死神とミュージシャン

たける

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5日目

4.

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対談を滞りなく終え、タクミはザ・トリプルズと別れて帰宅した。タクシーを降り際に、三上が明日の予定を確認する。

「タクミさんのリハーサルは、2時頃からの予定なので、それまでには会場入りして下さいね」
「うん、分かった。そんじゃ、明日なー」

タクシーを見送り、家に入る。死神の姿は、控え室からいつの間にかいなくなっていて、今も見えない。きっと書店にいるのだろう。

「片付けないとなー……」

散らかった部屋を見回すと、やる気が萎えてきた。それでもやらなければと気力を奮い立たせ、手をつけ始める。
もうすぐ人生が終わると分かっていると、全てが不必要なものに思えてならない。それでもタクミは、衣服をタンスに仕舞い、雑誌はラックに戻したりと、本来ものがあるべき場所に直していった。

どのぐらい片付けに没頭していたのだろう。いつの間にか陽はとっぷり暮れていて、空腹なのに気が付いた。
まだ死神は戻ってこない。もしかしたら、死ぬ時まで戻ってこないのかも知れない。そう思うと無性に人恋しくなり、タクミはキミヒコに電話をかけた。

『もしもしー!タクミさん、どうしたんですかぁ?』

「悪いなー。もし予定が空いてたらさー、今から飲みに行かないか?」

時刻は8時を回っている。タクミはソファに腰掛け、その縁を指でなぞった。

『行きます!他の2人も誘いましょうか?』

「んー?いや、いいよ」

ザ・トリプルズを可愛がってはいるが、坂田はあまりなついてはくれていないようだ。それに戸塚も、あまり喋ったりはしない。それに比べて鷹野は、タクミの事を好いてくれている。初めて会った時に──タクミのファンだと言っていたから、と言う訳ではないが──タクミは特に鷹野を可愛がっていた。

『そうですか?じゃあ、2人きりで飲みましょう』

「うん。そんじゃさー……あ、今、家にいんの?」

『はい。でも、飛んで行きます』

「アハハ!そう?じゃあさー……」

タクミの家の近所にある居酒屋を指定し、そこで飲む事にして電話を切った。途端、静寂に包まれ、タクミはぼんやりと、最後の晩餐だなと思った。




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