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署に戻ったフィックスは、明日から始まる新たな仕事について悩んだ。
つい口をついて出てしまった言葉に、今更重みを感じる。
黒く丁寧に撫で付けられた髪。何も信じていないような冷めた茶色の瞳。
サイボーグと知らなければ、普通の青年だ。
だがそうじゃない。
彼は、ノッドは、世界一のサイボーグだ。
兵器として作られているのは疑いようもない。それを護れなんて、フィックスには荷が重い話だった。
ふと、デスクに放置されたままの新聞が目に入る。一面に大きな見出しで「サイボーグの研究に新たな事実!」と書かれている。
フィックスは新聞を広げると、その記事を読み返した。
20年前に着手されたサイボーグの研究に、新たな事実が判明した。
そのサイボーグは、最高峰の技術を駆使して作られているが、我々にとっては大変脅威な存在だと言えるだろう。
彼の持つ力は人知を越え、むしろ悪魔的だ。
我々が入手した彼の持つ力は以下の3つだ。
・凶器を使わずに人体を破壊させる事が出来る
・心を盗み見る事が出来る
・危険ウィルスをばらまく事が出来る
昨今の忌まわしい事件の裏に、そのサイボーグが関わっているとの情報も寄せられ、住民には警戒が必要だ。
否定的な文章に吐き気がする。そして、記者が入手した彼の力も、あながち嘘ばかりではないが、これだけを読むとまるで殺人鬼だ。その為に作られた、と思われても仕方がないような書き方に、フィックスは頭を抱えた。
実際に会った彼からは、そんな危険な存在だとは見受けられなかった。
まだ写真が公開されていないだけで、いつ記者達が感づき、彼の安全が脅かされるか分かったものではない。
「フィックス、どうした?」
不意に声をかけられ顔を上げると、同僚のハンク・スティアが立っていた。
「いや……?何でもない」
「何でもない事はないだろう?そんな険しい顔をしておいて」
そう言って微笑する彼の顔も険しかった。だがそれは、元々の彼の顔付きが険しいのであって、ハンクが不愉快を感じている訳ではない。
「この記事、君は読んだか?」
一面を彼に向けると、ハンクの顔が更に険しいものになった。
「あぁ、読んだ。国がその研究に、多額の援助金を出しているそうだな」
フィックスのデスクに座ったハンクは、そう言いながら記事を睨んだ。
「そうらしいな。大統領はいつか、戦争でも始めるつもりでいるのかも知れない」
新聞をたたんで再びデスクへ放り出すと、フィックスは同僚を見上げた。その視線はまだ厳しく、まるで自分が睨まれているような気分になる。
「だったら、俺は徴兵されるのかな?」
彼とは歳も近く、色々話せる仲間でもあった。だが、今フィックスが抱えている問題は、彼にも、また相棒にも話す事は出来ない。1人きりで悩み、答えを出して進まなければならなかった。
「さぁ……どうだろう。もしそうなったら、君はどうする?」
「そうだな。もしそうなったら、やりたい事をやるよ」
そう答えたハンクは、フィックスにウィンクして見せた。
つい口をついて出てしまった言葉に、今更重みを感じる。
黒く丁寧に撫で付けられた髪。何も信じていないような冷めた茶色の瞳。
サイボーグと知らなければ、普通の青年だ。
だがそうじゃない。
彼は、ノッドは、世界一のサイボーグだ。
兵器として作られているのは疑いようもない。それを護れなんて、フィックスには荷が重い話だった。
ふと、デスクに放置されたままの新聞が目に入る。一面に大きな見出しで「サイボーグの研究に新たな事実!」と書かれている。
フィックスは新聞を広げると、その記事を読み返した。
20年前に着手されたサイボーグの研究に、新たな事実が判明した。
そのサイボーグは、最高峰の技術を駆使して作られているが、我々にとっては大変脅威な存在だと言えるだろう。
彼の持つ力は人知を越え、むしろ悪魔的だ。
我々が入手した彼の持つ力は以下の3つだ。
・凶器を使わずに人体を破壊させる事が出来る
・心を盗み見る事が出来る
・危険ウィルスをばらまく事が出来る
昨今の忌まわしい事件の裏に、そのサイボーグが関わっているとの情報も寄せられ、住民には警戒が必要だ。
否定的な文章に吐き気がする。そして、記者が入手した彼の力も、あながち嘘ばかりではないが、これだけを読むとまるで殺人鬼だ。その為に作られた、と思われても仕方がないような書き方に、フィックスは頭を抱えた。
実際に会った彼からは、そんな危険な存在だとは見受けられなかった。
まだ写真が公開されていないだけで、いつ記者達が感づき、彼の安全が脅かされるか分かったものではない。
「フィックス、どうした?」
不意に声をかけられ顔を上げると、同僚のハンク・スティアが立っていた。
「いや……?何でもない」
「何でもない事はないだろう?そんな険しい顔をしておいて」
そう言って微笑する彼の顔も険しかった。だがそれは、元々の彼の顔付きが険しいのであって、ハンクが不愉快を感じている訳ではない。
「この記事、君は読んだか?」
一面を彼に向けると、ハンクの顔が更に険しいものになった。
「あぁ、読んだ。国がその研究に、多額の援助金を出しているそうだな」
フィックスのデスクに座ったハンクは、そう言いながら記事を睨んだ。
「そうらしいな。大統領はいつか、戦争でも始めるつもりでいるのかも知れない」
新聞をたたんで再びデスクへ放り出すと、フィックスは同僚を見上げた。その視線はまだ厳しく、まるで自分が睨まれているような気分になる。
「だったら、俺は徴兵されるのかな?」
彼とは歳も近く、色々話せる仲間でもあった。だが、今フィックスが抱えている問題は、彼にも、また相棒にも話す事は出来ない。1人きりで悩み、答えを出して進まなければならなかった。
「さぁ……どうだろう。もしそうなったら、君はどうする?」
「そうだな。もしそうなったら、やりたい事をやるよ」
そう答えたハンクは、フィックスにウィンクして見せた。
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