死神とミュージシャン

６日目

２．

三上が死神を連れて戻ってきた。タクミは、舞台の様子を映しているモニターに目をやっていたが、見ていた訳ではないので消した。

「どこ行ってたんだよー？」
「社長と話をしてたんだ」
「え？社長と？どんな話したの？」
「デビューさせてやると言われたんだが、断った」

それを聞いてタクミは笑ったが、三上は驚きに目を丸くした。

「お断りになったんですか？どうしてです？ラジオ局にまで、ご自身の歌を持って行かれたのに？」

それに関して、死神は答える事が出来ないだろう。タクミは助け船を出すように、立ち上がった。

「そろそろアイツ等の出番だろ？見に行こうよ」
「え、あ、はい……」

戸惑う三上と、しれっとしている死神を連れ、タクミは観客席へと向かった。席は大体埋まっていたが、何とか３人座れると、暗転している舞台を見遣った。
ザ・トリプルズの活躍を見るのも、これが最後だ。きっとタクミが死んだ後も、活躍は続くだろう。それを見守れないのは残念だったが、仕方がない。
やがて舞台に照明つき、ザ・トリプルズが現れた。観客席から拍手が贈られる。タクミも、力一杯拍手を贈った。