきた。
「交渉はすべきです。それに策略だと言う確信もありません。タルト艦長を説得し、宇宙連邦評議会に連れて行かなければなりません」
「何甘い事言ってんだよ?向こうはあんたの父親を人質にしてるんだぞ?この件を評議会にチクるなって言うに決まってる……!もし艦長が拒否すれば、殺されかねない状況だ。今すぐ評議会に報告し、応援を待つのが得策だろ?」
そうジョシュは言ったが、ピサロ艦長はゆっくりと席から立ち上がった。
「タルト艦長は、評議会に連絡したらムーアを殺すと言っていたんだ。報告は出来ない。ここはファイが言うように説得した方がいい」
「艦長……!」
死にに行くようなものだ。そう言おうとしたが、ピサロが鋭い目でジョシュを振り返ったので、言葉が出なかった。
「大丈夫だ。1人では行かない。ファイ、君にも一緒に来て貰いたい」
そう言って歩き出したピサロの元へ、ファイは無言で付き添った。
「駄目だ……!」
2人の前にジョシュは立ちはだかった。行かせない。行かせたら2人共殺される。
そして艦長不在のアルテミス号は、ラナフ号に最終攻撃を受けて全減させられてしまう。
「退きなさい。貴方はまだ候補生です、艦長に意見出来る立場ではないのですよ?」
「そんな事言ってる場合じゃない!トリッド人が感情的なのは知ってるだろ?ルドルフ号を撃墜して興奮してる時に交渉したって無駄だ!」
「ならば……」
そう言ったファイの瞳が僅かに悲しみに変わった気がした。
「貴方は私の父が殺されても構わないと言うのですか?」
ジョシュは怯んだ。そんな事は思ってない。だが、2人を行かせないと言う事は、それを意味する。
「そうじゃ……ない」
「ならば、我々の交渉がうまく行くよう、そこを退くべきだ」
そう言い、ファイはジョシュを押し退け道を開けさせると、リフトのボタンを押した。
「ジョシュ、大丈夫だ。もし君が考えるような最悪の事態になるようなら、君が評議会に報告してくれ」
温かい手がジョシュの肩を掴んだ。
「ホップス、小型通信器を私とファイにつけてくれ。そうしたら会話がここで聞ける」
「は……い、艦長」
ホップスの顔色は青い。彼女もジョシュと同じように、最悪の事態を想像しているに違いない。
「私とファイがいない間、ジョシュ、君が艦長代理を勤めるんだ」
震える手でホップスが2人に通信器をつけている。
「艦長、必ず生きて帰ってきて下さい」
ピサロは長期に渡り、宇宙アカデミーで過ごすジョシュにとって父親のような存在だ。無くしたくない。
「もしもの時は、君が助けるんだ」
そう微笑すると、ピサロはファイとリフトに乗り込んだ。
リフト前に立ち尽くすジョシュは、そう言ったピサロの言葉を胸に刻み、司令席に向かった。
こんな戦いはあってはならない。味方同士が争い合うなんてどうかしてる。
必ず2人を、いや、3人を助けてみせる。そう誓った。
「行かない方がいいですよ、艦長。これは向こうの策略です」
ジョシュがそう言うと、ファイが意見を対立させてきた。
「交渉はすべきです。それに策略だと言う確信もありません。タルト艦長を説得し、宇宙連邦評議会に連れて行かなければなりません」
「何甘い事言ってんだよ?向こうはあんたの父親を人質にしてるんだぞ?この件を評議会にチクるなって言うに決まってる……!もし艦長が拒否すれば、殺されかねない状況だ。今すぐ評議会に報告し、応援を待つのが得策だろ?」
そうジョシュは言ったが、ピサロ艦長はゆっくりと席から立ち上がった。
「タルト艦長は、評議会に連絡したらムーアを殺すと言っていたんだ。報告は出来ない。ここはファイが言うように説得した方がいい」
「艦長……!」
死にに行くようなものだ。そう言おうとしたが、ピサロが鋭い目でジョシュを振り返ったので、言葉が出なかった。
「大丈夫だ。1人では行かない。ファイ、君にも一緒に来て貰いたい」
そう言って歩き出したピサロの元へ、ファイは無言で付き添った。
「駄目だ……!」
2人の前にジョシュは立ちはだかった。行かせない。行かせたら2人共殺される。
そして艦長不在のアルテミス号は、ラナフ号に最終攻撃を受けて全減させられてしまう。
「退きなさい。貴方はまだ候補生です、艦長に意見出来る立場ではないのですよ?」
「そんな事言ってる場合じゃない!トリッド人が感情的なのは知ってるだろ?ルドルフ号を撃墜して興奮してる時に交渉したって無駄だ!」
「ならば……」
そう言ったファイの瞳が僅かに悲しみに変わった気がした。
「貴方は私の父が殺されても構わないと言うのですか?」
ジョシュは怯んだ。そんな事は思ってない。だが、2人を行かせないと言う事は、それを意味する。
「そうじゃ……ない」
「ならば、我々の交渉がうまく行くよう、そこを退くべきだ」
そう言い、ファイはジョシュを押し退け道を開けさせると、リフトのボタンを押した。
「ジョシュ、大丈夫だ。もし君が考えるような最悪の事態になるようなら、君が評議会に報告してくれ」
温かい手がジョシュの肩を掴んだ。
「ホップス、小型通信器を私とファイにつけてくれ。そうしたら会話がここで聞ける」
「は……い、艦長」
ホップスの顔色は青い。彼女もジョシュと同じように、最悪の事態を想像しているに違いない。
「私とファイがいない間、ジョシュ、君が艦長代理を勤めるんだ」
震える手でホップスが2人に通信器をつけている。
「艦長、必ず生きて帰ってきて下さい」
ピサロは長期に渡り、宇宙アカデミーで過ごすジョシュにとって父親のような存在だ。無くしたくない。
「もしもの時は、君が助けるんだ」
そう微笑すると、ピサロはファイとリフトに乗り込んだ。
リフト前に立ち尽くすジョシュは、そう言ったピサロの言葉を胸に刻み、司令席に向かった。
こんな戦いはあってはならない。味方同士が争い合うなんてどうかしてる。
必ず2人を、いや、3人を助けてみせる。そう誓った。
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