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離れてまで長く生きていたくはない。
例えこの先、ファイと言う好意を抱いたリタルド人と出会う事が分かっていたとしても。
「ノッド、どうして?どうしてなんだ……!」
胸板を殴るフィックスは涙ぐんでいる。
悲しい気持ちがテレパシーを使わなくても伝わってくる。
「俺はお前と放れたくない。放れれば、もう会えない……そんなのは嫌だ!」
フィックスが教えてくれた愛。それが今、ノッドを苦しめている。
──こんな事なら、出会わなければ良かった……?いや、そうじゃない。出会えたから苦しい。愛したから辛い。
「ノッド……俺も君と放れるのは辛い。だが、君が死ぬのはもっと辛いんだ……!」
青い瞳から涙が零れた。それをそっと指で掬うと、すっと肌に消えた。
これが涙か、と感じる。
温かく切ない。
「なぁ、言ってくれ。俺を愛してるって。嘘でもいい、言ってくれ」
そう言ってフィックスを抱きしめた。この感触も温もりも、もう3302秒もしたら感じられなくなる。
「愛してる……君を愛してる……!」
夢中で唇を重ねる。
『愛しい。愛しい』
フィックスの嘘のない感情が流れ込んでくる。それが嬉しくて堪らない。
「カウントが尽きるぎりぎりまで、側にいてくれよ」
爆破を止める事は出来ない。また、最後に学んだのが、悲しみと言う感情だと言う事に辛くなる。そして、カフェでフィックスと交わした会話を思い出した。
「悲しいってのは、誰か……自分に近い人間が死んだり苦しんだりすると、大体主人公は一緒になって悩んだり泣いたりする。それが俺には分からないんだ。泣く事が悲しい事なのか?」
「いや……一概にそうは言えないな。嬉しかったり、悔しくても泣くし……」
「もう2度と会えない、とか、胸が締め付けられるような辛さとか、そう感じる時に悲しい、と感じる……いやぁ、うーん…やっぱり説明が難しいなぁ」
辛くて、悔しくて、胸が締め付けられている。今ならよく分かる。そして、フィックスも同じなのだと思うと、悲しみは共有させてはいけない気がした。
「勿論だ、側にいる。だが、まだ諦めないでくれ……!きっと何か方法がある筈だ!」
そう言ったフィックスの笑顔は引き攣っている。
「ストレインの心を読んでも、解除コードは分からなかったんだ。方法なんてもうない」
波の音が聞こえる。
焦りと不安、悲しみで聞こえていなかった回りの音が聞こえ出す。
強い陽射しと熱い砂。
底が透けて見えそうなぐらいに美しい海。
サバル警察署前に広がるこの海が、2人で見る最後の景色になるなんて、とノッドは自嘲気味に笑った。
「ノッド、考えるんだ。君は世界一優秀なサイボーグだろう?きっと何か思いつく……!」
汗をかき始めているフィックスの肩を抱き、木陰へと歩いて腰を下ろした。
カウントは2000を切っている。
フィックスは、まだ諦めていない。引き攣ってはいるが、その瞳にはまだ強い意志が燃えている。すぐに諦め、何もしないのを酷く嫌うフィックスは腕を組み、ノッドの為に必死になっている。
ノッドは、そんな彼を最後に裏切りたくなかった。
何かある。
きっとある筈なんだ。
そう信じ、目を閉じて自身の記憶を深く掘り下げる事にした。
例えこの先、ファイと言う好意を抱いたリタルド人と出会う事が分かっていたとしても。
「ノッド、どうして?どうしてなんだ……!」
胸板を殴るフィックスは涙ぐんでいる。
悲しい気持ちがテレパシーを使わなくても伝わってくる。
「俺はお前と放れたくない。放れれば、もう会えない……そんなのは嫌だ!」
フィックスが教えてくれた愛。それが今、ノッドを苦しめている。
──こんな事なら、出会わなければ良かった……?いや、そうじゃない。出会えたから苦しい。愛したから辛い。
「ノッド……俺も君と放れるのは辛い。だが、君が死ぬのはもっと辛いんだ……!」
青い瞳から涙が零れた。それをそっと指で掬うと、すっと肌に消えた。
これが涙か、と感じる。
温かく切ない。
「なぁ、言ってくれ。俺を愛してるって。嘘でもいい、言ってくれ」
そう言ってフィックスを抱きしめた。この感触も温もりも、もう3302秒もしたら感じられなくなる。
「愛してる……君を愛してる……!」
夢中で唇を重ねる。
『愛しい。愛しい』
フィックスの嘘のない感情が流れ込んでくる。それが嬉しくて堪らない。
「カウントが尽きるぎりぎりまで、側にいてくれよ」
爆破を止める事は出来ない。また、最後に学んだのが、悲しみと言う感情だと言う事に辛くなる。そして、カフェでフィックスと交わした会話を思い出した。
「悲しいってのは、誰か……自分に近い人間が死んだり苦しんだりすると、大体主人公は一緒になって悩んだり泣いたりする。それが俺には分からないんだ。泣く事が悲しい事なのか?」
「いや……一概にそうは言えないな。嬉しかったり、悔しくても泣くし……」
「もう2度と会えない、とか、胸が締め付けられるような辛さとか、そう感じる時に悲しい、と感じる……いやぁ、うーん…やっぱり説明が難しいなぁ」
辛くて、悔しくて、胸が締め付けられている。今ならよく分かる。そして、フィックスも同じなのだと思うと、悲しみは共有させてはいけない気がした。
「勿論だ、側にいる。だが、まだ諦めないでくれ……!きっと何か方法がある筈だ!」
そう言ったフィックスの笑顔は引き攣っている。
「ストレインの心を読んでも、解除コードは分からなかったんだ。方法なんてもうない」
波の音が聞こえる。
焦りと不安、悲しみで聞こえていなかった回りの音が聞こえ出す。
強い陽射しと熱い砂。
底が透けて見えそうなぐらいに美しい海。
サバル警察署前に広がるこの海が、2人で見る最後の景色になるなんて、とノッドは自嘲気味に笑った。
「ノッド、考えるんだ。君は世界一優秀なサイボーグだろう?きっと何か思いつく……!」
汗をかき始めているフィックスの肩を抱き、木陰へと歩いて腰を下ろした。
カウントは2000を切っている。
フィックスは、まだ諦めていない。引き攣ってはいるが、その瞳にはまだ強い意志が燃えている。すぐに諦め、何もしないのを酷く嫌うフィックスは腕を組み、ノッドの為に必死になっている。
ノッドは、そんな彼を最後に裏切りたくなかった。
何かある。
きっとある筈なんだ。
そう信じ、目を閉じて自身の記憶を深く掘り下げる事にした。
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