27 / 43
5日目
※
しおりを挟む
取り敢えず控え室に入ると、三上は雑誌者達に挨拶に行くと出て行った。早瀬タクミは私と共に控え室に残り、これから行う仕事について教えてくれた。
「私がいなくても構わないようだが」
率直に感想を言った。
対談は早瀬タクミと、ザ・トリプルズと言う若者で行うらしく、私の出番はない。むしろ、いない方が色々詮索されなくて済むのではないだろうか。
「そうだけどさー……君、何か用事とかあるの?」
ソファに座り──煙草に火をつけながら──早瀬タクミが私を見上げてきた。特に用事はないのだが、手持ちの文庫本を読み終えてしまったので、新しいものを購入したかった。そのように伝えると、じゃあ、と彼は言った。
「それならさ、暫く別行動にしよっか?」
「異議はない」
最期さえ見届けられれば、こんなにも担当の人間と一緒にいる必要はないのだ。
「そっか。俺としてはさー、ザ・トリプルズ、君に紹介したかったんだけどなー」
「されたからと言って、私は何も思わないが」
「そうだけどさー……」
早瀬タクミが苦笑いを浮かべると、控え室の扉がノックされた。彼が大きな声で、どうぞ、と言うと、勢いよく扉が開かれ、3人の若者──恐らく、と言うより、むしろ彼等がザ・トリプルズだ──が顔を覗かせた。
「タックミさぁん!おっひさっしぶりでぇす!」
太枠の黒ぶちメガネをかけた、茶髪の若者が飛び込んできた。その背丈は小さく、まるで子犬のように見える。その後ろには、真面目そうな──短い黒髪に、大きくも小さくもない目鼻がついている──男と、細く長身の──金色の長い髪が二の腕まであり、垂れた目は異国人みたいな青色をしている──男がいた。
「うはぁ、キミヒコ、久しぶりだなー!」
腕に飛び込んだメガネの男の頭を撫で──犬をあやすような手つきだ──早瀬タクミは満面の笑みでそう言った。
「2ヶ月ぶりですよぉ!」
「もうそんなになるかー。あ、お前等も入ってこいよ」
そう早瀬タクミが促し、残りの2人も控え室に入ってきた。私は所在なく、立ったまま彼等を見ていた。
「紹介するよ。こちらは、田中アユム君て言って、新しいアルバムに参加してもらったんだ」
3人が一斉に私を見た。私はどうも、と言い、軽く会釈する。
「アユム君、彼がリーダーでギターの鷹野キミヒコで、そっちの金髪がベースの坂田ハジメ、んで、そっちがボーカルの戸塚ノボルだよ」
1度に紹介され、私は多少なりとも狼狽えた。順繰りに、彼等が私に会釈するのを、どうも、と言いながら会釈を返す。
「タクミさん、今日も明日も、よろしくお願いしますねぇ」
鷹野が甘えた口調でそう言う。
「こっちこそ、よろしくなー」
「そうだ、今度飲みに連れてって下さいよぉ」
「んー?そうだな、飲みに行きたいね。あ、お前等さー、明日は何を歌うんだ?」
「大晦日に発売する、新曲っす」
戸塚が答え、坂田が髪を揺らしながら頷く。
私は彼等を残し、そっと控え室を出た。無駄話は好きではないし、早く新しい物語を読みたかったからだ。
「私がいなくても構わないようだが」
率直に感想を言った。
対談は早瀬タクミと、ザ・トリプルズと言う若者で行うらしく、私の出番はない。むしろ、いない方が色々詮索されなくて済むのではないだろうか。
「そうだけどさー……君、何か用事とかあるの?」
ソファに座り──煙草に火をつけながら──早瀬タクミが私を見上げてきた。特に用事はないのだが、手持ちの文庫本を読み終えてしまったので、新しいものを購入したかった。そのように伝えると、じゃあ、と彼は言った。
「それならさ、暫く別行動にしよっか?」
「異議はない」
最期さえ見届けられれば、こんなにも担当の人間と一緒にいる必要はないのだ。
「そっか。俺としてはさー、ザ・トリプルズ、君に紹介したかったんだけどなー」
「されたからと言って、私は何も思わないが」
「そうだけどさー……」
早瀬タクミが苦笑いを浮かべると、控え室の扉がノックされた。彼が大きな声で、どうぞ、と言うと、勢いよく扉が開かれ、3人の若者──恐らく、と言うより、むしろ彼等がザ・トリプルズだ──が顔を覗かせた。
「タックミさぁん!おっひさっしぶりでぇす!」
太枠の黒ぶちメガネをかけた、茶髪の若者が飛び込んできた。その背丈は小さく、まるで子犬のように見える。その後ろには、真面目そうな──短い黒髪に、大きくも小さくもない目鼻がついている──男と、細く長身の──金色の長い髪が二の腕まであり、垂れた目は異国人みたいな青色をしている──男がいた。
「うはぁ、キミヒコ、久しぶりだなー!」
腕に飛び込んだメガネの男の頭を撫で──犬をあやすような手つきだ──早瀬タクミは満面の笑みでそう言った。
「2ヶ月ぶりですよぉ!」
「もうそんなになるかー。あ、お前等も入ってこいよ」
そう早瀬タクミが促し、残りの2人も控え室に入ってきた。私は所在なく、立ったまま彼等を見ていた。
「紹介するよ。こちらは、田中アユム君て言って、新しいアルバムに参加してもらったんだ」
3人が一斉に私を見た。私はどうも、と言い、軽く会釈する。
「アユム君、彼がリーダーでギターの鷹野キミヒコで、そっちの金髪がベースの坂田ハジメ、んで、そっちがボーカルの戸塚ノボルだよ」
1度に紹介され、私は多少なりとも狼狽えた。順繰りに、彼等が私に会釈するのを、どうも、と言いながら会釈を返す。
「タクミさん、今日も明日も、よろしくお願いしますねぇ」
鷹野が甘えた口調でそう言う。
「こっちこそ、よろしくなー」
「そうだ、今度飲みに連れてって下さいよぉ」
「んー?そうだな、飲みに行きたいね。あ、お前等さー、明日は何を歌うんだ?」
「大晦日に発売する、新曲っす」
戸塚が答え、坂田が髪を揺らしながら頷く。
私は彼等を残し、そっと控え室を出た。無駄話は好きではないし、早く新しい物語を読みたかったからだ。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
後宮出入りの女商人 四神国の妃と消えた護符
washusatomi
キャラ文芸
西域の女商人白蘭は、董王朝の皇太后の護符の行方を追う。皇帝に自分の有能さを認めさせ、後宮出入りの女商人として生きていくために――。 そして奮闘する白蘭は、無骨な禁軍将軍と心を通わせるようになり……。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

職業、死神
たける
キャラ文芸
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
死神とは、死期の近付いた人間に、それを知らせる伝達者。
また、夢の中で夢を叶える者。
1人の死神が、今日も仕事で人間の世界を訪れた。
そこで出会ったのは、今回担当する事になった若者と、同業者だったが……。
※途中で同性(男同士)の性描写が少しだけ出てきます。また、残酷だと思われるような描写も少しだけ出てきます。
ご覧になる際は、上記の描写が大丈夫な方のみでお願いします。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
皇太后(おかあ)様におまかせ!〜皇帝陛下の純愛探し〜
菰野るり
キャラ文芸
皇帝陛下はお年頃。
まわりは縁談を持ってくるが、どんな美人にもなびかない。
なんでも、3年前に一度だけ出逢った忘れられない女性がいるのだとか。手がかりはなし。そんな中、皇太后は自ら街に出て息子の嫁探しをすることに!
この物語の皇太后の名は雲泪(ユンレイ)、皇帝の名は堯舜(ヤオシュン)です。つまり【後宮物語〜身代わり宮女は皇帝陛下に溺愛されます⁉︎〜】の続編です。しかし、こちらから読んでも楽しめます‼︎どちらから読んでも違う感覚で楽しめる⁉︎こちらはポジティブなラブコメです。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
おにぎり屋さんの裏稼業 〜お祓い請け賜わります〜
瀬崎由美
キャラ文芸
高校2年生の八神美琴は、幼い頃に両親を亡くしてからは祖母の真知子と、親戚のツバキと一緒に暮らしている。
大学通りにある屋敷の片隅で営んでいるオニギリ屋さん『おにひめ』は、気まぐれの営業ながらも学生達に人気のお店だ。でも、真知子の本業は人ならざるものを対処するお祓い屋。霊やあやかしにまつわる相談に訪れて来る人が後を絶たない。
そんなある日、祓いの仕事から戻って来た真知子が家の中で倒れてしまう。加齢による力の限界を感じた祖母から、美琴は祓いの力の継承を受ける。と、美琴はこれまで視えなかったモノが視えるようになり……。
第8回キャラ文芸大賞にて奨励賞をいただきました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる