死神とミュージシャン

４日目

１．

タクミは自宅に帰っていた。あれからずっと、曲を作っている。スタジオにいる時には出なかったのに、不思議なものだ。
窓から朝陽が射し込んでくる。どうやらまた、徹夜したらしい。

「ふわぁ……」

今日は昼からスタジオに入る。残り２日で、４曲を収録し終えなければならないが、もう心配はない。曲は出来ている。早瀬タクミ、最後のアルバムだ。だが、どうしても試したい案があった。まだ誰にも話しておらず、許可も得られるかは分からない。それでもやってみたかった。
それと言うのは、田中アユムが残した曲を、自身のアルバムに入れる、と言う事だ。
許可と言っても、田中アユムはもういない。本人に了承を得る必要はないが、アイデアが通るかどうかはまた別の話で、プロデューサーが何と言うだろう？
取り敢えず、当たって砕けてみるしかない。その為にも、あの死神に会わなければ。
タクミは着替えるなり、戸締まりもせず家を飛び出した。