死神とミュージシャン

たける

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8日目

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早瀬タクミは病院に──本人は拒否したが、救急隊員には連れて行く義務でもあるかのように、半ば強引に──連れて行かれた。私も一緒に検査を受けさせられたが、むち打ちすらなかった。早瀬タクミは、全身を強打しており──シートベルトをしていたのにも関わらず、だ。事故の衝撃と言うものは、それ程強いらしい──検査入院をさせられる事になった。

「もう終わりだー……」

三上に連絡をした後、病室に入れられた早瀬タクミが、そう嘆いた。確かに終わりだなと思うが、敢えて口にはしなかった。

「舞台の上で死にたかったな……」
「抜け出すか」

そう提案したが、彼は首を小さく振った。

「下手に出たらさー、囲まれちまうだろ」

早瀬タクミが言う様に、彼の入院は瞬く間にニュースで報道され、病室の前をファン──中には医師や看護師の姿もある──が囲んでいた。病院の外にはマスコミが群がり、目の前を行き交う人間に、片っ端から話を聞いているようだった。

「人気者は大変だな」
「参っちゃうよなー!」

憮然として言い放つ。私は彼が死ぬのを待つしかないので、再び文庫本を読み始める事にした。が、すぐにそれを中断するように、三上が病室に──様々な人間に揉みくちゃにされたように、髪や衣服が乱れている──現れた。

「タクミさん!」
「おぉ、悪いね、こんな事になっちゃってさー……」
「そんな事より、お体は大丈夫なんですか?」
「うん。2、3日様子を見るのに入院させられただけだからさ」

その表情には、生きては出られないだろうと言う、悲しみが滲んでいるように見えた。それを三上が、何か検査に引っ掛かるような事があったんじゃないか、と、疑うように、本当に?と聞いている。

「ホントだって」
「……後で担当医に聞いてみます」
「信じてないなー?もぅっ」
「警察の方が、もうすぐ事情聴取に参りますので」
「あのさ、相手の人、どうなってるかまだ……」
「伺ってませんので、分かりません。それも聞いてみます」

では、と言って、三上が出て行く。外から悲鳴に似た歓声が上がるが、すぐに扉が閉められて遮断された。

「はぁ……」
「どうした、ため息なんかついて」
「何でもないよ……俺は少し寝るから、君は本でも読んでるといい」
「そうさせてもらう」

もうすぐ読み終えてしまうなと思いながら、私はいつ死ぬか分からない早瀬タクミの傍らで、続きを読み始めた。




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