13 / 36
3.
2
しおりを挟む
閲覧室は静かで、開館した図書館にはそれなりに人が集まり出している。
夏休みだからだろうか、子供の数が多い。
さっきからノッドは、黙ったまま本を読んでいて、フィックスは時間を持て余していた。
何かを話すにしても、図書館でのお喋りは憚られる。
「それ、何て本だい?」
「世界の鳥類」
顔も上げずに答えるノッドは、ゆっくり、丹念に1ページずつ読んでいる。
「読んだ事ないな。面白い?」
「だから読んでる」
邪魔するな、と言われているようで、フィックスは黙った。と、ジャケットの中で携帯が震え、フィックスはノッドを見遣った。
「電話なら外でしろ。俺はここにいる」
そう言われ席を立ったフィックスだったが、ふと疑問が浮かんだ。何故電話だと分かったのだろう。
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
そのまま疑問を飲み込み、図書館の外に出る。陽射しは差ほど強くはないが、空調の利いた館内から出たフィックスは、纏わり付くような暑さに目眩を覚えた。
「ケリーだ」
『おはよう、フィックス』
電話の相手はハンクだ。
「あぁ、おはよう。どうかしたの?」
『どうかしたのか?じゃないさ。警部補に聞いたが、極秘で何か任されたんだって?』
厳しく詰問するハンクに、フィックスは口ごもった。
「あぁ……まぁ、そうなんだ」
歩き出し、木陰を探す。
『それって、どんな内容なんだ?みんな極秘だからって教えてくれないんだが、君なら俺に話してくれるだろう?』
「いや、すまないハンク。こればっかりは、君にも話せない」
相手は国家絡みだ。迂闊に話して、自分がどうにかなるだけならまだいい。ノッドやハンクにまで何かがあっては困る。それに、極秘なものは話せない。いくら彼と友人だからと言っても、フィックスは刑事だ。
『ふぅ……じゃあ、デートはいつしてくれるんだ?』
ハンクの言葉にフィックスの心拍数が上がる。
「デート……?いや……暫くは無理……じゃないかな。それに君とはその……」
1度は肉体的関係は持ったが、それだけだ。恋人でもない。
『何だ、言わないといけないのか?通じてるものとばかり思ってたよ』
「ハンク……悪いんだが」
『フィックス、俺と付き合ってくれ』
言葉を遮るようにそう言ったハンクの声は、真剣だった。フィックスの鼓動はまた早くなる。
「あ……いや……君の事はその、好きだ。だが、まだちょっと考えさせてくれ」
頭が混乱してくる。気温の高さがそうさせているのだろう。早く木陰か建物の中に入らなくてはいけない。
『分かった。待つよ』
それじゃあ、と言って電話を切る頃には、フィックスは地面が揺れていると感じた。
夏休みだからだろうか、子供の数が多い。
さっきからノッドは、黙ったまま本を読んでいて、フィックスは時間を持て余していた。
何かを話すにしても、図書館でのお喋りは憚られる。
「それ、何て本だい?」
「世界の鳥類」
顔も上げずに答えるノッドは、ゆっくり、丹念に1ページずつ読んでいる。
「読んだ事ないな。面白い?」
「だから読んでる」
邪魔するな、と言われているようで、フィックスは黙った。と、ジャケットの中で携帯が震え、フィックスはノッドを見遣った。
「電話なら外でしろ。俺はここにいる」
そう言われ席を立ったフィックスだったが、ふと疑問が浮かんだ。何故電話だと分かったのだろう。
「じゃあ、ちょっと行ってくる」
そのまま疑問を飲み込み、図書館の外に出る。陽射しは差ほど強くはないが、空調の利いた館内から出たフィックスは、纏わり付くような暑さに目眩を覚えた。
「ケリーだ」
『おはよう、フィックス』
電話の相手はハンクだ。
「あぁ、おはよう。どうかしたの?」
『どうかしたのか?じゃないさ。警部補に聞いたが、極秘で何か任されたんだって?』
厳しく詰問するハンクに、フィックスは口ごもった。
「あぁ……まぁ、そうなんだ」
歩き出し、木陰を探す。
『それって、どんな内容なんだ?みんな極秘だからって教えてくれないんだが、君なら俺に話してくれるだろう?』
「いや、すまないハンク。こればっかりは、君にも話せない」
相手は国家絡みだ。迂闊に話して、自分がどうにかなるだけならまだいい。ノッドやハンクにまで何かがあっては困る。それに、極秘なものは話せない。いくら彼と友人だからと言っても、フィックスは刑事だ。
『ふぅ……じゃあ、デートはいつしてくれるんだ?』
ハンクの言葉にフィックスの心拍数が上がる。
「デート……?いや……暫くは無理……じゃないかな。それに君とはその……」
1度は肉体的関係は持ったが、それだけだ。恋人でもない。
『何だ、言わないといけないのか?通じてるものとばかり思ってたよ』
「ハンク……悪いんだが」
『フィックス、俺と付き合ってくれ』
言葉を遮るようにそう言ったハンクの声は、真剣だった。フィックスの鼓動はまた早くなる。
「あ……いや……君の事はその、好きだ。だが、まだちょっと考えさせてくれ」
頭が混乱してくる。気温の高さがそうさせているのだろう。早く木陰か建物の中に入らなくてはいけない。
『分かった。待つよ』
それじゃあ、と言って電話を切る頃には、フィックスは地面が揺れていると感じた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
Love Trap
たける
BL
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
【あらすじ】
【Love Monster】のその後の物語。
ノッドからメモリーチップを受け取ったフィックスだったが、ストレイン博士に呼び出され、ハンクと図書館へ向かうなり事故に遭ってしまう。
何とか一命を取り留めたハンクだったが、フィックスは事故で死んでいた。
ストレインの目的を知ったハンクは、フィックスの代わりにノッドを目覚めさせる事を決意するが……
フィックスシリーズ完結です。
※BL描写があります。苦手な方はご遠慮下さい。
宇宙大作戦が大好きで、勢いで書きました。模倣作品のようですが、寛容な気持ちでご覧いただけたら幸いです。
Dark Moon
たける
BL
★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆★☆
【あらすじ】
自分では死ぬ事が出来ないサイボーグ、ノッドは、恋人を失い1人きりで生きてきた。だがある日、その恋人の名前を知るリタルド人ファイの存在を知り、接触する事にするが……
変わる過去。変わらない未来。
ノッドとファイの関係は……?
※BL描写があります。苦手な方はご遠慮下さい。
宇宙大作戦が大好きで、勢いで書きました。模倣作品のようですが、寛容な気持ちでご覧いただけたら幸いです。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
孤独の解毒薬
金糸雀
BL
白銀奏斗(しろがねかなと)
大学2年工学部 雪と同大学に通う
顔よし頭よし爽やかイケメン人気者
人との関係を築くのがうまいが、取り繕うのも得意
今まで触れ合ってこなかったタイプの人、雪と出会い生き方に変化が...
西条雪(さいじょうゆき)
大学2年健康福祉学部
家庭環境に問題があり、孤独を感じている
暗く友達はいないが、農家を営む祖父が大好き
実は素直で感情表現が豊か
同大学の奏斗に気に入られるが...
出来損ないアルファ公爵子息、父に無限エンカウント危険辺境領地に追放されたら、求婚してきた国王一番の愛息、スパダリ上級オメガ王子がついて来た!
みゃー
BL
同じく連載中の「アンダー(底辺)アルファとハイ(上級)オメガは、まずお友達から始めます!」の、異世界編、スピンオフです!
主人公二人が、もし異世界にいたらと言う設定です。
アルファ公爵子息は恒輝。
上級オメガ王子様は、明人です。
けれど、現代が舞台の「アンダー(底辺)アルファとハイ(上級)オメガは、まずお友達から始めます!」とは、全く、全くの別物のお話です。
出来損いアルファ公爵子息、超危険辺境領地に追放されたら、求婚してきた上級オメガ王子が付いて来た!
只今、常に文体を試行錯誤中でして、文体が変わる時もあります事をお詫びします。
Please,Call My Name
叶けい
BL
アイドルグループ『star.b』最年長メンバーの桐谷大知はある日、同じグループのメンバーである櫻井悠貴の幼なじみの青年・雪村眞白と知り合う。眞白には難聴のハンディがあった。
何度も会ううちに、眞白に惹かれていく大知。
しかし、かつてアイドルに憧れた過去を持つ眞白の胸中は複雑だった。
大知の優しさに触れるうち、傷ついて頑なになっていた眞白の気持ちも少しずつ解けていく。
眞白もまた大知への想いを募らせるようになるが、素直に気持ちを伝えられない。
僕の王子様
くるむ
BL
鹿倉歩(かぐらあゆむ)は、クリスマスイブに出合った礼人のことが忘れられずに彼と同じ高校を受けることを決意。
無事に受かり礼人と同じ高校に通うことが出来たのだが、校内での礼人の人気があまりにもすさまじいことを知り、自分から近づけずにいた。
そんな中、やたらイケメンばかりがそろっている『読書同好会』の存在を知り、そこに礼人が在籍していることを聞きつけて……。
見た目が派手で性格も明るく、反面人の心の機微にも敏感で一目置かれる存在でもあるくせに、実は騒がれることが嫌いで他人が傍にいるだけで眠ることも出来ない神経質な礼人と、大人しくて素直なワンコのお話。
元々は、神経質なイケメンがただ一人のワンコに甘える話が書きたくて考えたお話です。
※『近くにいるのに君が遠い』のスピンオフになっています。未読の方は読んでいただけたらより礼人のことが分かるかと思います。
さがしもの
猫谷 一禾
BL
策士な風紀副委員長✕意地っ張り親衛隊員
(山岡 央歌)✕(森 里葉)
〖この気持ちに気づくまで〗のスピンオフ作品です
読んでいなくても大丈夫です。
家庭の事情でお金持ちに引き取られることになった少年時代。今までの環境と異なり困惑する日々……
そんな中で出会った彼……
切なさを目指して書きたいです。
予定ではR18要素は少ないです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる