道化の情

たける

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第2章

2─2

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騒がしい夜の街は、若者達で相変わらず賑わっている。そんな中、ビリー・モルトは1人浮かない顔をしていた。

「しみったれた顔してるなよ、ビリー。ナターシャの事は残念だがよ、俺達は生きてかなきゃなんねーじゃん。その為には、稼ぐしかないのさ」

バイヤー仲間のケントがそう言い、吸い殻を道路に捨てた。彼の言う事は分かっている。バイヤーの多くは、売春斡旋や薬の売買で生計を立てている。勿論ビリーもその1人だった。
だが、先日殺されたナターシャ・メロウは、ビリーの友達だった。しかも遺体を発見し警察へ通報したのもビリーだったが、仲間達には話していない。

「そうだよなぁ……働かないと、食っていけねーもんなー……」

学歴も高くなく、金銭的にも恵まれていないビリーは、高額で稼げるこの仕事しか出来なかった。何度か就職やバイトの面接をしてみたが、どこも雇ってはくれなかった。その理由をはっきり聞く事は出来なかったが、学歴の他に肌の色が違うから、と言うのもあるのだとビリーは思っている。
現にこのナシャンテシティは、差別が酷い。特に浮浪者や肌の色が違う者、ストリートなファッションをしている若者達には住み辛い。だが、金がなくては他の街へ行く事も出来ない。悪循環が街に渦巻いていた。

「今夜はどこで捌くんだ?」

ケントは新たな煙草に火をつけた。ビリーはしばらく悩んでいたが、どこ、といつも決めている訳でもない。が、縄張りがある為、自由に場所を選べる訳でもなかった。

「どうすっかなぁ……」

ビリーが腕組みをしながら悩んでいると、仲間の1人が駆け寄って来た。

「おいビリー……!お前を捜してる奴がいるんだ」

彼もビリー同様に肌が浅黒い。

「俺を?誰だよ」
「あぁ、俺も昨日聞かれたぜ」

煙りを吐きながらケントも会話に混ざって来る。

「ヘロインが欲しいんだが、誰か持ってる奴はいないかってなぁ。俺は知らないって答えたんだが、まだ捜してるのか?」
「俺はさっき、向こうの通りで聞かれたんだ」

少し悩んでからビリーは歩き出した。欲しいなら売ってやる。

「おいビリー、行くのか?」

ケントが尋ねてくる。

「勿論だ。稼がなきゃ、食えないからな」




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