12 / 16
3.鳴海ケンイチ
4.
しおりを挟む
部下がヤクの用意を済ませ、ガキを見張るように側に立っている。オレは部下に近づくと、耳元で喚いた。
『ソイツはオレじゃねぇ!信用するな!』
だが聞こえていないらしく、部下はオレの体を乗っ取ったオレを見ている。
「アニキ、準備万端ですよ」
「……悪いが、コイツを売るのは止めだ。それも片付けてくれ」
「えっ?アニキ……やっぱりそのガキが気に入ったんですか?」
『無能のバカが!オレじゃねーって分からないのか?』
チラと、オレがオレを見る。だがすぐに視線は逸らされ、ガキの肩に手をかけた。
「ハヤト、お前は俺の側にいろ」
「え……」
「おい、車を回してこい。帰り支度をする」
部下はさっさとヤクを片付けると、言われたままに車を取りに倉庫を出た。残ったオレの体は、ガキの前に跪く。
「ハヤト、俺だよ。ミノルだ」
「嘘だ!ミノルは……ミノルは……」
「うん、死んだね。ずっとお前の側にいた。けど、新しい体が運良く手に入ったんだ」
見つめあう2人に、何を言っても伝わっていないようだ。
──オレは諦めるしかないのか?
「嘘だ……そんなの、出来る筈ないじゃん」
「だったら、2人しか知らない事でも話そうか?」
「あるなら話してみてよ」
そうガキが挑発的に言うと、オレの体はオレの知らない事をあれこれ語り出した。
『ソイツはオレじゃねぇ!信用するな!』
だが聞こえていないらしく、部下はオレの体を乗っ取ったオレを見ている。
「アニキ、準備万端ですよ」
「……悪いが、コイツを売るのは止めだ。それも片付けてくれ」
「えっ?アニキ……やっぱりそのガキが気に入ったんですか?」
『無能のバカが!オレじゃねーって分からないのか?』
チラと、オレがオレを見る。だがすぐに視線は逸らされ、ガキの肩に手をかけた。
「ハヤト、お前は俺の側にいろ」
「え……」
「おい、車を回してこい。帰り支度をする」
部下はさっさとヤクを片付けると、言われたままに車を取りに倉庫を出た。残ったオレの体は、ガキの前に跪く。
「ハヤト、俺だよ。ミノルだ」
「嘘だ!ミノルは……ミノルは……」
「うん、死んだね。ずっとお前の側にいた。けど、新しい体が運良く手に入ったんだ」
見つめあう2人に、何を言っても伝わっていないようだ。
──オレは諦めるしかないのか?
「嘘だ……そんなの、出来る筈ないじゃん」
「だったら、2人しか知らない事でも話そうか?」
「あるなら話してみてよ」
そうガキが挑発的に言うと、オレの体はオレの知らない事をあれこれ語り出した。
1
お気に入りに追加
20
あなたにおすすめの小説
【完結】終わりとはじまりの間
ビーバー父さん
BL
ノンフィクションとは言えない、フィクションです。
プロローグ的なお話として完結しました。
一生のパートナーと思っていた亮介に、子供がいると分かって別れることになった桂。
別れる理由も奇想天外なことながら、その行動も考えもおかしい亮介に心身ともに疲れるころ、
桂のクライアントである若狭に、亮介がおかしいということを同意してもらえたところから、始まりそうな関係に戸惑う桂。
この先があるのか、それとも……。
こんな思考回路と関係の奴らが実在するんですよ。
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
ヤクザと捨て子
幕間ささめ
BL
執着溺愛ヤクザ幹部×箱入り義理息子
ヤクザの事務所前に捨てられた子どもを自分好みに育てるヤクザ幹部とそんな保護者に育てられてる箱入り男子のお話。
ヤクザは頭の切れる爽やかな風貌の腹黒紳士。息子は細身の美男子の空回り全力少年。
ひとりぼっちの180日
あこ
BL
付き合いだしたのは高校の時。
何かと不便な場所にあった、全寮制男子高校時代だ。
篠原茜は、その学園の想像を遥かに超えた風習に驚いたものの、順調な滑り出しで学園生活を始めた。
二年目からは学園生活を楽しみ始め、その矢先、田村ツトムから猛アピールを受け始める。
いつの間にか絆されて、二年次夏休みを前に二人は付き合い始めた。
▷ よくある?王道全寮制男子校を卒業したキャラクターばっかり。
▷ 綺麗系な受けは学園時代保健室の天使なんて言われてた。
▷ 攻めはスポーツマン。
▶︎ タグがネタバレ状態かもしれません。
▶︎ 作品や章タイトルの頭に『★』があるものは、個人サイトでリクエストしていただいたものです。こちらではリクエスト内容やお礼などの後書きを省略させていただいています。
噛痕に思う
阿沙🌷
BL
αのイオに執着されているβのキバは最近、思うことがある。じゃれ合っているとイオが噛み付いてくるのだ。痛む傷跡にどことなく関係もギクシャクしてくる。そんななか、彼の悪癖の理由を知って――。
✿オメガバースもの掌編二本作。
(『ride』は2021年3月28日に追加します)
平凡腐男子なのに美形幼馴染に告白された
うた
BL
平凡受けが地雷な平凡腐男子が美形幼馴染に告白され、地雷と解釈違いに苦悩する話。
※作中で平凡受けが地雷だと散々書いていますが、作者本人は美形×平凡をこよなく愛しています。ご安心ください。
※pixivにも投稿しています
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる