Love Monster

２．

４

ハンクと肉体的な関係を持ってから、フィックスは少し彼と距離を置くようにした。だが決して嫌いになった訳ではない。今もハンクが好きだ、と言う気持ちに変わりはない。
だが、最後に彼の見せたウィンクが、フィックスの心をざわめかせているのも事実だ。
今月に入り、胸が締め付けられるような思いをもう２度もしている。
最初はファイと言う未来人に。これは恋ではなく、憧れだった訳だが、２度目のハンクの場合は、何と言えばこの気持ちを表現出来るのかさえ、まだ分かっていない。
だが、その問題は今は重要ではない。明日からの仕事の方が、むしろ問題だ。
ノッドの姿を思い返し、暮れ行く景色を眺める。
夕日が海へ沈んで行く情景は、何度見ても美しい。


──彼も今、この景色を見ているだろうか？


そうだ、と、不意にフィックスの頭にアイディアが浮かぶ。
彼にもっと、様々な物に触れさせてやろう。そうする事で、彼はより人間に近くなるだろう。
いくら豊富な知識があっても、感情や感動は文章から理解出来るものではない。実際に体感しないと理解出来ないものだ。それを学ぶ事によって、また新たに人格や心にも大きな変化が出るだろう。
我ながらいい考えだ、と思ったフィックスは、彼に何かしてやれる自分に喜びを感じ始めていた。