Love Monster

たける

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閲覧室は静かで、開館した図書館にはそれなりに人が集まり出している。
夏休みだからだろうか、子供の数が多い。
さっきからノッドは、黙ったまま本を読んでいて、フィックスは時間を持て余していた。
何かを話すにしても、図書館でのお喋りは憚られる。

「それ、何て本だい?」
「世界の鳥類」

顔も上げずに答えるノッドは、ゆっくり、丹念に1ページずつ読んでいる。

「読んだ事ないな。面白い?」
「だから読んでる」

邪魔するな、と言われているようで、フィックスは黙った。と、ジャケットの中で携帯が震え、フィックスはノッドを見遣った。

「電話なら外でしろ。俺はここにいる」

そう言われ席を立ったフィックスだったが、ふと疑問が浮かんだ。何故電話だと分かったのだろう。

「じゃあ、ちょっと行ってくる」

そのまま疑問を飲み込み、図書館の外に出る。陽射しは差ほど強くはないが、空調の利いた館内から出たフィックスは、纏わり付くような暑さに目眩を覚えた。

「ケリーだ」
『おはよう、フィックス』

電話の相手はハンクだ。

「あぁ、おはよう。どうかしたの?」
『どうかしたのか?じゃないさ。警部補に聞いたが、極秘で何か任されたんだって?』

厳しく詰問するハンクに、フィックスは口ごもった。

「あぁ……まぁ、そうなんだ」

歩き出し、木陰を探す。

『それって、どんな内容なんだ?みんな極秘だからって教えてくれないんだが、君なら俺に話してくれるだろう?』
「いや、すまないハンク。こればっかりは、君にも話せない」

相手は国家絡みだ。迂闊に話して、自分がどうにかなるだけならまだいい。ノッドやハンクにまで何かがあっては困る。それに、極秘なものは話せない。いくら彼と友人だからと言っても、フィックスは刑事だ。

『ふぅ……じゃあ、デートはいつしてくれるんだ?』

ハンクの言葉にフィックスの心拍数が上がる。

「デート……?いや……暫くは無理……じゃないかな。それに君とはその……」

1度は肉体的関係は持ったが、それだけだ。恋人でもない。

『何だ、言わないといけないのか?通じてるものとばかり思ってたよ』
「ハンク……悪いんだが」
『フィックス、俺と付き合ってくれ』

言葉を遮るようにそう言ったハンクの声は、真剣だった。フィックスの鼓動はまた早くなる。

「あ……いや……君の事はその、好きだ。だが、まだちょっと考えさせてくれ」

頭が混乱してくる。気温の高さがそうさせているのだろう。早く木陰か建物の中に入らなくてはいけない。

『分かった。待つよ』

それじゃあ、と言って電話を切る頃には、フィックスは地面が揺れていると感じた。




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