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1人乗りの小型宇宙船に乗り込んだリチャードは、タルトが何故自分を指名してきたのか分からないままだった。
それでも向かうしかない。自分が行かなければ、ルドルフ号が攻撃されてしまう。
各スイッチをオンにし、スラスターが外れたのをモニターで確認すると、リチャードはラナフ号を目指して宇宙へ飛び出した。
タルトとフラムは親友同士だ。それはリチャードがフラムと結婚する前からの関係だった。
──何が話したいのだろう。
極力スピードを上げ、航路を設定する。
トリッド人であるタルトは、その種族特有の外見はしていたが、内面は非常に穏やかだった。感情的になる場面を今までリチャードは見た事がない。
ふと、フラムに連絡を入れてみようか。そう思い通信機に手を延ばした時、少し放れた場所に巨大な航宙艦が姿を現した。一目でラナフ号だと分かったリチャードは、航路を設定し直した。すると通信機が電波をキャッチした。慌てて受信ボタンを押すと、モニターにタルトの姿が映し出された。
『はぁい、リチャード。久しぶりね。迎えに来たわ』
「タルト……!一体どう言う了見で僕を呼び出したんだ?」
そうリチャードが言うと、小型宇宙船は牽引されラナフ号へと入って行った。搬入口に停止すると、モニターは切れていた。
「ムーア機関士、どうぞこちらへ」
外から声をかけられ、ゆっくりと扉を開いて艦内に出たリチャードは、回りが緊迫した空気に包まれているのを感じた。
「君の艦長は、何の理由があって呼び付けたんだ?」
尋ねても、ラナフ号のクルーは存じ上げません、としか答えなかった。
リフトに乗せられメインブリッジに入ると、嬉々とした笑顔でタルトがリチャードを迎えた。
「ラナフ号へようこそ、リチャード」
「なぁタルト。いい加減教えてくれよ。用はなんだい?」
そうリチャードが尋ねた途端、間近で爆音が轟き、航宙艦は大きく揺れた。立っていられず床に倒れたリチャードは、タルトを見上げた。
「ルドルフ号のシールド解除。当艦のミサイルが命中しました」
リチャードは耳を疑った。
「貴方が悪いのよ?フラムを選ぶから」
「フラムを選んだのが悪い?どう言う意味だ……?第一、彼等は関係ないじゃないか!」
飛びつこうとしたが、それを素早くクルー達に阻まれ、リチャードは再び床に倒れた。
「アタシ、嫌いなのよ、クリップ艦長」
そう答えたタルトはもう笑ってはいなかった。
「そんな事……!」
後に言葉が続かない。
「ねぇリチャード。フラムと別れてちょうだい」
リチャードは愕然とし、まだ言葉が出ないでいた。
それでも向かうしかない。自分が行かなければ、ルドルフ号が攻撃されてしまう。
各スイッチをオンにし、スラスターが外れたのをモニターで確認すると、リチャードはラナフ号を目指して宇宙へ飛び出した。
タルトとフラムは親友同士だ。それはリチャードがフラムと結婚する前からの関係だった。
──何が話したいのだろう。
極力スピードを上げ、航路を設定する。
トリッド人であるタルトは、その種族特有の外見はしていたが、内面は非常に穏やかだった。感情的になる場面を今までリチャードは見た事がない。
ふと、フラムに連絡を入れてみようか。そう思い通信機に手を延ばした時、少し放れた場所に巨大な航宙艦が姿を現した。一目でラナフ号だと分かったリチャードは、航路を設定し直した。すると通信機が電波をキャッチした。慌てて受信ボタンを押すと、モニターにタルトの姿が映し出された。
『はぁい、リチャード。久しぶりね。迎えに来たわ』
「タルト……!一体どう言う了見で僕を呼び出したんだ?」
そうリチャードが言うと、小型宇宙船は牽引されラナフ号へと入って行った。搬入口に停止すると、モニターは切れていた。
「ムーア機関士、どうぞこちらへ」
外から声をかけられ、ゆっくりと扉を開いて艦内に出たリチャードは、回りが緊迫した空気に包まれているのを感じた。
「君の艦長は、何の理由があって呼び付けたんだ?」
尋ねても、ラナフ号のクルーは存じ上げません、としか答えなかった。
リフトに乗せられメインブリッジに入ると、嬉々とした笑顔でタルトがリチャードを迎えた。
「ラナフ号へようこそ、リチャード」
「なぁタルト。いい加減教えてくれよ。用はなんだい?」
そうリチャードが尋ねた途端、間近で爆音が轟き、航宙艦は大きく揺れた。立っていられず床に倒れたリチャードは、タルトを見上げた。
「ルドルフ号のシールド解除。当艦のミサイルが命中しました」
リチャードは耳を疑った。
「貴方が悪いのよ?フラムを選ぶから」
「フラムを選んだのが悪い?どう言う意味だ……?第一、彼等は関係ないじゃないか!」
飛びつこうとしたが、それを素早くクルー達に阻まれ、リチャードは再び床に倒れた。
「アタシ、嫌いなのよ、クリップ艦長」
そう答えたタルトはもう笑ってはいなかった。
「そんな事……!」
後に言葉が続かない。
「ねぇリチャード。フラムと別れてちょうだい」
リチャードは愕然とし、まだ言葉が出ないでいた。
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