道化の情

たける

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第1章

1─3

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たっぷりとカフェインを摂取したジェシカと警察署に戻ると、上司のノーラン・テイラーが2人に近付いてきた。

「おはようございます、警部補」

ローレンはそう挨拶したが、テイラーは機嫌が悪そうだった。

「それぞれ結果が出てるぞ。早く捜査を始めて報告するんだ」

そう言ってテイラーは、書類をローレンのデスクに投げ出すと、執務室へと戻って行った。その背中を見遣りながら肩を竦めるジェシカは、警部補の事があまり好きではない。

「イヤな感じ」
「あは……まぁ、そんな時もあるさ」

そうフォローしながら書類へと視線を落とす。

「死因は、スカーフによる窒息じゃない」
「え……?」

ジェシカはマイカップにコーヒーを注ぎながら振り返った。

「じゃあ、何だって言うの?」
「ヘロインの過剰摂取による中毒死だって」

絞殺の痕は、死亡した後につけられたものだと書かれている。またその痕から、犯人は彼女より背が高く、推定170~180だろうとあった。そして凶器の1つとして使用されたスカーフからは、彼女以外の指紋は検出されていない。

「ヘロインってやっぱり、クローゼットにあったあれ?」

次いで書類をめくると、ローレンが鑑識に託した粉末の結果が記されていた。

「うん。あれはヘロインの中でもかなり品質のいい、レッドロックと呼ばれる物だったみたいだね」

品質がいい、と言う事は、かなりの値がしたに違いない。やはり彼女はそこそこ裕福ではあったが、売春で稼いだ金のほとんどをヘロインに使っていたのだ。

「彼女の交遊関係は、マンションの管理人が言ってたミカル、と言う人物しかまだ分かってないけど、彼女にヘロインを売ったバイヤーがいる筈だ。そいつを捜そう」

そのバイヤーがミカルと言う可能性もある。それにヘロインは依存性が高く、頻繁にメロウの部屋にミカルが出入りしていたのなら、彼女がヘロインを吸ったところを見ている、ないしミカル自身も中毒患者かも知れない。

「バイヤーって、昼間からいると思う?」

コーヒーを啜り、ジェシカはそう言って人差し指を立てた。

「夜まで待ちましょ。その間に管理人も似顔絵作成の協力に来るわ」

彼女の言う事はもっともだ。
ローレンは立ち上がると、メロウの解剖をした検死医に会いに行く事にした。




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