死神とミュージシャン

たける

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3日目

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春に発表するアルバムを作る為に、タクミはスタジオに缶詰めになっていた。今までにも2枚のアルバムを出していて、どれも今回と同じ様にスタジオに缶詰めになって収録していた。だからと言う訳ではないが、スタジオから外に出られなくなっても、不思議と苛々したりはしなかった。

「あと何曲あんのー?」

収録ブースを出たタクミは、胸ポケットから煙草を取り出し、火をつけながら尋ねた。すると三上が素早く灰皿を持ってきて、あと4曲だと教えてくれた。

「予定収録数は12曲ですけど、あと1曲、間に合ってませんよ」
「うー……そうだったー!」

パイブ椅子に、体を投げ出すように座ったタクミは、こめかみを軽く揉んだ。作詞も作曲も自分でやっているタクミにとって、アルバム製作が1番の苦痛でもある。収録する為に、新たに作らなければならないからだが、今回は1曲だけ、間に合ってなかった。

「スタジオを借りられるのは、あと3日しかないんですよ?」
「わーかってるって!」

ムッとしながら──まだ長い煙草を消し──立て掛けてあるギターを手に取って爪弾いてみる。だが、一向に詞も曲も、降ってはこなかった。

「あー!駄目だ!ちょっと休憩にしよう」

またギターを元のスタンドに立て掛けて、タクミは腰を浮かせた。すると背中から、三上の声が迫ってくるように聞こえる。

「休憩してる暇はないですよ」
「10分だけだってば!」

そう言って収録室から出たタクミは、エレベーターに乗って1階へ向かった。
このままじゃあ、息が詰まってしまう。缶詰めは嫌いではないが、時に息抜きは必要だろう。喫茶室でコーヒーでも飲みながら、曲を捻り出さなくてはならない。




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