2人

たける

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2.葉山ミノル

2.

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「ねぇ、ミノル。僕また、作家を目指そうと思うんだ」

リハビリを兼ねて初詣に向かう途中、ハヤトがそう言った。
空は真っ青だけれど、少し淀んだ色の雲が漂っている。夜には雨が降るのかも知れない。

『うん、いいんじゃないか?俺はハヤトの書く話が好きだよ』

高校に入学してすぐ──出席番号が前後だった──俺達は友達になった。そして将来は作家になりたいと言っていた事を思い出す。

「ありがとう。また読んで感想とか聞かせてよ」
『書く前から感想の催促か?ちょっと気が早いよ』

俺の将来の夢は、ミュージシャンになる事だった。一応高校ではバンドも組んでいて、ポジションはドラムだった。けどハヤトにあの事件──火災で家族が焼死した──が起こった後、俺はバンドを辞めた。ハヤトも書く事を止めた。
2人して、夢を諦めた。
だけど今、またハヤトが夢を語り出し、俺は嬉しく思っている。
いつかハヤトの側から、俺はいなくなるだろう。その時にハヤトを支えるのが、その夢だ。がむしゃらに夢を追いかける事で、俺がいなくなった後も生き続けて欲しいと願っている。

「ミノルをモデルにして、何か書いてみるつもりなんだ」
『へぇ!そりゃ楽しみだ!』

俺は死んでいるけれど、ハヤトの中で生き続けられる。俺をモデルに話を書いてくれる事で、文字となっても生き続けられる。
触れられないけれど、そうやって忘れられない事が1番の幸福なんじゃないかな。




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